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2020.04.01
その行動、犬の視力低下のサインかも。シニア犬の行動をチェックしてみよう
同じ時間を一緒に過ごしてきたのに、いつの間にか年をとってシニア犬になっていて、犬と人の過ぎていく時間の速さの違いにはっとさせられることがあります。当たり前の老化ですが、少しでも犬の暮らしの品質=QOL(Quality Of Life)を高めて楽しく健康的なシニアライフにしてあげたいですよね。
シニア犬~ハイシニア犬に多い変化のひとつが、視力の低下です。老化や白内障など、犬の視力が低下する原因はさまざまですが、そのサインにいち早く気が付くことが出来れば、犬との暮らしをより充実したものにできるはず。では、視力が低下した犬にはどんなサインが見られるのでしょうか?飼い主はどんな時に気が付くことができたのでしょうか?
犬との時間をもっと快適に、楽しくするために気を付けたいことの中から、今回は「白内障などによるシニア犬の視力低下」についてそのサインと気を付けたいポイントについてご紹介します。
犬の視力はもともとどれくらいなの?
白内障などによって犬の視力が低下する前、そもそもの犬の視力ってどれくらいなのでしょうか?
犬の視力は、犬種によってその能力に差があるといわれていますし、個体差もあるのですが、人間でいうところの視力0.3相当くらいだと言われているそうです。一般的な犬はあまり視力が鋭いとはいえないのかもしれません。犬がとくに見るのが苦手なのが近い距離といわれています。すぐ近くだとピントを上手く合わせることが出来ず、ぼんやりとしか見えていない可能性が高いのだとか。
ただし、サイトハウンドと呼ばれる犬たちは遠くの獲物を素早く察知する能力を持っていて、遠くを見るための視力も良いといわれています。ボルゾイやグレイハウンド、アフガンハウンドなどがそれにあたります。これらの犬と一緒に暮らしている方なら、犬の視力の鋭さを感じる瞬間もあるかもしれません。
とはいえ、やはり犬にとっても視力は重要な感覚器官。動くものなどへの反応が鈍くなってくるなどして、徐々に視力の衰えを感じるひともいます。
どんな時に気づける?犬の視力低下
犬の視力が低下する原因として挙げられるのは、白内障。老化の症状のひとつでもある白内障ですが、シニア犬に限らず、若い犬でも体質的になりやすい犬もいるようです。
白内障の場合は、少しずつ症状が進行していくので、犬の行動やしぐさが急激に変わる、ということはありませんが、目の中に白い濁りを見つけたりすることで、犬も人間も段階的に対応していくことが可能です。
そのほかにも、糖尿病に伴う網膜症や緑内障などによっても視力が低下することがあります。これらの場合は物にぶつかるようになったり、周囲の音に敏感になるなどの行動の変化が見られてから分かることが多いようです。
怪我によって目が傷ついたり、角膜炎、突発性網膜変性や、網膜剥離、網膜委縮などといわれる眼の病気の場合は、急激に症状が進み、視力が低下するとされ、これらのケースでは、犬も急に見えなくなってしまうことに驚き、戸惑ってしまったり若い犬でも粗相をしてしまうケースもあります。
こちらも参照
視力低下した犬にみられるサイン
視力低下した犬たちに多く見られる行動としては以下のものがあります。
■飼い主のそばで過ごす時間が長くなる
視力が低下した犬の飼い主の多くが「犬が家族の誰かと一緒に居たがるようになる」と感じるようです。
おそらく、犬も不便に感じると同時に頼れる飼い主と一緒に過ごし、安心したいという思いがあるのだと思います。視力が低下した犬は触れられることを嫌がる場合もあるようですが、飼い主のそばでくっつきたがる時には声をかけ、優しく触れてあげることで犬の心のケアにもなるはずです。
■物や人、犬にぶつかるようになる
視力が低下することで、距離感が上手く掴めずに家具や人にぶつかってしまうことが増えます。犬が怪我してしまう前に、家具の配置を変えず、室内のぶつかりそうな場所にクッションを配置するなどの対策をしたり、こまめに犬に声をかけることで誘導するなどの対策が効果的です。ぶつかるからといって、「あれもダメ、これもダメ」と過保護になりすぎてしまうと、犬は自信を無くしてしまうので、犬が安全に過ごせるための工夫を家の中に取り入れるのが良いと思います。
■ニオイチェックが長くなる、念入りになる
