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2024.05.20
【管理栄養士監修】犬の食物アレルギーとは?|対処法や注意点を解説
犬の皮膚トラブルの原因は、アトピー、感染、食物が代表的です。かゆみや脱毛、湿疹の症状があり、掻く、舐める行動が慢性化するため、完治させたいと願う飼い主の方は多いでしょう。
食物アレルギーの疑われる場合は、獣医師の指導のもと、適切な対処や治療をおこなうと、症状の緩和が期待できます。
本記事では、ペット栄養管理士が犬の食物アレルギーの対処法や注意点を解説します。ぜひ参考にしてみてください。
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管理栄養士・ペット栄養管理士:村瀬由真
4年制大学の管理栄養学科を卒業。食事と栄養の知識を活用し、動物病院や給食委託会社での勤務を経験。現在はチワワや猫たちと一緒に暮らしています。
犬の食物アレルギーとは?
食物アレルギーは、人と同様に犬にも起こりうる疾患です。食事由来で皮膚や消化器官に炎症を起こし、さまざまな健康問題に影響します。
犬の食物アレルギーを詳しく知ることができれば、落ち着いて対処できるようになるはずです。
■犬の食物アレルギーで発症する症状
犬の食物アレルギーで発症する症状は、皮膚と消化器官の症状に分類されます。
皮膚症状は、かゆみや赤み、脱毛、湿疹です。見た目にも気が付きやすく、犬は同じ箇所を執拗に掻く、舐めるなどの変化が見られます。
食物アレルギーは、首から背中に強いかゆみを発する場合が多く、顔や肛門周辺、指先、脇の下など全身に発症します。
同様な症状が出るアトピー性皮膚炎は、背中での発症が少ない傾向にあるようです。
消化器官症状は、涙やよだれ量の増加や、食事直後から数時間以上の経過後に、下痢や嘔吐の症状があらわれます。
同様な症状の疾患もあり、原因に気付きにくいことが特徴です。慢性的な軟便が続き、排便回数が多くなることで、体重が減少する場合もあります。
■食物アレルギーが起こる仕組み
食物アレルギーの原因は、食品中に含まれるタンパク質に反応するためです。
食物アレルギーは、免疫が過剰に反応する疾患であり、特定のタンパク質を摂取すると、吸収する際に異物と認識し、排除しようと血中のIgE抗体やリンパ球が働きます。
動物病院では「アレルギーを発症しやすい構造を持つタンパク質が、原因物質になっているのでは?」と相談されるケースが多いようです。犬では、牛肉、鶏肉、卵、牛乳、小麦、大豆、トウモロコシがアレルゲンとして代表的です。
食物アレルギーは、すべての犬に発症せず、複数の原因物質が関与する可能性や、体調、与えた量、調理過程など、さまざまな条件下で発症率が異なります。
■3歳未満の若い犬に多く発症することも
食物アレルギーは、半年から3歳程度の消化器官が未発達な時期に症状が見られる場合が多いとされています。
幼犬期は、母乳からの免疫機能が働き、血中でIgE抗体が過剰に活性化する場合があります。
初めて食べた食品にアレルギー反応を起こすことがあるのはこのためです。
成長にともない、消化管機能と免疫機能が成熟し、アレルゲンに対する耐性獲得で、発症しにくくなります。
初めての食材を試す場合は、お腹の様子をチェックすることにもなりますので、一度に大量に与えず、体調に変化がないか観察してからがオススメです。
ペット栄養管理士と考える、犬の食物アレルギーの対処法
犬の食物アレルギーが疑われる場合の正しい知識を持ち、治療や食事管理をおこなうことが重要です。
■獣医師に相談し食物アレルギーの原因を調べる
かゆみや湿疹、脱毛、食後の嘔吐や下痢の症状がある場合は、自己判断せず、必ず獣医師に相談しましょう。
食物アレルギーの診断は、原因物質の推定のため、顕微鏡で細菌を調べる皮膚検査、血液中のIgEやリンパ球を調べるアレルギー検査、原因物質を含まない食事を摂る除去食試験をおこないます。
並行して行う基礎的な検査によるその他疾患の除外や、獣医師の経験に基づく症例から総合的に判断し、食物アレルギーが疑わしいと診断します。
皮膚検査やアレルギー検査は短時間でおこなえますが、費用の負担があるでしょう。除去食試験は、判定に時間を要し、複数のアレルゲンが関与すると、すぐには特定まで至らないこともあります。
