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2024.10.09

【#もっと知りたい】ペット防災を強化!災害時に役立つトレーニングをマスター

【#もっと知りたい】ペット防災を強化!災害時に役立つトレーニングをマスター

今回のお役立ち情報防災トレーニング

WanPeace(神奈川県川崎市)のドッグトレーナーに、災害発生時に役立つトレーニングを教えていただきます。
トレーニングは子犬期だけでなく、成犬からでもマスターできます! さぁ、うちの子との防災対策をさらに強化しましょう。

発災時のストレスを軽減する“社会化”

通園スタイルのしつけ教室、WanPeace(神奈川県川崎市麻生区の犬の幼稚園)のドッグトレーナー大沼香織さんは、日ごろから行っておきたいことの筆頭に、あらゆるものに慣らす“社会化”を挙げます。

「犬を迎えたら早期に、おやつやおもちゃを使いながら、家族以外の人や犬、さらには音やあらゆる環境に慣らす練習をスタートしましょう。
もし苦手なものがあっても、決して無理強いすることなく、犬のペースに合わせながら少しずつ苦手を克服できるようにしてあげてくださいね。
あらゆることに動じにくい精神力を培うことにもなる“社会化”を行っておけば、発災時にパニックになりにくいですし、避難先など自宅とは違うところで生活することになっても、環境変化によるストレスを軽減させてあげられます」(大沼さん)



トレーニング ー1人に慣らす

(1)犬と目を合わせずに、手のにおいを嗅がせましょう。

(2)犬が慣れてきたら、犬と目を合わせずに、手からとっておきのおやつをあげます。



(3)人に対する警戒心が薄らいだ様子を確認できたら、犬の目を見て、手からおやつをあげましょう。

(4)何度か繰り返すと、犬はしっぽが上がるほどに慣れてきました! なお、おやつよりおもちゃが好きな犬は、おもちゃで同じ練習をしてもOK。

「うちの子はそもそも何を怖がっているかを、よく観察して把握しておくことも大切です。
怖いものに対する反応は、しっぽを下げる、頭部を下げる、右往左往するなど、いわゆる“カーミングシグナル”や“ストレスサイン”と呼ばれるしぐさでわかります。それらに対して、飼い主さんが動じず、成果を急ぐあまり失敗しないように気を付けながら、適切に慣らしてあげましょう」(大沼さん)

どこでも必須のハウストレーニング

災害が起きた際に必須とも言えるのが、うちの子がおとなしくクレート(ハウス)に入っていられること。
まず、避難所では同行避難ができても、ペットの部屋と人の部屋は別になると考えられます。犬用の避難室では、それぞれ原則的にクレートに入らなければなりません。
また、親戚や知人宅への避難時、動物病院での避難生活でも、クレートに入ることが求められる可能性が高いでしょう。
さらには、水害や震災の後片付けの際、安全確保のためにも犬たちにはクレートで待機してもらいたいものです。



トレーニング ー2ハウス

(1)クレートはいつも扉を開けておき、中にはその子や飼い主さんのにおいがついたタオルなどを敷いておきます。



(2)おやつをクレート内に投げ入れます。犬が入って食べたら、すぐに出てこられるようにしておくのがポイント。

(3)クレートに入ることに慣れてきたら、クレートの扉を開けたまま、ゴハンを中であげるようにします。



(4)さらに慣れてきたら、ゴハンを食べている間だけ扉を閉め、扉が閉まっている状態にも抵抗感をなくします。

(5)徐々にクレート内に入る頻度をアップし、内部で過ごす時間も延ばしましょう。扉を閉めた状態で静かにしていられたら、外からごほうびにおやつをあげてもOK。

なお、犬によってはタオルなどで視界を遮られたほうが落ち着くこともあります(※クレート内が暑くなりすぎないように要注意)。



(6)いよいよ、合図でクレートに入れるようにトレーニング。まず、「ハウス」と合図を声と指で出しながら、犬が入るのを待ちます。

(7)クレート内で犬がターンをして出入口のほうを向いたら、ごほうびのおやつをあげましょう。

「ハウスを安全な場所だと犬が認識して、自ら好んで入るようになれば、家族とのお出かけ時はもちろん、トリミングサロンや犬の幼稚園・保育園などの送迎時のドライブでも安心です。
日常生活でもハウストレーニングは役立つシーンがたくさんあるので、ぜひマスターしてくださいね。
それから、ぜひ、ハウスで長時間寝られるようになる練習をしておくこともおすすめします。同行避難をした避難所では、飼い主さんが同じ布団で犬と一緒に寝ることができないからです」(大沼さん)



