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2019.09.09
犬の願い事。江戸時代の犬の落語と下町のお話【#selfishな歴史犬聞録】
東京下町には、江戸時代から大衆芸能や大衆文化などが栄えてきました。当時の人々の暮らしぶりや楽しみを知る上で、手がかりにもなるもののひとつが落語です。
もともとは京都などの関西地方で始まった辻噺と呼ばれるこっけいな話を軽妙な語り口で聞かせる芸を起源とするといわれていて、江戸時代に大きく発展し、現代まで続いている文化です。なんでも、最も多い時には江戸の街の中に130軒近い寄席(落語を聞かせる小屋)があったのだとか。東京23区に当てはめると、1つの区に5軒以上の寄席があったことになりますね。
さて、そんな江戸時代の大衆のお楽しみのひとつだった落語にも、犬が主人公のお話があります。
犬が、というよりも、「元」犬なんですが、面白いお話なのでちょっとあらすじをご紹介しましょう。
落語「元犬」のあらすじ
さて、東京下町の蔵前のとある神社の近くに、人々からシロと呼ばれて大変可愛がられていた白い犬が住んでいました。当時の人々の間では、「白い犬」というのは特別な力を持っていると考えられていたようで、白い体をしていたシロは「お前は賢いし、体は白いし、きっと生まれ変わったら人間になるよ」なんて言われて育ったのでした。
シロを可愛がる人みんなが同じように「来世は人間だ」「お前は良い子だから神様が人間にしてくれる」なんて言い続けるものですから、シロもすっかりその気になってしまいました。
「僕は人間になるんだ!でもどうせなら今すぐなれないかなぁ」と思ったシロは、神社に願掛けをするようになります。願いはもちろん「今すぐ人間にしてください!」です。
するとある日、眼が覚めるとシロは自分の体が真っ白ではなくなっていること、そしてふわふわだった毛皮もなく、まるで人間のように……、そう。シロは念願叶って人間になることができたのです。
さて、人間になったシロでしたが、それまでの犬社会とは全く異なる人間社会のマナーとの違いに苦労することになります。人間になったシロのお話は、ぜひ「落語 元犬」で調べて聞いてみてくださいね。
東京・蔵前に実在する神社にはシロの銅像が
この物語の主な舞台となるのは、東京下町の浅草エリア、蔵前です。この地域は江戸時代に幕府の税収である年貢の米を保存しておくための蔵があったことから、蔵前という地名がつけられました。
これらの年貢の出納管理を行うための組織が勘定奉行で、現在の財務省のようなものでした。当時の蔵前は蔵の管理や荷物の運搬のためにたくさんの人々が行き交う大変賑やかな街で、活気に溢れた所だったと言われています。
シロが願掛けに通ったといわれている神社は実際に存在していて、蔵前神社にはシロのお話をモチーフにした銅像が設置されているのだそうです。
ブロンズになったシロは神社の社殿に向かってきりりと真剣なまなざしを向けています。「シロはおりこうだねえ、きっと人間になれるよ」と私も声をかけて可愛がりたくなってしまいます。
やがて、残暑も落ち着いてお散歩も楽しい季節がやってきます。おでかけの計画で近くを通りそうなら、ちょっと足を伸ばして、シロに会いに行ってみてはいかがでしょうか。
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昔話や伝説には白い犬が良く出てきます。でもこれは、犬に限った話ではなくて、白いウサギに白いカラスや白いキジ、白い鹿などなど枚挙にいとまがありません。日本では白い動物は神の使いとして大切にされてきたということが背景あるようですね。