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2024.01.29

結局、どれがベスト?シニア犬のための関節ケア成分を解説します

結局、どれがベスト?シニア犬のための関節ケア成分を解説します

日本の古い暦、二十四節気では、1月の末頃に「大寒(だいかん)」を迎えます。一年のうちでもっとも冷え込みが厳しくなる時期とされ、実際に最低気温も大寒の期間に記録されることが多いようです。
寒い時期に多くなるのが、犬の関節に関連するトラブルです。今回は、なぜ寒い時期に犬の関節トラブルが多くなるのか、その対策に役立つ成分にはどのようなものがあるのかを、ペット栄養管理士がご紹介します。

DOG's TALK

POCHIのペット栄養管理士 岡安

POCHIのペット栄養管理士 岡安

ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。

冬は関節トラブルが多くなります

犬の関節トラブルは、とくに寒い時期に多くなる傾向にあります。ふと気が付いたら犬が足を引きずっていたり、シニア犬では立ち上がる時にふらつくようになったり…。
冬に犬の関節トラブルが多くなるのには理由があります。

■血行が悪くなるから

まず、寒くなると犬の血行が悪くなります。このことが犬の関節の痛みや違和感をより強く感じさせる原因になっています。

冬場は寒さで足先などまで血管が収縮するため、血行が悪くなる傾向にあります。血のめぐりが悪くなると、筋肉が冷えてこわばるようになり、徐々に関節の曲げ伸ばしにも大きな負担がかかるようになります。
筋肉が固くなることで、ちょっとした運動でも上手く体を動かすことができず、意図せぬ力が入って関節を痛めてしまうということもあります。

■運動量が低下し、体重が増えるから

また、寒さのために運動量が低下して体重が増える傾向にあるのもこの時期。
寒さのせいで散歩の時間や頻度が少なくなったり、温かいベッドの中から出てこなくなったりしていないでしょうか?ちょっとした事の積み重ねで運動量が低下して、体重が増えてしまっているのかも。
人間では、体重が1キロ増えると関節にかかる負担は3倍になるなんて話もあります。犬の場合は、より少ない体重の変化でも関節への影響はあると考えた方が良さそうです。
体重が増えたことで、関節の痛みがより強く感じられたり、運動不足が加速していくために、寒い時期にとくに関節トラブルが多くなる傾向にあります。

関節トラブルに役立つ成分を上手く取り入れよう


犬の関節ケア成分としてよく紹介されるものには以下の成分があります。それぞれ成分や働きに特長があるので、うちの子に合うサプリメントなどを探す際には参考にしてみてくださいね。

■グルコサミン

人間用の関節ケアサプリメントの成分としてもよく知られているのが、グルコサミンです。関節由来の成分として紹介されることが多いですよね。
グルコサミンは本来、体内で合成される成分で、関節の動きを滑らかにする潤滑油のような働きをしています。
しかし、加齢に伴い関節の軟骨がすり減ると、再合成が間に合わず関節の動きが悪くなったり、痛みが出やすくなると考えられています。

グルコサミンはもともと体内にある成分のため、安心に感じる人が多いこともあり、シニア向けのフードやサプリメントでよく使用されています。
摂取による副作用はほとんどないといわれていますが、カニやエビの殻などから作ったグルコサミンを含む製品もあるので、これらにアレルギーのある場合は注意が必要かもしれません。

■コンドロイチン

コンドロイチンも、グルコサミンとセットのような扱いでよく登場する成分です。
軟骨、目の角膜、皮膚などにある成分で、適度な水分を保持し弾力性を保つ働きがあります。
こちらもグルコサミン同様に体内での再合成力が衰え、不足すると軟骨の柔軟性や弾力性が失われて関節の痛みを起こしやすくなる原因になるとされています。

コンドロイチンはネバネバとしていて、食物繊維の仲間でもあり、加熱すると固まる性質があります。
関節系のトラブルだけではなく、目のトラブルの点眼薬にも使用されることがあります。

