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2024.12.12

【#大きな犬と】個性派過ぎるコモンドールとプーリー!ハンガリーフェスで触れ合って知った魅力

【#大きな犬と】個性派過ぎるコモンドールとプーリー!ハンガリーフェスで触れ合って知った魅力

同じ犬でも小型犬と大型犬では、育て方や食事など気をつけたいポイントがちょっと違います。でも世の中にある知りたい情報は、小型犬向けが多いのが少々残念…。そんな飼い主さんのために、大きな犬にフォーカスした、健康や食事や遊びといった暮らしの情報を集めて紹介します。(POCHI編集チーム・大きい犬班)



今回の気になる情報ハンガリーの大きな犬

2024年10月に開催されたハンガリーのイベントで、「ハンガリーの固有犬種」としてステージに登壇したコモンドールとプーリーの魅力と個性の秘密を、レポートします。

ハンガリーってどんな国?

2024年10月26日(土)、東京お台場で「第5回 ハンガリーフェスティバル」が開催されました。
その特設ステージに、ハンガリー原産で、JKC(ジャパンケネルクラブ)にも1頭しか登録がない激レア犬種のコモンドールが登ると聞き、POCHI取材班もワクワクしながら訪れました。

こちらが日本では希少犬種のコモンドール

こちらが日本では希少犬種のコモンドール

ハンガリーは、日本の4分の1ほどの国土を持ち、首都ブダペストには200万人が住んでいます。
ヨーロッパの中央部に位置するハンガリーの起源は、ウラル山脈を越えてドナウ中腹に定住した遊牧民族のマジャル民族にあります。アジアに起源を発するといわれるマジャル民族は、アジア色の濃い社会をハンガリーで構成しました。
たとえば、ハンガリーで名前は姓・名の順で、名詞の後には「てにをは」もつき、ハンガリー語と日本語は語順も似ているのだとか。
ハンガリーと日本が友好関係を1869年から続けているのも、うなずけます。

控えコーナーで、別ステージ参加者と触れ合い

控えコーナーで、別ステージ参加者と触れ合い

ハンガリーの牧羊犬もアジアが起源

ハンガリー原産の犬種であるプーリーも、アジアに起源があるようです。
プーリーの祖先犬は、おそらく古代チベットにルーツを持つと考えられていて、その証拠にチベタン・テリアとの共通点が見られるといいます。
シベリアから西に移動していたマジャル民族は、9世紀にはプーリーをハンガリーに連れて来て、牧羊犬として使っていました。
プーリーの役目は、昼間に羊の群れをまとめること。ボーダー・コリーをイメージするとわかりやすいでしょう。
プーリーが体重10~15kgと中型なのは、俊敏で小回りが効くことが仕事に求められたからです。

運動神経バツグンのプーリーは中型犬

運動神経バツグンのプーリーは中型犬

一方、夜間には大きな犬がプーリーとは違う仕事を任されました。それは、羊の群れを襲うオオカミやクマなどの獣や、人間の家畜泥棒や山賊から羊を守ること。
その大型犬が、体重50kg前後のコモンドールで、その祖先は13世紀にモンゴルから渡ってきたという説があります。

コモンドールのドレッドヘアのような縄状の被毛が、獣などから襲撃されても身体を守るのに役立つのは想像に難くありません。プーリーも含め、寒さや風雨に影響されにくいという利点もあります。

コモンドールの被毛は全天候型で、外部刺激に強い

コモンドールの被毛は全天候型で、外部刺激に強い

フェスティバルで大人気のコモンドール

あらゆる犬種を見てきたPOHCI取材班も、フェスティバル会場を訪れ間近でコモンドールを目にしたとき、「おぉ」と感嘆の声を上げずにはいられませんでした。
まず、その大きさ。フェスティバルに遊びに来ていたゴールデン・レトリーバーが小さく思えるほどで、バーニーズ・マウンテン・ドッグよりもやや大きい印象でした。
なんといっても最大の特徴は、その縄状の長い被毛です。同様に被毛が束形状のプーリーには、羊飼いが羊と区別しやすいようにブラックなど単色コートがあるのに対し、コモンドールはアイボリー色のみ。なぜなら羊と同じ毛色ならば、羊と同化させ群れに紛れこませやすく、羊を狙う敵を油断させられるから。コモンドールの後ろ姿や寝ている姿は、ぱっと見、確かに羊のようです。

