- コラム
2024.06.05
犬の健康と乳酸菌の最前線。こんな子にオススメ!改めて調べてみました
犬のおなかの調子を整えてくれる乳酸菌。
私たちの暮らしの中でも、犬の健康管理でも比較的よく見るメジャーな存在ですよね。
最近では、その働きがお腹の調子だけではなく、さまざまな面で役立つことが判明し、さらに注目度がアップしています。
しかし改めて考えると、乳酸菌という菌がおなかの調子を整えることは知っていても、乳酸菌とはどのようなものなのか、どんな犬に取り入れるのが良いのか…はっきりしていない、という方もいると思います。
そこで今回は、犬のおなかの調子を整えるのにも役立つ乳酸菌の基礎知識や、乳酸菌の働きについてペット栄養管理士がご紹介いたします。
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POCHIのペット栄養管理士 岡安
ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。
乳酸菌はこんな犬にオススメです!
・お腹の健康維持を意識したい犬
・免疫系の健康維持をサポートしたい犬
・歯周病など口内細菌のバランスが気になる犬
・食が細い、食べムラがある犬
・慢性腎臓病と戦っている犬
犬の健康に役立つ乳酸菌の基礎
乳酸菌は、その名の通り乳酸を作る機能を持っている菌の総称です。
乳酸菌とひとことで言っても様々な種類があります。
ドッグフードやサプリメントに使用されているものでは、アシドフィルス菌、フェシウム菌、フェカリス菌などが有名です。
乳酸菌といえば、私たち人間の身近な食品にも多く含まれていることが知られています。
そして、それらの食品の中でもヨーグルトやチーズ、漬物などの発酵食品に多く含まれています。
食品の発酵は、乳酸菌の働きによっておこる現象です。
乳酸菌は発酵の過程で乳酸という酸性の物質を作り、食品のpHを酸性に傾けさせることで、腐敗を進めるほかの菌類の活動を抑制します。
つまり、乳酸菌が活動することで作られる乳酸で、ほかの菌類が繁殖して品質を劣化させるのを抑制することができるのです。(だから発酵食品は日持ちが良くなります)
また、中にはより抗菌力の強い成分を作ることができる乳酸菌もあり、天然由来の抗菌成分として活用されることもあるようです。
もちろん、この乳酸菌が作る抗菌成分は人体や犬に影響があるものではなく、安全なものです。
乳酸菌の働きをまとめました
■乳酸菌が犬のお腹の調子を整えるのはなぜ?
犬の体の中にも常在菌として乳酸菌は存在しています。
代表的なものとしては、やはり腸内細菌。
乳酸菌が作り出す乳酸は、腸の中のpHを調整して腸内環境が偏ることを防ぐ働きがあります。
腸内のpHが偏ることで、腸内細菌のバランスが乱れ、下痢や便秘などが起こりやすくなるといわれています。
腸内環境を一定に維持してトラブルを未然に防ぐ働きがある乳酸菌は、まさにお腹の中のヒーローなのです。
■口内環境を整えるのはなぜ?
腸だけではなく口の中にも乳酸菌が存在しています。
犬の口内では乳酸菌が作る乳酸も、腸内と同様にpH値のコントロールをサポートしているといわれています。
口内環境がアルカリ性の状態が続くと、歯周病の原因となる菌が繁殖しやすくなったり、口臭につながる可能性があります。
最近では、犬のデンタルケア用品でも口内の乳酸菌の働きをサポートすることで、口内環境の改善に働きかけるものも出てきています。
■免疫系に乳酸菌が役立つって?
犬だけではなく、人間を含めた哺乳類は腸内の粘膜にたくさんの免疫細胞を持っています。これらは消化された食べ物から得られる栄養と一緒に、腸から吸収されてしまうウイルスや有害な物質と戦うために日夜働いてくれています。
また、食べ物と一緒に腸まで届くこれらの有害な物質を免疫細胞は学習し、抗体を作る働きもあるといわれています。体中に存在している免疫細胞と情報共有をして、しっかりとした防衛システムを作るためにも、腸の中の免疫細胞がきちんと働くことはとても大切。
特定の腸内細菌が腸の中にいる/いないによって、細菌やウイルスと戦う抗体(IgA)の量が違ってくることも分かっています。
そのため、腸内環境を整えることが免疫系の適切な機能を維持するためには必要だといわれるようになっています。
■慢性腎臓病と乳酸菌の関係は?
一見するとあまり繋がりがなさそうな乳酸菌と慢性腎臓病ですが、今後はさらにその結びつきが重視されることになるはずです。
乳酸菌が十分に維持されている腸内環境では、慢性腎臓病による体調の悪化を緩やかにする可能性があるためです。
その理由は、消化管の中で作られる窒素と、窒素から作られるアンモニアにあります。
タンパク質を代謝する際、窒素を利用してアンモニアが作られます。このアンモニアが体内で増えると、犬の体調はに悪化すると考えられています。
しかし、乳酸菌などの善玉菌が増殖する際に窒素を利用するため、体内に吸収される窒素物が低減され、結果的に腎臓への負担を軽減するのでは…と期待されているのです。
乳酸菌をとりすぎるとどうなるの?
「体に良いものだから」と、たくさん摂取させたくなってしまう乳酸菌。しかし、お察しの通り、過剰に与えてしまうとおなかの調子を崩す原因となることもあります。
実は、乳酸菌が作り出す乳酸という成分は、腸を刺激してぜん動運動を促します。一度に大量の乳酸菌を摂取すると、このぜん動運動が急に誘発され、下痢や軟便になってしまうことがあります。
また、一度に大量の乳酸菌が腸内で増えすぎてしまうと、腸内フローラのバランスが崩れることにもつながります。もともと、絶妙なバランスでキープされてきた腸内環境。善玉菌も悪玉菌も日和見菌も、それぞれがちょうどいいバランスで存在している状態が理想的と言われています。
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POCHI編集部
何事も「適量」を継続的に与えることが重要ということですね。ちなみに、どんな菌がどれくらい繁殖しているか、腸内細菌の理想的なバランスは犬それぞれ異なるそうです。
おわりに
今回は犬の健康維持に役立つ成分としてすっかりお馴染みの「乳酸菌」に改めて注目してみました。近年ではその働きの多様性や、さまざまな影響により上手く取り入れることが重要視されるようになっています。
身近なものだからこそ、上手く取り入れて犬の健康維持に役立てていきたいですね。