ドッグフードやサプリメントのビール酵母ってどんなもの？犬の健康に良いものなの？

昔からドッグフードや犬のためのサプリメントに使用されてきた酵母。酵母といえば、パンやビールなどの製造工程において使用される微生物の一種で、おもに発酵などを目的としています。

ビール製造時発酵工程が終了後、濾過されて得られるビール酵母もドッグフードや犬のサプリメントに使用されていますが、発酵食品ではないドッグフードやサプリメントになぜこの酵母が使用されているのでしょうか？どのようにして作られるものなのでしょうか？今回はビール酵母の栄養素と、期待されている働きについてご紹介します。

ドッグフードに使用される酵母とは？
ビール酵母に含まれる栄養素
酵母のこれから
おわりに

ドッグフードに使用される酵母とは？

ドッグフードに使用されるビール酵母は、ビールを作るために使われているイースト菌(サッカロマイセス・セレビシエ)です。

古代からパンなどを製造するために使われてきた人間にはなじみ深い微生物ですが、近年ではそのような株の中から選抜された優秀な株が純粋培養されていて、安全性が高いものが使われています。

ビールなどを製造する際に活用されることからも分かるように、この酵母は発酵の過程でアルコールを作る働きがあります。しかし、酵母自体にはアルコールが含まれているわけではありません。

ビール酵母に含まれる栄養素

■アミノ酸(タンパク質)

酵母は微生物とはいえ生物ですので、タンパク質が含まれています。面白いのはうま味を感じるアミノ酸であるグルタミン酸が含まれていること。
犬もうま味を感じるアミノ酸が豊富に含まれていると興味を示しやすいという研究結果が出ていますので、犬にとってはビール酵母が含まれているフードはより美味しいと感じるのかもしれません。
実際、ビール酵母が含まれているフードに犬は興味を示す傾向があります。

■ビタミンB群と核酸

酵母に多く含まれるビタミンB群はエネルギー代謝に深く関係する栄養素で、炭水化物やアミノ酸をエネルギー源として代謝するときに必要な栄養素です。

しかしビタミンB群は、体内に吸収されてすぐにエネルギー代謝に使用できる成分になるわけではありません。ビタミンB群がエネルギー代謝に使用されるためのスイッチのようなものがあるのですが、そのスイッチを入れるためのカギとなるのが核酸。

その核酸が酵母に含まれているので、酵母とビタミンB群を上手く組み合わせて摂取することで、エネルギー代謝が速やかに行われるようになります。

■ミネラル類

ビール酵母には、手作り食で不足しがちなミネラル類も豊富に含まれています。
鉄分やマグネシウム、ナトリウムなども豊富に含まれています。また、犬の手作り食で不足しがちな亜鉛もある程度含まれていますので、ミネラル類の供給源として使用されることもあるのかもしれません。

■腸内環境を整える栄養バランス

ビール酵母に含まれている栄養をそれぞれご紹介してきましたが、ビール酵母に含まれるこれらの栄養の絶妙なバランスが腸内環境にも良い影響を与えることが分かっています。
犬だけではなく、動物の腸内には無数の細菌が住んでいて、良い働きをする菌もいれば悪さをする菌、どちらでもなく勢いがある菌に味方する菌(いわゆる日和見菌)などがいます。これらの菌がバランスよく暮らしている状態が理想的だといわれています。
体に良い働きをしてくれる菌の代表的なものがビフィズス菌などの乳酸菌です。ビール酵母には、乳酸菌の増殖に必要な栄養成分（ビタミンB群、アミノ酸、核酸、食物繊維等）がバランスよく含まれているので、乳酸菌がより育ちやすい環境維持に役立つといわれているのです。

酵母にはさまざまな栄養素が含まれていて、犬の健康維持に役立つ成分もあります。それらの成分を活用するために酵母を使用するケースも多く見られます。
酵母自体はパンやビールなどを作る際に発酵を進めるために使用されますが、酵母そのものにも十分な栄養が含まれているのです。

酵母のこれから

これまでにも役立つ栄養を含むことから活用されてきた酵母ですが、2000年代頃から酵母の細胞壁に含まれるβグルカンが健康的な免疫機能の維持に役立つ可能性があるといわれるようになりました。

酵母を一定期間摂取した場合、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物と闘う免疫細胞(NK細胞)の数が増えた、という研究も出ています。

現在は研究が勧められている段階のようですが、酵母と免疫系の健康維持の関係が明らかになっていけばより広く活用されていくことが増えていくかもしれません。

おわりに

本日はドッグフードやサプリメントに使用される酵母についてご紹介しました。
人間がこれまでパンやビールなどの発酵において活用してきた酵母ですが、酵母自体が持っている栄養素や免疫系の健康維持に役立つことなどが次第に分かってきました。
タンパク質やミネラル類の供給源としても、これまでに使用されてきた肉類などと比較しても遜色ない働きができるのであれば、これからさらに活用の場が広がっていきそうですね。

*1 　ドッグフードのアミノ酸が犬が感じるおいしさに影響している？[#今気になるトピックス]

*2 　中鎖脂肪酸ってどんなもの？犬の肝臓ケア＆エネルギー補給に役立てよう

*3 　ドッグフードの有機ミネラルってどんなもの？ミネラル類に関するちょっとした豆知識