2020.02.10

犬の腎臓病を知ろう。腎臓の働きと注意したいリンについて。

犬の腎臓病を知ろう。腎臓の働きと注意したいリンについて。

犬たちの病気で気を付けたいもののひとつが、腎臓に関するもの。中でも慢性腎臓病は不可逆的疾患とも呼ばれていて、機能を元に戻すことが難しい疾患だといわれています。しかし、一方で早めに症状に気が付くことが出来れば、進行を遅らせることができるかもしれません。

比較的多い腎臓病の治療のためにも、犬たちの腎臓の働きや機能について知っておくことは大切です。そこで、本日は犬の腎臓病でもとても重要な働きをしているネフロンについてご紹介します。

犬の腎臓ってどんな働きをしているの?

腎臓の主な働きは、体中を流れている血液をろ過し、尿として排出するにあたってフィルターとして機能することです。
とはいっても、血液に含まれている成分すべてが腎臓でろ過され、尿として排出されるのではありません。
まず、それぞれの腎臓には、大動脈から枝分かれした腎動脈を通じて体中の血液が流れ込みます。血液はこの腎動脈から徐々に細くなる動脈を通って最も細い細動脈に入り、やがて糸球体と呼ばれる場所へ運ばれます。

糸球体では、血液に含まれているまだ体内で使用できる成分をこしとり、老廃物や有毒な成分を含んだものが尿の元=原尿となります。原尿は尿細管という器官を通りながらさらに必要なものだけを吸収され、ようやく尿となります。
この状態のものが腎盂(じんう)に集められ尿管を通って膀胱で排出されます。

血液をろ過し、尿を作る一連の過程が行われている糸球体と尿細管をネフロンと呼びます。この機能が維持されているかどうかが腎臓病には大きく関係しています。

ネフロンと犬の慢性腎臓病の関係


さて、この尿を作ったり、血液をろ過する働きがあるネフロンは、犬たちの腎臓病でもカギになります。まず、慢性腎臓病という病気は、本来は数十万個存在しているといわれる犬たちの腎臓のネフロンが、何らかの理由で機能しなくなってしまうことによって引き起こされます。

とはいえ、腎臓は非常に予備能力(いざ、という時に働く力)を持っている臓器なので、数十万個のネフロンうち半分まで正常に残っている限り、目立った症状は出ません。しかし、残っているネフロンでそれまで通りの量の尿を作ったり、原尿をろ過することで酷使され、負担が大きくなっていきます。
腎臓病の症状が出始めてからどんどん悪化していく、というイメージはこのことからきているようです。

ネフロンの機能が低下し始めることで、健康なネフロンにもダメージが増えていってしまう一方、機能が低下してしまったネフロンは再生することはありません。多飲多尿(水を多く飲み、尿の量が増える)など、初期の腎臓病の症状がみられるようになったら、なるべく早い段階から腎臓の負担を減らすために獣医師さんに相談を始めることがオススメです。

犬の腎臓病の療法食の考え方について

一般的に、シニア犬になると腎臓のネフロンの処理機能が落ちていき、血液中の毒素をうまく尿として排出しにくくなるといわれています。そのことにより、犬たちの体内に老廃物や毒素が溜まっていってしまい、症状が出るようになることも。詳しい病気のサインについては、こちらの記事で詳しく獣医師が解説していますのでチェックしてみてくださいね。(腎臓病かも?と思ったときに確認しておきたいこと~犬の病気のイントロダクションcase#02~)

腎臓病のサインが見られ始めた犬たちは、腎臓に配慮した療法食などを取り入れることになります。一度機能が落ちてしまったネフロンを再生することは難しいため、老廃物が作られにくくなるように一部の栄養を制限することになります。そんな栄養素ひとつが「リン」
腎臓病の犬たちの場合は、腎臓機能の低下によって余分なリンが捨てられなくなり、体にたまったリンが慢性腎臓病を悪化させてしまうことが知られています。

おわりに

リンは、細胞を作る時に必要な栄養素で、細胞膜を構成するほか、骨や歯をしっかりと強化する働きも持っています。リンが多い食材の多くは、高タンパクの肉類や魚、豆類などが挙げられます。
しかし、犬たちにとってはタンパク質は体を作っていく大切な栄養素です。そのため、初期の腎臓病であれば、健康維持のためにも厳しいタンパク質の制限はしない、という選択をすることもあります。病気の進行度合いや、犬たちの様子を確認しながら柔軟に食事のメニューを考えていくことが、腎臓病の犬たちの食事には大切です。
信頼できる獣医師さんと綿密にコミュニケーションを取りながら、犬たちの食事を選択していくようにしたいですね。

腎臓ケアの療法食+サプリメントをピックアップ