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2025.02.27

犬に必要な散歩量は一日何時間?《RETRIEVER + POCHI archive008》

犬に必要な散歩量は一日何時間?《RETRIEVER + POCHI archive008》

イラスト=イトウソノコ
構成・文=RETRIEVER編集部

「RETRIEVER」は、ゴールデン、ラブラドール、フラットコーテッドを中心とした、レトリーバー種の専門誌。
陽気で明るい性格は家族に笑いをもたらし、豊かな表情は言葉が通じなくてもコミュニケーションを可能にしています。
何と言っても、人間に対する愛情がとても深い。そんな犬種との暮らしを紹介する「RETRIEVER」さんの素敵な記事をピックアップしてPOCHIバージョンでご紹介。犬種が違っても読めばきっと皆さんのドッグライフがより充実したものになるはずです。(POCHI編集チーム)

適切な散歩時間にかかわる要素はいろいろ

実は「犬の散歩時間がどれくらい必要か」といい切ることは、とても難しいのです。なぜなら、犬に必要な運動量を決めるには、多くの要素が複雑に絡み合っています。
犬の飼い方について書かれたウェブサイトなどを見ると、一日の散歩の目安時間が書かれています。「ラブラドールレトリーバー、ゴールデンレトリーバーなどの大型犬は一日2時間以上、レトリーバー犬の中でもカラダの小さいノヴァ・スコシアのみ一日1時間まで」と記載しています。
「犬の適切な散歩時間を調べた研究はありませんし、調べること自体が不可能に近いと思います。同じ散歩時間でも、歩く速度や歩いた場所の環境などによって運動量はまちまちになりますし、他にもいろいろな要因が複雑に絡み合って、条件をそろえるのが難しいのです」と、動物行動学を専門とする獣医師の水越美奈先生。
「ただ、散歩が足りているかを、愛犬のようすから見極めることはできると思います。『散歩は一日何時間』と決めるのではなく、愛犬のサインをよく観察し、状態に合わせて調整するといいと思います」。

散歩が足りているサインとは?

✓ 足りていない

散歩から帰ってきてしばらくしても落ち着かず、興奮しているようなら、散歩が足りていない可能性があり。

✓ ちょうどよい

心地よく疲れて散歩から帰ってしばらくするとウトウトとうたた寝を始めるぐらいが、ちょうどよい散歩量。

✓ 多すぎ

途中で歩かなくなったり、足を引きずったり、帰宅後に水もごはんも取れないほど疲れているなら、散歩しすぎかも。

散歩の時間帯を考えるための4要素

犬達は、もともとは明け方と夕方に活発になる「薄明薄暮性」ですが、現在では飼い主のライフスタイルに適応して暮らしています。
気温、日照、社会化、食事との関係という四つの要素から、理想の散歩時間帯について考察しましょう。

1気温

犬の散歩の時間帯で考える上で外せないポイントが気温です。人間が快適に感じられる気温は、夏は25〜28℃、冬は17〜22℃といわれ、犬にとってもほぼ同じだと考えられます。
ただ、寒冷な地域生産の犬種は人間よりも暑さに弱く、犬が快適に散歩できる気温は10〜25℃ぐらいだといえます。
そう考えると、東京で夏に快適な時間帯はほぼなく、最も涼しい朝5〜6時ごろを狙っていくしかないのです。

2日照

人間同様、日光を浴びることは犬の健康にとっても大切です。
人間に関していえば、日光浴の利点としてよく挙げられるのがビタミンDの生成ですが、犬は日光浴ではビタミンDをほとんどつくれないことがわかっています。
ただ、日光浴によって、脳内でセロトニンという物質が生成され、体内時計の調整が行われるのは、犬も人間も同じです。
特に昼夜逆転しがちなシニア犬は、朝日を浴びられる時間帯に散歩するといいと思います。

3社会化

犬の散歩の主な目的の一つは、犬に社会性を身につけてさせることです。犬の社会化トレーニングにとって有効な時間帯を狙って、散歩に出かけましょう。
一般的には、他の人や、犬、クルマ、自転車など社会のさまざまな刺激に触れられる、深夜以外の時間帯です。
社会化は子犬の時ほど重要なポイントですが、何歳になっても社会性を継続させ、また、よい刺激を与えるためにも、他の人や犬に会う時間帯に散歩をするのがおすすめです。

4食事との関係

犬の散歩も食事も朝夕2回という家庭は多く、食後に散歩か、散歩後に食事か迷う人もいると思います。食後すぐに運動すると胃捻転の可能性があるため避けたほうがいいと考える獣医師もいます。
自分自身に置き換えると、お腹がいっぱいの時に激しい運動をするのは、気が進まないのではないでしょうか。
できれば、空腹でも満腹でもないタイミングで散歩するのがベストでしょう。

出典:『RETRIEVER』Vol.114/「最強のサンポ術」

*1 監修: 水越美奈。みずこしみな。 獣医師。日本獣医生命科学大学獣医学部獣医保健看護学科教授。動物病院勤務、アメリカ留学、行動クリニック開業を経て、現職。監訳書に『犬と人の絆:なぜ私たちは惹かれあうのか』(緑書房刊)他多数。