視力が低下したことで、犬が得られる情報は当然限られてしまいます。でも、犬には素晴らしい嗅覚があるので、目で見えない分を嗅覚で補おうとする傾向があるようです。ハイシニア犬などが、それまでよりも色々なものを念入りにニオイチェックするようになったら、視力が低下しているかもしれません。
思う存分ニオイチェックをしてもらい、納得してもらうのがいいですね。犬にとって、ニオイをかぐことは楽しみのひとつでもあります。
■散歩への関心が薄くなる
視覚からの情報が減っていくので、犬は散歩をしていても怖くなってしまったり、危険を感じることが出てくるようです。そのため、徐々に散歩への関心が薄くなる傾向が見られます。でも、視力が低下しても犬たちに適度な運動と気分転換となる散歩は大切なので、車の通行量が少なかったり、人通りが少ない道を探してできる限り散歩にでかけましょう。その際の散歩のルートは段差や上り下りがあまりないコースを選ぶとより安心です。
散歩を終えた後の犬が「今日も歩けた!」と自信を持てるよう、飼い主からたくさん話しかけてほめてあげるのがいいと思います。
■さまざまな音によく反応するようになる
視力が低下したことで聴覚が鋭くなるというケースもあります。さまざまな物音に気が付くようになり、以前は反応を示さなかった人の足音などにも反応して吠えたり落ち着かなくなることもあるようです。
無駄吠えが増えたな、と感じたら何かの物音で不安を感じているのかもしれません。たとえば、オモチャ遊びでは今までに聞いたことがある音のものやぬいぐるみなどを好むようになります。
犬は視力が低下しても適応することができる!
さまざまな面で犬たちの暮らしに影響が出る視力の低下。ですが、実際に視力が低下してしまった犬と暮らしている方の中の多くは、「犬が見えない暮らしに慣れていった」「飼い主も犬も暮らしの変化に慣れてきた」と答えているのだとか。犬は視力が低下しても嗅覚や聴覚を使ってそれまでとあまり変わらない暮らしをすることができるよう、適応する能力を持っているようです。
散歩のときは「家族以外の人と犬が触れ合う時に目が見えにくいことを伝える」「他の犬と触れ合う時に相手の犬の飼い主に目が見えにくいことを伝える」というちょっとした声掛けが、散歩を快適にするポイントのようです。
また、室内でも犬が好むおもちゃを使って以前と同じように楽しく遊びましょう。
犬の視力低下の原因、白内障になりやすい犬種はあるの?
POCHIでお世話になっている重視、庄野舞獣医師によると、犬の白内障のうち、遺伝的な要因で起こる白内障の場合起こりやすい犬種があるといいます。
好発犬種で知られているのは、トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフント、ヨークシャー・テリア、柴犬、シー・ズー、アメリカン・コッカ―・スパニエルなどです。犬の遺伝性の場合、若いうちから発症することが多いのも特徴で、白内障は加齢によってでるもの、と認識していると見落とす可能性もあります。
その他、犬では糖尿病になると多くの場合白内障になり、進行が早い特徴もあります。また、物理的な怪我や、ブドウ膜炎などから続発して起きるもの、なども挙げられます。加齢ももちろん要因の一つにはなりえますが、ヒトほど目立っていないというのが特徴です。
犬では糖尿病と白内障には深い結びつきがあり、進行が早い特徴もあるそうです。また、物理的な怪我や、ブドウ膜炎などから続発して起きるもの、なども視力低下の原因の一つ。加齢ももちろん要因の一つにはなりえますが、ヒトほど目立っていないというのが特徴です。
おわりに
犬の視力が低下したり、場合によってはほとんど見えなくなってしまうことは、シニア犬では珍しくありません。ただ、そうなってしまったとしても、犬は見えない状況に適応し、毎日を楽しく過ごそうとします。
飼い主ができるのは、視力が低下しても犬が暮らしやすいように、できる限り犬が普段通りの行動ができるようさりげなくサポートをすることなのかもしれません。シニア犬になったら、パピーのころのように甘えん坊になったり、頑固になったり。犬の個性がより一層分かって、さらに愛おしくなる、という声も多いです。できないことが増えてきたとしても、そばで見守りつつ受け入れて、いつも通りに過ごすことを心がけていきたいですよね。
参考文献
*1 2011「視覚を喪失した犬15例の経時的行動変化と飼い主の意識調査」『日本小動物獣医学会誌 64(51)~(55)』柳いくみ,前原誠也,吉川綾,内田佳子 酪農学園大学獣医学部 https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010810547.pdf