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2020.05.13
犬が「がん(悪性腫瘍)」と診断されたら。食事のポイント ~ペット栄養管理士のアドバイス #25~
犬たちの毎日の暮らしを少しベターにするTipsを、POCHIのコンサル担当のスタッフたちがお届けします。
*1 ご相談内容は一例であり、犬たちの生活習慣や体格、体質などによって差があります。
~犬が「がん」と診断されたら。食事でできるサポートとは~
<とあるご相談内容>
犬ががん(悪性腫瘍)と診断されました。獣医師さんに基本的なことは指導してもらっていますが、食事の面など家庭で飼い主として気を付けるべきことはありますか?
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POCHI スタッフ OKAPY
犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。
家庭では、飼い主だからできるサポートを。
飼い主としては、大切な家族である犬が直面した、がんという困難に「どうにかしてあげたい」「できることはなんでもしてあげたい」と考えるものですが、私たち家族にできることとしては、犬が飼い主を逆に心配して気遣いをさせないよういつも通りにふるまいつつ、体力をつけるためにできる限り犬が自ら食べてくれるよう食事のサポートをするという方が多いです。
犬は本来食べることは好きですから、体力勝負の病気と闘っていくためにも食事でできる工夫をすることは無駄にはならないはずです。その考え方のひとつとしてご紹介したいと思います。
■がんと診断されたときの栄養面でのサポート
一般にがんになった犬は、多くの場合は炭水化物を抑えた食事を与えるよう指導されます。これは、がん細胞がほかの健康的な細胞よりも多くの炭水化物を栄養として活動をするといわれているためです。一方で、がん細胞が栄養として使うことが難しいといわれている栄養素が脂質です。
そのため、動物病院では炭水化物を抑えながら脂質のバランスをとった食事を与えることが理想とされています。しかし、家庭でこのバランスを調整した食事を作ったりすることは難しいです。
また、犬が一番大好きなのは飼い主であり、家族がいる自分の家です。食事の内容については動物病院と密に連携をとるように心がけながら、犬が楽しく食事ができるようにサポートしてあげることこそ、飼い主だからこそできることなのかもしれません。
がんの犬のためにできる食事のサポート。
■とにかく食べさせることが大切
食事をちゃんと食べている犬の場合、プラスするならEPAなど魚油(脂質)をトッピングする方が多いです。でも犬が食事をあまり食べたがらない場合は、動物病院で食事に関する指導に従いつつも、食べないことには体力が心配になりますからその旨相談しつつ、柔軟に対応してみてもいいかもしれません。
具体的には、飼い主だけが知っている犬の大好物を少し食べさせてみたり、飼い主が食べているものと同じもの(のように見せかけて犬のためにあらかじめ別にした、味付けしていないおかず、例えば、豚の生姜焼きなら豚肉とショウガを焼いたもの、ゆで卵など)を与えてみるなど、犬が興味を示すようなものを用意します。
おいしい好物を食べることで食に対する関心が復活して、体力作りに必要な栄養を少しでも摂取することができるかもしれません。
また、もしも犬が食べないときに、どうして食べないのと問いかけたりすると、犬も「大好きな家族を悲しませてしまった」と思って落ち込んでしまうケースもあるので、それよりも少しでも食べられた時には「えらいね」「おいしいね」と声をかけてください。犬も飼い主も笑顔で食事ができればおいしさが増すはずです。
それから、飼い主が食事をしている様子を見ると、犬も食欲が出ることもあります。以前は食事のスペースを離したり、時間を人間の食事とずらしていたという家族は、一緒に犬も食事をセッティングすると一緒にごはんを楽しんでいる、という気分になってくれるかもしれません。
■病気の犬が食事を食べなくなってしまうのは、飼い主のせいではありません
犬ががんなどの重い病気にかかってしまったとき、食事を食べなくなるのは飼い主のせいではありません。「おいしくないから」「工夫が足りないから」とついつい自分を責めてしまいがちですが、病気にかかった犬には体内で食欲を抑制するホルモンが出ることが研究で分かっています。
ですから、犬の食欲が落ちてしまっているのは自然なことなのです。もちろん、犬ががんと闘うためには基本的な体力をつけていくことも大切なので、栄養を摂取できるようあらゆる工夫はしておきたいですね。
それでも犬の食欲が出ないときは、動物病院で食欲を促進する薬を処方してもらうこともできます。
「食べる」ことは犬にも人にとっても大事。体にいいもの、健康なものでなくとも犬が興味を示すかどうかを今は優先に、食のサポートをしてみるのでもいいと思います。
おわりに
犬ががんと診断されたとき、強い戸惑いやショックを受ける方がほとんどだと思います。でも、犬は自分のせいで大好きな飼い主を悲しませてしまうと思うと、さらに元気を失ってしまうことがあります。犬には変わらず接しながら、無理のない範囲で食事や生活のサポートをしていきたいですね。
困った時には動物病院や犬友にアドバイスをもらったり、頼ったりすることも大切です。食事の面でも、「少しくらいなら」人間と同じものを食べさせても問題ありません。美味しいもので元気をつけてもらうことも時には必要です。