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2019.08.28

"カラギーナン"が危険って本当?ドッグフードにも使用されているの?

犬たちの毎日の食事であるドッグフード。毎日元気に長生きしてもらうために、使用されている原材料について調べ、レシピの安全性を確認し、なるべく犬たちの体に負担にならないものを……と思うのが飼い主心理というもの。
でも、中には「危ないって聞いたけれど、本当はどうなんだろう?」と思う成分や「何から作られているか分からない…」という成分もありますよね。
そこで、今回は「それって、本当?」と聞きたくなる「カラギーナン」についてのお話です。

カラギーナンはどんなものに使用されているの?

カラギーナン、という成分は「増粘多糖類」に分類される"添加物"です。海藻の一種である紅藻類からアルカリ抽出により作られます。同じく海藻であるテングサから作られる寒天に組成が似た物質といわれています。とろみをつけられるだけでなく、加工が簡単なのでウェットフードやおやつを固めたり、犬たちの流動食などに使用されることが多いようです。

とろみをつけることで食感が良くなり、嗜好性が上がるほか、飲み込む力が低下しているシニア犬の食事の介助として、スムーズに食物を飲み込むサポートをしてくれます。

人間用の食材としても、飲料や乳製品などのとろみ付けに使用されるほか、犬たち同様介護・医療の現場でも使用されている成分のようです。

この添加物という言葉自体に拒否反応を示す方もいらっしゃいますが、食品添加物はドッグフードだけではなく食品に添加することを認められた物質であり、製造過程で食品に添加、混和などの方法によって使用するものと定義されています。日本では科学的な根拠に即して安全性が保証された成分だけが"食品添加物"として認められています。そしてカラギーナンはこの食品添加物に含まれているため、安全性という面で保証はされているはずなのです。

それなのに、なぜカラギーナンは危険、といわれるようになったのでしょうか?

カラギーナンはなぜ危険と言われているの?


カラギーナンが危険といわれるようになった背景にはとある実験が関係しています。

それは、げっ歯類にカラギーナンを皮下注射した結果、炎症がおきたこと。そして同じくげっ歯類にカラギーナンを大量投与した結果、消化器系にガンが発生した、という実験結果です。

この結果を受けて、カラギーナンは発がん性物質であるという説が大きくなり、やがて危険だといわれるようになったようです。

げっ歯類とは

*1 ラットやマウス、モルモットなどの動物

実際、カラギーナンに危険性はあるの?

しかし、この実験結果にはいくつか疑問が残ります。

まず、げっ歯類に直接皮下注射した結果炎症が起きたということですが、食品として摂取する場合はこの実験の結果は適用されません。体の中に取り込まれる過程が異なるので、そのまま受け取ることは危険です。

また、発がん性が認められた実験も、げっ歯類での実験結果であること。人間に近いサルのほか、犬、猫のような動物では同じような結果は認められていないようです。
カラギーナンがげっ歯類で発がん性が認められたという結果には、げっ歯類だけが保有している腸内細菌の働きの結果である、という検証結果も出ており、こちらが有力視されています。げっ歯類だけが保有している腸内細菌が消化の過程で、カラギーナンに含まれている物質の一部を発がん性のある物質に変えている、と考えられているのです。

なにより、この発がん性が認められた実験自体、カラギーナンを体の小さなげっ歯類に大量に摂取させた結果です。私たち人間はもちろん、犬たちが普通に暮らしている範囲では到底摂取できないほど、大量に摂取しているのであまり現実的な実験だとはいえないと指摘されています。

おわりに

カラギーナンは、犬用のウェットフードやスープ、おやつなどに使用されている成分で、海藻類から作られる寒天に似た物質です。
「危険」という結果だけに限らず実験の結果が出ているからといって、それを鵜呑みにすることはできません。その実験がどのようなものだったのか、結果を信用できる内容だったのかなどをきちんと調べてみる必要があります。

カラギーナンは基本的には植物由来の成分であり、人間の食べ物にも活用されるものだということを理解したら、「あ、これはとろみをつけたかったのね」という風に、作り手の意図が分かって原材料を読むことが面白くなってくるかもしれません。