コモンドールの見た目は被毛が重そうですが、動きはとても軽快

コモンドールの見た目は被毛が重そうですが、動きはとても軽快

特設ステージに登場したコモンドールは、6歳のモンドくんと3歳のリツちゃん。
「ガードドッグとしてのコモンドール気質が強いモンドは、縄張り意識も警戒心も高め。強盗対策には良いかもしれませんが、見知らぬ人には決してなつくことはないので、自宅にお客さんは呼べません」と、飼い主の伊東さんは言います。
リツちゃんは穏やかな性格で、モンドくんとも仲良くしているそうです。

ステージ上で飼い主さんに甘えるコモンドール

ステージ上で飼い主さんに甘えるコモンドール

被毛のお手入れ方法にも質問がおよぶと、観客が興味深そうに耳を傾けていました。
「コモンドールは見てのとおり、トップコートにアンダーコートが絡まった毛束に全身を覆われています。ブラッシングはできないので、手で、くっついている根元の被毛から毛先に向かって割く感じでお手入れをします。
シャンプーは1頭につき月に1回、3時間程度かかります。1日に2頭するのは大変すぎてムリですね」
ボディの被毛はカットせず、足回りだけ切り揃えるそうです。

コモンドールは被毛が3層になった「トリプルコート」

コモンドールは被毛が3層になった「トリプルコート」

最後は好きなものを聞かれ「うちの子たちは、来てからずっと食べている焼き芋が大好きです」と答え、「イメージとちょっと違う~」と、観客の笑いを誘っていました。

黒いモップ犬? プーリーにも観客は夢中

真っ黒なプーリーも、ステージで注目を集めていました。
登壇したのは、3歳の森井イドくん。体高は50cmで体重は14kgだそうです。
「イドは人懐っこく、陽気でやさしい子です。
プーリーは頭がいいので、ハンガリーでは警察犬にもなっています。
プーリーの被毛は、生まれたときは綿あめみたいにフワフワ。1歳過ぎると、根元からモップになります(笑)」とのこと。
イドくんの好物は、レバーと、一緒に住んでいる猫のキャットフードだそうです。

いつも脚の間にいるイドくん。あまり吠えることはないそう

いつも脚の間にいるイドくん。あまり吠えることはないそう

森井さんにステージの外で、プーリーについてさらにうかがいました。
「イドシャンプーは、季節にもより1~2ヵ月に1回行っています。セーターをもみ洗いするイメージですね。シャワーヘッドには靴下をつけて、やさしく洗い流しています。
冬場は浴室暖房をつけて、その中で一緒に読書しながら被毛を乾かすこともありますが、9割はタオルドライをしています」

イドくんは、森井さんにべったりだとも。
「イドは自宅ではいつも私の体にくっついていて、本当にかわいいんです。ハンガリーの陶器ブランドのヘレンドにも、少年の両脚の間にプーリーが挟まっている置物がありますが、まさに、そんな感じで。
ひょうきんな一面もあるので、いつもイドには笑顔にさせてもらっています」

寝そべるモンドくんとリッツちゃん。コモンドールはアメリカではコヨーテを家畜から守る仕事もしています

寝そべるモンドくんとリッツちゃん。コモンドールはアメリカではコヨーテを家畜から守る仕事もしています

会場で、多くの人と一緒に記念撮影を求められ、大人気だったコモンドールとプーリー。
来年開催されステージ登壇が決まった場合は「第6回 ハンガリーフェスティバル 2025」で、あるいは東京でインターペットと同時開催される「FCIインターナショナルドッグショー」で、もしかするとその姿を見られることがあるかもしれません。



文・写真:臼井京音

*1 参考文献:『デズモンド・モリスの犬種事典』(誠文堂新光社)『JKC 全犬種標準書 第12版』(ジャパンケネルクラブ)



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