■コラーゲン

コラーゲンと言えば、こちらも比較的なじみ深い成分です。人間では若々しい肌をキープするために積極的に取り入れているという方も多いですよね。
コラーゲンはタンパク質の一種で、体を構成している全タンパク質の実に30%ほどを占めているとされます。
体内における全コラーゲンの約40%は皮膚や被毛に、約10~20%は骨や軟骨に存在し、他にも血管や内臓など全身のさまざまな場所で活用されています。

コラーゲンは関節に特別よく働きかける成分という訳ではないのですが、関節痛や関節炎の原因となる軟骨を構成する重要な材料がこのコラーゲンです。
すり減ったり、変形した関節の修復にはコラーゲンが必須となります。
この時、グルコサミン、コンドロイチンと一緒にコラーゲンが豊富にあると、より軟骨の健康維持に役立つと考えられています。

■緑イ貝

少し前から関節系のサプリメントに使用されることが増えてきたのが、緑イ貝です。
緑イ貝は、ニュージーランドやオーストラリアなどの南半球、オセアニア地域で昔から先住民に食べられてきた健康食材。近年になり、研究が進められるうちに健康に役立つ食材として注目されるようになりました。
とくに関節や皮膚などの炎症をコントロールする際に役立つ成分が含まれていると考えられます。
その働きが多くの飼い主に実感されたのか、動物病院で処方されるサプリメントでも使用されるなど、一気に広まった印象があります。

とはいえ、まだまだ緑イ貝に関しては分かっていないことも多くあります。アミノ酸やミネラル、酵素、オメガ3脂肪酸など さまざまな成分がバランスよく含まれていて、絶妙なバランスが犬の健康維持に良い影響をもたらしているらしい、ということまでは分かっているのですが、それ以上のことははっきりしていません。
副作用らしいものもなく、安全性が高いといわれていますので、今後はさらに活用される場面が増えていきそうです。

■EPA(オメガ3脂肪酸)

犬の健康維持に大いに役立つとされているオメガ3脂肪酸。
オメガ3脂肪酸の中でも特に関節の健康維持に影響すると考えられているのが、EPAと呼ばれる成分です。
EPAは
最近、EPAがドッグフードで注目されるようになったのは、主にシニア期の犬たちに増える、関節炎などの傷みを抑制する作用が期待できることに由来しています。また、犬たちの辛い関節の痛みを抑えてくれるだけではなく、ガンなど広い意味で炎症を抑制するとされていて、さまざまな研究が進められています。

でも、EPAが効果を発揮するのには、実は他の脂肪酸も必要なのです。
オメガ3脂肪酸の相棒は、オメガ6と呼ばれる脂肪酸。オメガ3とオメガ6の調和が取れてこそ、EPAなどの成分が素晴らしい効果を発揮してくれるのです。
健康に良い成分だからといって、そればかりを摂取していても、必ずしも良いとは限りません。

■MSM

MSMとは、正式名称をメチルスルフォニルメタンといい、骨や皮膚、そして細胞組織に必要なコラーゲンを健康に保つ働きがあり、健康的な体の組織をつくる際に欠かせない成分です。関節痛や筋肉痛をやわらげたり、炎症を抑える効果が期待されています。

MSMと聞くとなんだか化学的に感じるかもしれませんが、実際は天然に存在しているイオウ化合物です。高齢者に多い関節炎やリウマチの薬でも使用されている成分です。
以前は知る人ぞ知る、犬用のサプリメントでも絶大な人気を誇りましたが、最近では緑イ貝の人気の方が高まってきている印象があります。

おわりに:運動量を維持して関節を労わろう

寒い時期に多くなる関節のお悩みですが、その背景には寒さに伴うシニア犬の運動不足と血行不良の問題があるようです。適度な運動量を維持することは筋力や体力そのものを一定以上に保つだけではなく、血行を促進して全身を若々しくさせたり、犬自身の気持ちを明るくするなど、さまざまな働きが期待できます。
今回ご紹介した健康維持に役立つ成分はあくまで補助的なものであり、摂取したからといってすぐに関節の悩みが解消されるようなものではありません。継続的に取り入れながら、家庭でできるマッサージや運動を少しずつ取り入れ、関節の動きを維持できれば理想的ですね。