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2020.02.19

必須ビタミンのひとつ、ビオチンは犬の被毛と皮膚の健康維持に役立つ栄養素。

栄養素のなかには、犬たちが体内で合成することができず食事など、外から摂取することが必要な「必須栄養素」と呼ばれるものがあります。
以前、ポチでは必須アミノ酸と呼ばれるアミノ酸のグループ、全10種類についてご紹介しました。(『筋力維持に役立つバリン・イソロイシン、神経系の健康に役立つフェニルアラニン[#犬の必須アミノ酸 ]』 のページ下部にまとめリンクがあります。)

今回は、必須アミノ酸と同じように犬たち自身が体の中で十分に合成することができないため、食事から必ず摂取する必要がある栄養の中から、ビタミンBの一種であるビオチンについて取り上げます。

ビオチンってどんな栄養素?

ビオチンは、水溶性のビタミンの1種で、ビタミンB7やビタミンHなどという別名を持っています。もともと、酵母の成長を促進させる成分として研究されていく中で発見され、やがて卵黄から抽出できることが判明しました。
ビオチンはすべての生物にとって必須の栄養素ですが、自ら作ることが出来るのは一部の微生物やカビ、植物に限られています。食品などの中に自然に存在しているビオチンの多くは、タンパク質と結合している状態であることが多く、体内で分解されてから取り込まれています。

体内では、グルコース(ブドウ糖)や脂肪酸、一部のアミノ酸の代謝において、補酵素として働き、犬の体でエネルギーを作ったり細胞の再合成の際に使用されています。補酵素とは、特定の酵素が働く際に必要な栄養素のこと。
つまり、犬たちは糖・脂質・タンパク質のそれぞれの栄養をエネルギーに変えるとき、ビオチンが必要になるということですね。

また、ビオチンはアミノ酸から細胞を再合成する際にも非常に重要で、欠乏していると皮膚や被毛の新陳代謝に影響が出たり、脱毛などの症状がみられることがあります。

ビオチンは体内の一部でも作ることは可能。

さて、必須栄養素であるビオチンですが、実は犬や私たち人間は体内の一部で作ることが可能だともいわれています。
ビオチンは、一部の腸内細菌が合成することによっても供給されています。腸内細菌のバランスを整えることで、免疫系や腎臓にも嬉しい効果があることは知られていますが、実はエネルギー代謝にとっても腸内細菌は大切な役割を持っています。

基本的には、総合栄養食タイプのドッグフードを与えている限りは不足することはありませんが、犬の腸内環境が安定しなかったり、病気の治療などで抗生物質を投与する必要がある時には、腸内細菌の働きが低下するため、普段の食事に加えて意識的にビオチンを摂取させることが必要になるケースもあるようです。
食事からビオチンを摂取させるのであれば、レバーなどの内臓を活用するほか、卵を活用するのがオススメです。

ビオチンと卵のお話について。

卵はビオチンが豊富に含まれている食材ですが、卵白に含まれる「アビジン」というタンパク質は、生の状態ではビオチンの吸収を阻害する性質を持っています。そのため、卵白だけを生で繰り返し与えてしまうと、犬たちはビオチンを吸収することが出来ず、ビオチン欠乏になってしまうケースも。
犬たちに卵を与える際には、加熱する、全卵を与える、もしくは黄身だけのどちらかにしておくほうが良いかもしれません。卵黄にはアビジンが阻害する量を上回るビオチンが含まれているため、欠乏にはならないとされています。