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2021.09.15
ドッグフードは高タンパクの方が高品質というのは本当?メリット・デメリット
ドッグフードを選ぶときにさまざまな基準でスペックをチェックする方が多いですが、そのチェック項目の一つに「タンパク質量」を挙げる方がいます。同じような原材料なら、なるべくタンパク質が多く含まれているものを選びがちです。
あえて高タンパクのドッグフードを選ぶことにはどんなメリットがあるのでしょうか?また、高タンパクフードを選ぶことにデメリットはあるのでしょうか?
ドッグフードを選ぶときに知っておきたいタンパク質の基本的な話を交えながらご紹介します。
高タンパクドッグフードの特長
まずは、高タンパクドッグフードにはどのような特長があるのでしょうか?
高タンパクドッグフードは、その名の通りタンパク質を多く含むドッグフードのことです。
どれくらいから高タンパクと呼ぶという明確な基準はありませんが、タンパク質量が35%以上くらいから高タンパクドッグフードと呼ぶことが多いようです。
高タンパクのドッグフードはタンパク質を多く含む肉や魚などの動物性の原材料をより多く使用して作られる傾向がありますが、最近欧米で注目を集めている「あえて肉類を使用しない、ベジタリアンレシピ」では植物性のタンパク質を多く含む豆などを利用しているものもあります。
肉や魚を多く使用しているフードの見た目の特長として、黒っぽく粒がぎゅっと固まっているような印象を受けるものが多く見られます。これは肉や魚に含まれる鉄分などの影響で黒っぽい見た目になり、ウンチも黒くなりやすい傾向があるようです。
高タンパクドッグフードを選ぶメリット
高タンパクドッグフードを選ぶメリットには以下のようなものがあります。
・臓器など体作り、被毛の維持のために必要なタンパク質をより多く摂取することができる
・運動量が多い犬の健康的な筋肉を育てる
・お肉や魚の風味がより強く感じられる
一般的に運動量が豊富で、しっかりと体作りを行いたいスポーツドッグや作業犬ではアスリートのように高タンパク・高脂質の食事を与えることが推奨されています。
野生の犬の仲間は捉えた獲物の肉を食べていますが、これに近い食事を与えるべきだという考えのもとで、原材料における肉の比重を増やし、タンパク量がより多いドッグフードを作っているメーカーもあります。
こういったタンパク質量が高いフードは「自然本来の食事」などと表現されることがあります。
ただし野生では肉になかなかありつけないことも少なくないですし、穀類などを加熱して食べることができないため、消化に考慮したタンパク質ならいいのでは、と現在では「野生動物に近づけた食生活がすべての犬に合っている理想的な食事かといわれると必ずしもそうではない」という見方が広まりつつあるので、その点には注意が必要です。
高タンパクドッグフードのデメリット
一方の高タンパクのドッグフードを与えることのデメリットには以下のようなものが挙げられます。
・高タンパクでも繊維質などとのバランスがとれていない食事は下痢の原因になることがある
・腎臓、肝臓・泌尿器に不安がある犬への影響がはっきりしていない
・肉を多く使っていることは一般的なフードと比較すると環境負荷が高い
高タンパクのドッグフードには腎臓の健康維持に深くかかわる栄養素・リンが豊富に含まれる傾向があります。
腎臓の機能が低下している犬は、体内に取り込まれたリンをうまく排出することができず、腎臓の負担を大きくしてしまうだけではなく過剰になったリンがカルシウムと結びつき結晶化してしまうこともあるのです。
リンとタンパク質には非常に深い関係があり、タンパク質が高い食品にはリンも多く含まれる傾向があります。そのため、高タンパクのドッグフードもリンがより多く含まれていて、慢性腎臓病の犬や腎臓の健康維持を意識したい犬には不向きな食事となります。また、リンはストルバイト結晶を構成する成分のひとつであり、リンが高い食事を続けることでストルバイト結晶のリスクが高くなります。
また、門脈シャントに代表される肝臓のトラブルを持っている犬もタンパク質量を制限することが治療の一環として行われることがあります。肝臓では、タンパク質を分解する過程で作られるアンモニアなどの毒素を分解していますが、肝臓の機能そのものが低下していたり、門脈シャントのように肝臓に毒素を運ぶことができない状態の犬は、高タンパク食を与えるとタンパク質の分解に伴って作られる大量のアンモニアが分解されないまま全身に回ってしまうため体調を崩すことがあり、注意が必要です。
高タンパクのフードはこんな犬にオススメ
高タンパクのドッグフードのメリット、デメリットをそれぞれご紹介しました。
犬の健康状態やお悩みによって高タンパクドッグフードが合っているかどうかは変わってきます。まずは現在の犬の健康状態を確認することから始めてみましょう。
ドッグフードを選ぶ際に、以下のような悩みや気になることがあるようであれば高タンパク質のドッグフードを試す価値があるかもしれません。
【高タンパクのドッグフードが適している場合】
・ドッグスポーツなどをしていて、運動量が多く筋肉質な体を作りたい。
・肉や魚が好きで、嗜好性が高いフードを与えたい
逆に以下の特長に近い犬は、高タンパクドッグフードはあっていない可能性があります。
【高タンパクのドッグフードを避けたほうがいい場合】
・腎臓に不安がある
・泌尿器系に不安がある
・門脈シャント・脂肪肝など肝臓の働きが低下する病気がある
オオカミを祖先に持つ犬だから、できるだけ肉を食べさせてあげたいという気持ちになりますが、犬の体質や生活スタイルに合ったフードを選ぶことが何より大切です。
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運動量が多い、といわれている犬種であっても、その子が実際にどれくらいの運動量をこなしているかを確認しましょう。一般的に運動量が非常に多いといわれているボーダーコリーであっても、中には家でのんびりと過ごすことが好き、という子もいます。こういったケースの場合、運動量が一般的な犬と同じくらいというケースもあると思います。
また、暑さが苦手で夏の間は散歩の時間を短くしたり、回数を減らすというケースもありますよね。冬の間に比べると運動量が減るという場合も、夏と冬でタンパク量が違う食事を与えるようにするなどして、運動量に合わせた食事内容を与えるのがオススメです。
おわりに
高タンパクの食事には、犬の体づくりやエネルギー源として大切なタンパク質を効率的にとりれることができるというメリットがあります。
しかし高タンパクフードだからよいというわけではなく、犬によっては高タンパクフードが合わない体質のこともあります。
また、腎臓病などの持病がある犬の場合は高タンパク食が病気を進めてしまう可能性もあり、どれくらいのタンパク量の食事を選ぶかが犬の健康を左右することもあるかもしれません。飼い主が犬の体調を確認し、どんなフードのときにウンチはどうだった、被毛はこうだったなどをメモしておくと、フード選びの役に立ちます。