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2020.02.17
老犬の介護が始まったら。お悩み別、暮らしのアドバイス
犬の寿命は人間に比べればとても短く、あっという間に飼い主の年齢を追い越していってしまいます。この近年ではペットの住環境整備や、予防医学の徹底、良質なフードの流通などが盛んになった事もあり犬も長寿化してはいますが老犬期に入る年齢に変わりはありません。言い換えてしまえば、一昔前の犬達に比べ現代の犬達は生涯において老犬期が最も多くの割合を占めているということにもなります。
産まれて最初の1年で20歳、それ以降は1年に4~7歳ずつ年を取ると言われています。
7歳を迎えるころにシニアと言われ、11歳をすぎた辺りからハイシニアと言われるようになります。個体差もありますが、ハイシニア期になると筋肉量が落ちてしまいますから、運動能力の低下や痴呆、内臓疾患など要介護の要素が見られるようになることがあります。数年前まで元気に走っていたのに…と寂しくなるかもしれませんが犬にとってはごく自然に歳を重ねた結果です。
そこで今回は犬が今まで同様、もしくは今まで以上に快適な生活が送れるように飼い主にできることや、介護中の気持ちの持ち方などをご紹介したいと思います。
心得老犬介護、どんな事をしてあげたらいい?
実際に老犬との生活はどのような事に気を付け、どのようなサポートをしてあげれば良いのでしょうか?
ここでは具体的な例と、その対策方法を合わせてお話しします。
老犬の筋力低下による運動障害が出てきたとき。
年齢を重ねてくると筋肉が落ち、見た目にも痩せてくることがあります。
一概に運動障害といっても症状の出方は様々です。
排泄時に決まった場所まで間に合わず粗相してしまったり、小さな段差でも登れなくなってしまったり、ふらついて壁や柱にぶつかってしまうなどのケースが多いようです。
このようなときはできるだけ自宅内をバリアフリー化してあげましょう。例えばフローリングの上は滑りにくいようカーペットのような敷物やマットを敷いてあげる、トイレは今までより数や場所を増やしてあげるといいですね。
また柱や壁などは赤ちゃん用の保護シートなどをつけてあげると犬がぶつかっても安心です。段差はできるだけ無くしフラットな状態を意識してください。また食事のお皿なども台に乗せてあげると首への負担が減り食べやすくなります。
人間と違い4本足で生活している犬達は床がフローリングからマットに変わるだけでもぐっと背中や腰にかかる負担を減らすことが可能です。
犬の認知症かも…と思ったとき。
犬の認知症は主に昼夜逆転に始まり、旋回運動、徘徊、無駄吠え、夜鳴きなどがあげられます。一般論としてこれが最も飼い主の頭を悩ませる行動です。
昼はこんこんと眠り続け、夜になった途端激しく動き出し、まるで遠吠えのように鳴き続ける。飼い主自身の不眠はもちろん、近隣からクレームが入ってしまったというケースもしばしばあります。
このようなときはまず生活リズムを整えることから始めてみましょう。昼間は眠らないよう、できればこまめに散歩に出したり、遊びに意欲的なら知育ゲームや知育おもちゃを取り入れるなど、刺激を促して夜に眠りを誘うのがオススメです。ですがこの方法はお仕事をされている方には少々難しいかもしれません。
■あまり無理をせず動物病院に相談してみるのもひとつの手。
本当に困ったとき、動物病院では就寝前に飲ませしばらく眠れるような安定剤を処方することがが可能です。
お薬を使うことは悪いことではありません。不眠不休の疲弊状態でいらっしゃる飼い主の方も多くいらっしゃいます。飼い主、犬共にしっかりと眠れることで、そこから双方の生活の質が良いほうへと変わっていきます。
辛いときは無理をせず、1泊動物病院にお泊りさせることがあっても良いと思います。犬と向き合う飼い主が健康で元気であることが、老犬介護の鉄則です。犬も大好きな飼い主が元気でいてくれることを望んでいます。
また認知症の症状が出てきている場合、ふらふらと家を出て行ってしまうこともありますので、玄関や門の開閉には細心の注意を払っておきましょう。
歯肉の衰えによる食事困難が出てきたとき。
犬達は上下トータルで42本の歯が生えています。年齢を重ねていくと歯根部分にも歯石が蓄積し、多くの犬たちが歯肉炎、歯周病を持つことになります。
歯のぐらつきや歯肉の炎症は食事の際に痛みを伴うことがあり、結果今までのような量を食べきれなくなってしまう事や、食欲そのものが落ちてきてしまう事もあります。
そういったときは半生タイプのドッグフードや缶詰タイプへの切り替え、もしくはドライフードをふやかしてあげると食べやすくなります。
ハイシニア犬は食べやすいもの、食べたいものを与え、体重を維持することのほうが重要に思います。
病気を発症した際は、比較的痩せている犬より体格がしっかりしている犬の方が回復が早いといわれています。食事困難から痩せてしまわないよう注意してあげましょう。
老犬が寝たきりになった場合。
老犬介護も最終的にはここに行き着きます。
寝たきりになったとき気を付けてあげたいのは褥瘡(じょくそう)、いわゆる床ずれです。
専用のマットなどもありますが動物医療の従事者は時間を決め2~3時間ごとに体位変換といって寝る向きを変えています。
また自分で食事や水の補給ができない場合には脱水にも注意が必要です。
強制給餌といって先が長く作られた専用の注射器のようなシリンジで食事やお水を口に運びます。脱水の目安は皮膚をつまみその戻りが早いか遅いかで判断している飼い主さんが多いです。
排泄はできれば排泄場所まで連れていき体を支えてあげる、もしくはオムツを使います。
長時間つけっぱなしにすると蒸れてしまい皮膚炎や膀胱炎を引き起こしかねないのでこまめにチェックしてあげることも必要です。
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老犬介護を行うにあたり、大いに活躍するのが老犬用のハーネスです。
体全体を支えられるような形状で、犬はもちろん飼い主にとっても犬の移動が楽になるアイテムです。どんなに体が不自由になってもお外の空気を吸わせてあげると犬達は喜びます。ちょっとした外気浴の際や排泄補助の時に使いましょう。
また寝たきりになった犬には床ずれ防止のマットレスがあると便利。低反発のものや防水タイプなど様々ですから介護スタイルに合わせて選ばれるといいかと思います。
なおマットレスを敷き、さらに床ずれになってしまっている、なりそうな箇所にはフェイスタオルなどをまるめていれてあげると心地よさそうにしてくれます。
おわりに
老犬介護はどのご家庭でも決して他人ごとではありません。
子犬期から迎えた可愛い犬が年齢を重ね、年老いていく様を見ることはとても胸が苦しいことかと思います。また、家庭の事情によりできることに限界が出てくるかもしれません。
ですが、これだけは忘れないでください。犬にとって必要なのは、設備が整った介護施設や、専門知識がある医療スタッフではなく、慣れ親しんだ家と、大好きな飼い主です。大好きな飼い主が精一杯頑張り、考え、尽力していることは伝わっています。犬はどんな時でも飼い主にはほめてもらいたいと思っています。介護が辛くなったときは気負いせず、頼れるところに頼ってもいいと思います。
犬と過ごせる限られた時間を少しでも笑顔で過ごせるよう、抱え込まずに取り組んでいきたいですね。