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2024.01.15

犬の「体臭」と対策についてのアップデート備忘録[スタッフコラム]

犬の「体臭」と対策についてのアップデート備忘録[スタッフコラム]

突然ですが、皆さまの家の犬に体臭ってありますか?それともあまり体臭を感じませんか?
ポチに寄せられるお悩みでは、犬の体臭関することは意外と多いです。

実際に犬と暮らしていると寛容になってしまいがちな犬の体臭。でも、お出かけやお客様を家に招くのであれば、そうも言っていられません。自分が気にならないニオイは慣れてしまうので、知人から指摘されて初めてうちの子の体臭に気が付いた、という方もいるようです。
今回はそんなニオイ問題について、最新ニュースなども踏まえたアップデート備忘録としてまとめてみました。

DOG's TALK

POCHIのペット栄養管理士 岡安

POCHIのペット栄養管理士 岡安

ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。

犬の体臭の成分を調べてみました

現在は犬と暮らしているスタッフですが、以前は猫と暮らしていました。その時に感じていたのが「犬と暮らしている人はニオイでなんとなく分かる」ということ。
自分自身も犬と暮らすようになってからは、猫と暮らしている人に「犬のニオイって分かる?」と質問してみると、かなりの確率で「分かる」との回答がありました。(猫には猫特有のニオイがあるのですが、それはまた別のお話)

ということは、犬の体臭には犬の体臭ならではの特長があるのでは?と考えました。
その特長を抑えることができれば、犬の体臭そのものに対する対策が可能になるのではないかと思ったのです。

■犬と猫の違い

さて、犬の体臭のもとにはどのようなものがあるのでしょうか?
猫と暮らしている人が気付きやすいということは、犬特有の体臭の原因は、猫と犬の違いにあるのでは。

気になるニオイの代表は、ウンチやオシッコなどの排泄物です。しかしながら、ウンチもオシッコも犬も猫も同じようにするものですから、犬特有の体臭の原因とは考えにくいです。むしろ、排泄物のニオイの強さに関しては、食べているもののせいかもしれませんが、犬よりも猫の方が強く感じます(※スタッフの家の場合)。
猫は非常にキレイ好きな生き物で、起きている時間の30~50%もの時間を使って、器用に全身を自分でグルーミングしています。猫は自分で毛づくろいをすることで死毛を取り除き、体の汚れを落としているため、そもそもニオイを発しにくくなっている…というのが通説です。猫のハンティングは基本的に待ち伏せスタイル。体臭が強すぎると、獲物となる動物に感づかれてしまうリスクが高くなってしまうので、定期的に身づくろいをしてニオイを消そうとしているのでしょう。
ということで、毛づくろいをあまりしない犬というのを前提にした場合、習性の差で犬の方が体臭が出やすいということは言えると思います。

 

■犬のニオイの元

改めて犬の体臭の原因となりうる要素には以下のものが考えられます。

・皮脂そのもののニオイ
・皮脂の酸化汚れ
・皮膚表面で菌が繁殖している


これらの要素はそれぞれ深く関係しています。
よく、犬の体にはアポクリン汗腺が多くあることが犬の体臭の原因として指摘されます。実際、アポクリン汗腺は人間の体では限られた部位にしか存在しない一方、犬の体には全体的にアポクリン汗腺があるそうです。
このアポクリン汗腺から分泌される汗には、人間の通常の汗とは異なり、タンパク質、糖類、アンモニア、鉄分、脂質、脂肪酸など、さまざまな成分が含まれています。
これらの成分をエサに、皮膚の常在菌が繁殖し、その際にニオイを発生させるものがあるといわれています。
もちろん、皮脂が皮膚に残り、酸素にさらされ続ければ酸化臭を放つようになりますし、皮膚で嫌な臭いを発生させる菌が増えると、当然ニオイが強く感じられるようになるという訳です。
犬は猫と異なり、自分自身で体をグルーミングすることはあまりありません。あったとしても、気持ちを落ち着かせるためのものであったりして、かける時間も部位も少ないです。そのため、皮膚や被毛の汚れがそのままになってしまったり、皮脂が落ちずにとどまってしまうことが、酸化臭や菌の繁殖を招きやすいのだと考えられます。

■犬はニオイでコミュニケーションを取る生き物

何故、犬は猫と比較して体臭が出やすいようになっているのでしょうか?その答えは、犬がニオイでコミュニケーションを取る生き物であることに関係しているようです。
皆さんご存じの通り、犬にとってクンクンニオイを嗅ぐことは情報収集の手段。犬同士のコミュニケーションにおいては、ニオイから相手の情報を読み取っていると考えられています。
だから、犬にとって体臭は自分の名刺のようなものなのかもしれません。「ああ、このニオイはあの子だ」「このニオイはキミだね」と互いの存在を確認するためにニオイが機能しているようです。
猫と違い、群れ社会を築いてきた犬たちは、コミュニケーションに必要なニオイという要素の優先順位が高くなったのかもしれません。

犬のニオイ対策を考えてみました(基本)

■皮脂を取り除く

犬の皮脂そのものは皮膚や被毛を保護するためにも必要です。ですが、過剰に出てしまったり皮膚の表面で嫌な臭いを発生させる雑菌の繁殖を招くことでニオイのもとになります。このことを踏まえると、皮脂を速やかに取り除くことで犬の体臭を軽減させることができそうな気がします。
まず思いつくのは、シャンプー。シャンプーは汚れを落とすためのものです。しかし、洗いすぎてしまうと必要な皮脂まで落としてしまうと皮膚トラブルを起こしやすくなり、かえってニオイを強く発生させることにもつながりますので、注意が必要です。

