10月にもなると、日によっては朝晩の冷え込みが厳しく感じられることも出てきます。そして秋も深まっていくと、日中の澄みきった青空や夕暮れが近づきはじめた時の陽差し、夕焼け、やがて紅葉が美しい季節がやってきます。

この時期は犬たちも食欲も増してくる頃だと思いますが、寒暖差による不調に気をつけ、冬への準備をしておきたいところ。目には見えにくい疲れや体調の変化だからこそ、しっかりと体調を整えて過ごしていきたいですね。
そこで、今月ご紹介させていただくハーブは繊維などとしても馴染み深い植物、麻の一部である「ヘンプシード（麻の実）」です。

秋のオススメハーブ「ヘンプ」

ヘンプってこんな植物

日本では古くから親しまれてきた植物で、苧麻(からむし)という異名ももっていました。麻から作られた繊維は衣服として活用されてきたほか、神道行事などの際にも使用されてきました。現在でもしめ縄は麻で作っている、という神社も残っています。
海外ではヘンプという名前で、ハーブとして活用されて来ました。オメガ-6やオメガ-3が豊富なことから、抗炎症作用や栄養補給のために活用されてきた歴史を持っています。

ヘンプの特徴とその成分

タンパク質は身体を構成する大切な成分「アミノ酸」からできています。自然界には数百のアミノ酸が存在していますが、タンパク質のもととなるものは20種類と言われ、このうち、「必須アミノ酸」と呼ばれる９種類のアミノ酸は、 身体の中で作ることができないので食物から摂る必要があります。
これらの９種類の「必須アミノ酸」をバランスよく含んでいるものが「良質なタンパク質」と言われ、 卵、肉、魚、乳製品など動物性の食材が代表的ですが、ヘンプシードは植物性ながらタンパク質が豊富で、 これらの必須アミノ酸がバランスよく十分に含まれて入ることが特長です。
→アミノ酸スコアについての獣医師コラムはこちら（【獣医師コラム】アミノ酸スコアから考える、犬にはどんなタンパク質をあげるべき？）

ヘンプシードに多く含まれる油脂（ヘンプオイル）には、すべての動植物油の中で最も多く必須脂肪酸が含まれています（80％）。
オメガ3系脂肪酸のα-リノレン酸を約20％含むと共にオメガ6系脂肪酸のリノール酸とγ-リノレン酸を合わせて60％含み、 この比率が1対3と理想に近いことから生活習慣病予防やアレルギー体質の改善に効果が期待され、健康面、美容面でも注目されています。
γ-リノレン酸は、イブニングプリムローズオイル（月見草オイル）やボリジオイルにも含まれますが、 γ―リノレン酸以外の貴重な成分も含み、これらの脂肪酸がバランス良くすべて含まれている天然の植物油はヘンプオイルしかありません。

ヘンプのココに注目！

ダイエットにもオススメ

今年の夏もひどい暑さでお散歩時間が短かったせいか、「運動不足から少し体重が増えてしまって…」というお声を耳にすることがありました。
食欲の秋、しっかりと栄養をとり、冬に備えたいところですが、少しダイエットも必要かなと思われる犬は、 お散歩や運動で身体を動かしつつ、ヘンプシードやオイルの摂取をオススメします。

少し詳しい話になりますが、ヘンプシードやオイルに含まれるα-リノレン酸（オメガ３）は体内でDHAやEPAに変化します。
DHAやEPAはFAS（脂肪酸合成酵素）の働きを抑制し、新しい脂肪の合成を防ぎます。 また、血中脂肪酸の分解を進める酵素の働きを活発化し、中性脂肪を低下させる働きがあるといわれています。
更にヘンプには植物ステロ―ル（β―シトステロ―ル、スチグマステロール、カンぺステロール）が含まれ、 この成分はコレステロールを減少させることがわかっています。

それからもうひとつ、必須脂肪酸を補うと、骨・関節の健康にも役立つってご存知でしたか？
実は、必須脂肪酸を摂ると、腸からのカルシウム吸収が増加し、尿で排出されるカルシウム量が減ります。また、骨へのカルシウム貯蓄が増加し、 骨コラーゲンの合成が増加、骨の強度が向上することがわかってるんですよ。

「皮膚トラブル」、「ダイエット」、「関節」にと、とても優秀なヘンプオイルですが、光と熱に弱いため、 保存は日光を遮断できる遮光容器で密閉をして、開封後は冷蔵庫保存することがお約束。
加熱調理には不向きなため、犬の食事に加える時は、ご飯が冷めてからプラスするようにしてくださいね。
私も自分の食事に、オイルはドレッシングを作る時に使用したり、ナッツはご飯に混ぜたり、様々な料理、お菓子など幅広く使用しています。
是非、健康、美容のためにも、飼い主さんも一緒に取り入れていただけると嬉しいです。