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2021.10.18

ミネラル、ビタミン類が豊富な海洋性ハーブ、ケルプについて

ミネラル、ビタミン類が豊富な海洋性ハーブ、ケルプについて

犬の健康維持に役立つ成分を含む食材の中に、古くから使用されてきた植物・ハーブに分類されるものがあります。
多くのハーブは伝統的に健康維持に役立てられてきたもので、長い歴史を持っています。
その中には、海のハーブと呼ばれるケルプがあります。
実はこのケルプ、陸上に生えている植物ではない海藻の一種。そして見た目は日本人にとてもなじみ深い食材・昆布によく似ていますが違いがあり、面白い歴史を持っています。

本日はそんな少し変わったハーブ、ケルプについて少し深堀してご紹介します。

犬用ハーブ・ケルプってどんなもの?

■ケルプの基礎情報

ケルプはヨーロッパや北部アメリカに広く分布している海藻で、種類としても見た目も日本人になじみ深い昆布に非常に近いものです。
日本の昆布は海底に根を張り太陽の光が届く範囲に分布しています。しかしケルプは浮袋を持っていて、太陽の光が届かない場所に根を張っても太陽の光に向かってどんどん成長することができます。
そうしてケルプは数メートルから数十メートルの長さになるまで成長します。北の海に暮らすラッコが眠る時に波に流されてしまわないよう、体に巻き付けているのもケルプです。

■犬に役立つケルプの成分

犬用サプリメントやドッグフードにも使用されるケルプにはどんな成分が含まれているのでしょうか?

ケルプに含まれる代表的な成分には、ヨウ素や、リン、カルシウム、亜鉛などのミネラルやビタミン、E、A、C、B12、タンパク質、水溶性の食物繊維があります。

とくに犬の健康維持に深く関係する成分に、皮膚、被毛、爪を健康に保ち、脂肪燃焼促進に役立つ「ヨウ素」があります。
内分泌系の甲状腺機能の健康維持にも深く関係する栄養素でもあります。ヨウ素を含む食材は多くないといわれていて、貴重な供給源として考えられています。

また、手作り食を与えていると不足しやすいミネラル類も豊富に含まれています。
犬は人間よりもはるかに必須量が多い亜鉛をはじめ、カルシウムやマグネシウム、鉄分やセレンなどがバランスよく含まれていることから、サプリメントなどによく使われます。

■犬の健康維持と「ヨウ素」の話


犬の健康維持に関する成分としてはあまり聞くことがない「ヨウ素」についてご紹介します。

ヨウ素自体は、交感神経のコントロールに必須の甲状腺ホルモンを作る際に必要となる栄養素です。甲状腺ホルモンは、主に交感神経を活性化させる働きがあり、エネルギー代謝や細胞の健康的な成長に影響するホルモンです。ヨウ素が体内で不足することにより、交感神経と副交感神経の働きが乱れたり、エネルギー代謝に異常が見られ、極端に太りやすくなるなどの症状がみられることもあります。

犬は高齢になると甲状腺機能に関するトラブルが多くなるといわれています。甲状腺機能低下症だけではなく、基本的には犬の糖尿病も甲状腺ホルモンが関係します。
実際にさまざまなトラブルが表面化する前から継続的に、シニア期になっても若々しく元気で過ごしてもらうために、意識したい栄養素のひとつです。

ケルプの豆知識

■ケルプと日本の昆布の違いについて

見た目がそっくりのケルプと日本人にとっておなじみの昆布は近しい種類の海藻ではありますが、大きな違いがあります。

それは、「ケルプは人間の食用よりもサプリメントなどとして活用されることのほうが多い」ということです。
日本では昆布を煮たり、乾物にして食べたりすることが当たり前ですよね。でも、世界的にみるとケルプはあまり料理として食べられておらず、ヨーロッパの人たちに驚かれることがあります。
日本の昆布は海の中に入り込む日光が届く範囲までしか生えませんが、ケルプは巨大に成長し水深数十メートルの深さに根を張ることもあります。ケルプはとても太く大きく成長するので、固くなりやすいのだそうです。
また、日本の海に比べて流れが激しい場所に生えることも多く(ラッコは流されないようにケルプを体に巻き付けて命綱のように使います)より固くなりやすいのです。
ちなみに、ケルプと昆布の違いには生息域もあります。ケルプのほうがより冷たい海で育つことができますが、昆布が生える日本沿岸の海水温は温かすぎてケルプが育つことができないのだそうです。

ただし、アイルランドの近海で収穫される“ハンドカットケルプ”は主にイギリス・EUのレストランに出荷されています。大きく成長し固くなってしまう前のケルプであれば食用に適したものもあるようです。
犬や人間のサプリメントに使用される時にはケルプを乾燥させ、細かく粉末状にしています。

 

■こんな使い方もできる!ケルプの豆知識

ちなみに、18~19世紀のヨーロッパでは、ケルプは石けんの原材料としても使用されていました。ケルプを燃やすと、ケルプに含まれるナトリウムが炭化して炭酸ナトリウムができます。この炭酸ナトリウムと油を混ぜると石けんができます。

とくに産業革命が起こってからは、石けんの製造も効率化され、たくさんのケルプを使った石けんが作られるようになりました。このケルプの石けんは劣悪な衛生状態で暮らしていた多くの労働者たちの暮らしを向上させました。貧しい人々もまめに手を洗ったり、体を洗うことが手軽にできるようになり、病気がかなり減ったといわれています。やはり、病気の予防において手洗いは基本であり、とても効果的なのだなと感じさせられます。
栄養面だけではなく、多くの人々の「衛生管理でも役立てられてきたハーブがケルプなのです。

おわりに

今回は、犬の健康維持に役立つサプリメントに使用されるケルプについてご紹介しました。

ケルプには犬の手作り食などで不足しやすい栄養が多く含まれていますので、栄養を補う目的のサプリメントでよく使われるのも納得ですね。

また、栄養面だけではなく日用品にも用いられてきた歴史を持っているケルプですので、ナチュラル系の石けんなどに今でも使用されています。私たち日本人も意外な形で身近に接していた可能性もありますね。