- 特集
2024.11.28
【#病気とたたかう】車椅子の元保護犬はみんなを勇気づけ、笑顔を誘う!
病気の治療中の過ごし方、病気やハンディキャップとの上手な付き合い方など、同じような悩みと向き合った先輩飼い主の経験や知恵を頼ってみませんか?
病中病後に少し不自由さがある犬たちとその飼い主さんの明日を少しでも明るく、楽しくするために役立つ情報をお届けします。(POCHI編集チーム)
下半身麻痺でも、車椅子があれば大自然の中を駆け巡ったりと、不自由なし! さらに、家族だけでなく出会う人にも勇気と希望を届けているマイロくんの暮らしぶりを、紹介します。
元野犬の“一時預かりボランティア”として出会う
「挑戦してできないことはないと、マイロは信じているようにしか見ません。マイロを迎えてから、家族みんなが前向きになったと感じています」
下半身麻痺のマイロくんと暮らしているケネディ亜梨さんは、そう言いながらマイロくんをやさしくなでます。
推定9歳のマイロくんは、もともとは野犬でした。
「動物愛護団体の一時預かりボランティアとして、4年ほど前の新型コロナ渦にマイロを我が家に迎えました。電車との接触事故を経験して下半身不随のマイロには、定期的なおむつ交換だけでなく圧迫排尿もさせる必要があります。体重18㎏の中型犬ですし、マイロのケアは簡単とは言えません。
ちょうど子どもたちがオンライン授業で家にいた時期だったので、よく一緒に先住犬ブルーノと2頭連れでのお散歩に行ったりしていました。譲渡先は、マイロが足を引きずっても負担が軽く楽しい生活が送れそうな芝生のあるご家庭や、介助などをスムーズにしてもらえる、動物介護や看護の経験者がベストだと思っていましたね。
ところがある日、『私もうまく介護できているよね?』と気がついて(笑)」
こうして、マイロくんは正式に譲渡されケネディ家の一員になりました。
マイロくんを迎えた当初は、亜梨さんにも不安はあったそうです。
「学校生活に戻っていった子どもたちの助けを借りず、ひとりで世話ができるだろうか……、など。でも、試行錯誤しながら考える過程すらも、不思議と楽しくて。
マイロのひたむきな姿を見たり、がんばりたいという気持ちを感じるうちに自分自身も励まされ、数ヵ月かかりましたがすべてが大丈夫になりました」と、微笑みます。
車椅子に乗れば、なんでもできる!
マイロくんの快適生活のために、亜梨さんは車椅子を活用しています。
「散歩など、外に出るときだけ車椅子に乗ります。
ブルーノに負けず劣らずのスピーディーさで、ぐんぐん快走するマイロを見た人から『がんばってるねー!』と、声をかけられることも少なくありません。
マイロの姿を見て勇気づけられたと、公園ではよくご高齢の方から話しかけられます。マイロはどの方にもしっかり笑顔で『ありがとう』とばかりに目線を向けていますね」
マイロくんはこれまで、日帰りや家族旅行先でのハイキングも楽しんできました。
「野山に暮らし自然と親しんでいたマイロですから、豊かな自然のなかで過ごす時間はとてもうれしそう。
じょうずに車椅子を乗りこなし、高低差もなんのそのといった快活さでコースを進み、大自然をエンジョイしています」(亜梨さん)
家族でグランピングをしたりカフェに行ったり、車椅子をはずす室内でも、マイロくんの楽しみは尽きません。
マイロくんはいつも家族の中心に
自宅でのマイロくんのお気に入りの居場所は、2階のリビングのど真ん中。
家族がダイニングテーブルを囲んでいても、ソファに座っていても、マイロくんはみんなの顔を見ていられます。
「車椅子がないと寝たきりというわけではなく、マイロはお尻を床につけたまま立ち上がって自由に動くこともできますよ。
食べることが大好きで、おやつの袋のシャカシャカ音にはすぐ反応して、ブルーノと一緒に私の目の前まで駆けつけてきます」(亜梨さん)
マイロくんの性格は、朗らかでフレンドリー。
取材に訪れた筆者の手からも、キラキラと目を輝かせておやつを食べたり、お気に入りのおもちゃで一緒に遊んだりしてくれました。
夕方になると、学校から帰宅した子どもたちにマイロくんは「元気にしてた? ただいま~」となでられ、満足そうな表情を浮かべていました。
マイロくんからの大きなギフトは“学び”
ラブラドール・レトリーバーのような大きく垂れたマイロくんの耳には、電車接触事故のときの傷跡が残っています。
「お気に入りの枕に頭をのせてスヤスヤと眠るマイロの耳を眺めていると、マイロのように自分の身に起きたすべてをひとつの流れのごとく受け入れて、自分をしっかり持って“今、ここ”にあり続けることの大切さを感じます。
マイロの姿を見ながら過ごすうち、私自身も過去や現状に不満をいだかなくなり、今の自分ができることを真摯に取り組もうと意識できるようになりました。
マイロからの学びは、ほんとうにたくさん。マイロのおかげで、大変だと感じるできごとが未来に起きたとしてもすべては大丈夫なのだと、きっと子どもたちも信じられると思っています。
羽根を持たない天使って、本当にいるんですね」(亜梨さん)
マイロくんは、車椅子にのっていても羽根をつけているかのように心身ともに軽やかに、今日も出会う人の気持ちにも軽さと明るさを届けていることでしょう。
ライター:臼井京音