 

■汚れや水分はきちんとふき取り、乾燥

次に注意が必要なのは、汚れや水分です。汚れが付いたままだと衛生的ではありません。特にニオイにつながりやすいのは、排泄物汚れや食べかすなどの汚れです。
犬がおしっこをしたときの跳ね返りがお腹に付いたり、ウンチの欠片がお尻についたままになっていると、強いニオイの原因に。
その他にも注意が必要なのは犬の被毛が濡れてしまった時。
急な雨に降られてしまったり、思わぬ形で水に入ってしまった時は、必ず被毛をきちんとふき取り、乾燥させるようにしてください。
皮膚や被毛を濡れたままにしておくと、皮膚や被毛に存在している常在菌のバランスが乱れ、嫌なニオイの原因になります。
そのため、濡れた犬をそのままにしておくと体臭をより強く感じるようになります。
キレイにシャンプーした後もきちんと乾燥させないとニオイの元になることも。実はシャンプーした直後から犬の皮脂は分泌されはじめ、ニオイの原因を作る菌も活動を始めるといわれています。なるべく素早く、しっかりと乾燥させることが犬の体臭予防にとって大切なことなのです。
きちんと乾かしたと思っても、見落とされがちなところとしては、犬の足先や指の間、たれ耳の犬では耳周りの毛などがあります。

 

■ 雑菌が繁殖しやすい環境

犬の皮膚で菌が活発に活動しやすい条件は以下の通りです。

・一定の温度が保たれている
・皮脂などの菌にとっての栄養がある
・適度な湿度がある

犬の体温が保たれ、皮脂が分泌される犬の被毛や皮膚は、ただでさえ雑菌が繁殖しやすい条件がそろっています。さらに濡れたままにしてしまうことで、菌にとって理想的な環境となり、より一層ニオイが強く感じられるようになると考えられています。

■シワシワ顔、顔周りの毛が長い犬は衛生的に

最後に注意したいのが、フレンチブルドッグ、パグ、ボストンテリア、シーズーやペキニーズに代表されるような「鼻ぺちゃ犬」について。

これらの犬は短頭種と呼ばれますが、短頭種の犬は体臭がより強く感じられるといわれています。

それは、顔の皺に皮脂や汚れが溜まりやすく、そこで雑菌が繁殖してより強く体臭が出やすいためです。

また、シーズー、ミニチュアシュナウザー、ヨークシャーテリア、トイプードルなどの「顔周りの毛が長い犬」も注意が必要。これらの犬は口元の毛に食べかすが付いたり、目元の毛が目をチクチク刺激するなどして、涙が流れ被毛が濡れたままになりやすいのです。

被毛や皮膚が濡れたままになることも体臭を強く感じさせる要素の一つですので、これらの犬種はこまめに顔を拭いてあげることも対策になります。

犬の体臭とフードに関する最新研究をアップデート

さて、ここまで犬の皮膚や被毛に存在している菌に対して「ニオイの原因になる厄介者」という印象を与えてしまったかもしれません。
皮膚や被毛に普段から存在している菌を、常在菌と呼びますが、この内、悪さをする菌が過剰に増えてしまうと、ニオイや皮膚トラブルの原因になってしまいます。
しかしこの悪さをする菌を全部なくしてしまえば良い、というものではなくバランスが重要。悪さをする菌と良い働きをする菌、そしてどちらでもない日和見菌…それぞれが適度にバランスを維持する状態が理想的といわれていて、犬一頭一頭、理想的な菌のバランスも異なっているといわれています。

これって、腸内細菌と全く一緒ですよね。免疫機能にかかわる細胞の約7割が存在するといわれる腸の中の腸内細菌のバランスを維持するのに役立つのが、プレバイオティクス。今、海外ではこのプレバイオティクスを食事で継続的に摂取することが、皮膚の健康的な細菌バランスの維持にも役立つのでは?という仮説をもとに研究が進められているのだとか。
どんなプレバイオティクスが犬の皮膚の細菌のバランスに影響を及ぼすのかまでは分かっていないそうですが、これが特定できれば犬の獣臭問題への心強い味方になってくれる気がします。

また、食事が変わることでどのように犬の皮膚の常在菌のバランスが変化するかを調べる研究も進められています。
先日発表された研究では、皮膚疾患のない8匹の犬の皮膚微生物群のサンプルを収集し、どんな菌がどれくらいどの犬の皮膚に住んでいるかを調査しました。その後、8頭は食事を30日間別のものに切り替え、皮膚の細菌たちにどんな変化が見られるかを調査したのだそうです。
その時の調査では、ブドウ球菌などの菌の数に変化が見られたとのことです。食事の内容が変われば、体臭が変わる…このことを科学的に立証できれば、フードでニオイ対策ができるようになるかもしれません。

おわりに

今回、犬の皮膚や被毛のニオイについてご紹介しました。犬の体のニオイを嗅いで愛しさを感じる人も多いと思いますが、そのニオイのもとを知れば、ニオイを防ぐ方法も見えてきます。
犬の体臭対策は、ある意味マナーの一環ともいえますから、犬も人間もストレスなく取り組むことができる対策が生まれればいいな、なんて思っています。食事で体臭が変わるというのが立証され、フードにも取り入れられたら…より多くの犬たちが快適に過ごせるようになるのではないでしょうか。