ハウス(クレート)でゆったりできれば犬たちもストレスレス

ハウス(クレート)でゆったりできれば犬たちもストレスレス

合図でトイレができればストレスフリー

被災して自宅ではない環境で過ごすことになった場合、犬たちはどこでいつトイレをしたらいいのか戸惑いがち。また、排泄のために犬を1日に何度も外に連れ出すのが困難なケースもあるでしょう。
そんなとき、合図で促して排尿ができれば、犬も飼い主さんもストレスフリーな生活が送れます。
「ただし、うんちのトレーニングやタイミングのコントロールはむずかしいので、まずはおしっこのトレーニングから練習しましょう。
コマンドで排泄をさせられるようになると、旅行時にも役立ちますし、犬との生活がぐっとラクになりますよ」(大沼さん)



トレーニング ー3合図でトイレ

(1)まず、トイレをサークルなどで仕切ります。次に、寝起き、飲食後、体を動かしたあとなどの犬が排尿したくなるタイミングを見計らって、おやつで犬をトイレに誘導。

(2)トイレから出られないようにして、犬が排泄するのをプレッシャーをかけずにそっと待ちましょう。おしっこを始めたら「ちっち」などの合図を、排尿し終わるまでずっとかけ続けます。

(3)排尿が終わったら「いい子~」などと褒めながらおやつをあげ、トイレから犬を出してあげてください。



(4)このステップを何度か繰り返して犬がトイレを認識したら、トイレの囲いを撤去。最初に「ちっち」などの合図を出して、犬がトイレに入るのを待ちます。

(5)トイレに入って犬が排尿し終わったら、褒めてごほうびをあげましょう。飼い主さんや犬がトイレから離れたところにいても、「ちっち」の合図で犬がトイレでおしっこができるようになったら、トイレトレーニング成功です!

なんでも食べられるように“食育”を

災害の規模にもよりますが、発災時、いつもどおりのゴハンを犬たちに食べさせてあげられない可能性があります。
自宅で過ごせても、停電などが続くと、手作りごはんをあげ続けるのは困難と言えます。また、ストックのドッグフードが尽きてしまったり、避難所で食べなれないドッグフードを支給されたりといったこともあるでしょう。

「大規模災害の場合はペット用フードがいつ届くが見通しがつきません。まず、1ヵ月分はローリングストックをしておきたいものです。
さらには、普段ドライフードの子はウェットフードも食べられるか、手作りゴハンの子はドライフードやレトルトフードなども食べられるかどうかも、事前に確認しておきましょう」(大沼さん)

どんなフードでも食べられるように“食育”でも備えて

どんなフードでも食べられるように“食育”でも備えて

大震災や水害など、災害は、いつどこで起こるかわかりません。
うちの子と万が一被災しても、なるべくストレスを軽減させてあげられるように、そしてお互いの心身の健康を少しでも守れるように、日ごろから“トレーニング”による備えも万全にしておきたいものです。



文:臼井京音 写真:蜂巣文香

■ 大沼香織さん

disaster-preparedness-training_prof.jpgWanPeaceドッグトレーナー。日本ドッグトレーナー協会認定 A級ライセンス取得、JAPDT認定 ペットドッグパートナーズ試験Basicジャッジ(JBA1000)、社会動物環境協会認定 ドッグライフカウンセラー、愛犬家住宅コーディーネーターなどの資格を持ち、ドッグトレーナー歴は約20年。愛犬はミニチュアダックスフンド2頭。



取材協力:

*1 WanPeace https://wan-peace.jp