いずれにせよ、アレルギー反応を引き起こす食べ物を特定するのは根気のいる作業になります。自分の犬にはどんな検査が合っているのか、どんな方法でアレルギーを防ぐのが良いのか、獣医師と相談しながら進めていければベストです。
■疑わしい食材の摂取を避ける
原因物質の可能性がある食材を避けることで、症状を緩和できます。
アレルゲンを含まない除去食や、食べたことのない新奇タンパク質で構成される食事を選択します。
除去食の場合、アレルギー検査や除去食試験で原因物質が特定できた際に効果的です。
新奇タンパク質フードは、普段の食事に含まれない原材料を使用しています。中でも1種類のタンパク質のみの食事LID(原材料限定食)は、アレルゲンに影響されにくくおすすめです。
■消化しやすいタンパク質に調整された食事を与える
消化しやすいタンパク質に調整された食事を与えることで、アレルギー反応がある程度コントロールできるようになることも多いです。
本来、タンパク質は消化酵素などの働きによって分解され、低分子であるアミノ酸として、消化吸収されます。
幼犬期や消化不良の犬は、分解がスムーズにできず、異物を攻撃するリンパ球が反応しアレルギー症状を引き起こします。
すでに消化しやすいよう分解されたペプチドや加水分解と記載される商品がおすすめです。治療食に分類されるフードもあるため、獣医師の指導のもと使用してください。
■抗炎症作用を含む食事を選択する
食物アレルギーに限らず、皮膚トラブル緩和には、抗炎症作用を持つ成分を含む食事がおすすめです。
炎症や消化不良がある場合は、獣医師に相談し、オメガ3系、6系脂肪酸や亜鉛が補強されているドッグフードを選びましょう。
オメガ3系、6系脂肪酸は必須脂肪酸であり、魚油やえごま油、亜麻仁油などに多く含まれます。
抗炎症作用や抗血栓作用を持ち、血液循環を活性化させ、老廃物を排出します。
肉や魚に多く含有する亜鉛は、タンパク質の代謝を促す補酵素の栄養源になり、効率よくアミノ酸に変換させます。
新陳代謝が促進されるため、皮膚や被毛の成長に必須の栄養素です。
犬の食物アレルギーの注意点
犬の食物アレルギーは、獣医師の指導に従い食事管理をおこないましょう。
食事以外にも肌を清潔に保つシャンプーも重要です。
■獣医師の指示に従い食事管理をおこなう
必ず獣医師の指示に従い、アレルギー対応の食事管理をおこないましょう。
自己判断で治療食を与えたり、栄養素を制限したりすると、必要な栄養素の摂取ができず、食物アレルギー以外のトラブルにつながることも。
また、食物アレルギーの食事管理中は、指示通りの食事以外に与えてはいけません。
おやつやトッピングに他の食材を活用すると、食事管理が乱れ、治療の効果が薄れる可能性があります。
厳しい食事制限が続くと、犬も飼い主もストレスになる可能性もあります。無理なく続けられる食事を選択し、アレルギー症状を和らげる投薬やシャンプーを試すのもよいでしょう。
■定期的なシャンプーで肌を清潔に保つ
食事以外にも、肌を清潔に保つ定期的なシャンプーが重要です。
かゆみや赤みの症状がある場合、犬が掻いたり、舐めたりして炎症が広がる恐れがあります。
炎症から細菌が繁殖し、治りにくくなり、出血や他の部位への感染も懸念されます。
アレルギー体質の犬は、皮膚や肌バリアの機能が弱くなっているため、柔らかいブラシや保湿効果、低刺激のシャンプーを選んだ方が無難です。
健康な犬の場合、月に1~2回程度が適当ですが、炎症がある場合は、獣医師に相談し、シャンプーしてください。
ドッグサロンでの炭酸泉や薬浴の利用も効果がある犬もいます。
炎症がひどく、シャンプーできない場合は、炎症を鎮める薬の服用や、エリザベスカラーを装着しましょう。
犬が直接触れないよう、通気性の高い服の活用もおすすめです。
まとめ
本記事では、犬の食物アレルギーの対処法を解説しました。アレルギーの原因となるものには、食事以外にもハウスダストや虫刺されなどもありますが、原因物質の特定や完治は難しい場合がありますが、食事が原因のアレルギーの場合は適切な食事管理で、症状を緩和できます。
長期的な治療が必要になり悩みがちですが、犬と健康的な暮らしを送るために、食物アレルギーについて正しい知識を身に付けましょう。