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2023.07.19
Dog Snapshot R 令和の犬景Vol.28 トコちゃんのぼうけん
写真・文 内村コースケ
犬は太古より人類と一緒に歩んできました。令和の世でも、私たちの暮らしにさまざまな形で犬たちが溶け込んでいます。このフォトエッセイでは、犬がいる情景を通じて犬と暮らす我々の「今」を緩やかに見つめていきます。
山深い原生林へ
犬は、とても好奇心旺盛な動物です。特に子犬は、見るもの嗅ぐもの聞くもの全てが珍しく、あっちへトコトコ、こっちへトコトコ、興味のおもむくままに動き回ります。今回は、そんなボストン・テリアのtoco(トコ)ちゃんと、山深い原生林を散策しました。さて、どんな冒険が待っていることでしょう。
トコちゃんは、生後6カ月の女の子。お散歩デビューした頃は、ママの腕に抱かれておっかなびっくりだったけれど、最近は体も大きくなって、自分の足で元気に駆け回れるようになりました。
でも、まだまだ初めて見聞きすることばかり。遠くから漂う、新しいにおいにも興味しんしんです。そして、今日は初めて、高原の原生林へママと一緒にお出かけ。トコトコトコトコと森へ続く小径を進みます。
森に着きました。見たこともないような大きな木、珍しい鳥の声に、渓流の水音。山の奥の方からにおう気配は、鹿さんかな?
大きな木がいっぱいあったよ!
山の中は涼しくて、とっても気持ちがいいね。「おねえちゃんも来ればよかったのに」。トコちゃんは、同じボストン・テリアの先住犬と一緒に暮らしています。でも、今回、おねえちゃんは体調を崩してお留守番。だから、トコちゃんは、一人で未知の領域に足を踏み込むのも、今日が初めてなのです。
「もっと奥まで行ってみよう」。小さなトコちゃんにとっては、ちょっとした石や木の根も大きな障害物です。よいしょ、よいしょ、と一歩ずつ頑張ります。
先まで進むと、大きな曲がった倒木がありました。そばに立つトコちゃんがますます小さく見えます。
中に住めそうな、大きな木の洞も見つけました。
たくさんおもしろいものを見つけたので、伸びをして休憩。ぼうけんの成果を、ママに報告します。
終点の滝まで頑張りました
さあ、もっと先へ行こう!行き止まりにあったのは・・・
ゴウゴウと大きな音を立てて流れ落ちる滝でした。頑張ってそばまで行ったけれど、本当は怖かったの。だってあんまり音が大きいんだもの。でも、ママに褒めてもらえたし、とっても楽しい一日でした。
■ 内村コースケ(写真家)
1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒。中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験後、カメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「撮れて書ける」フォトジャーナリストとして、ペット・動物愛護問題、地方移住、海外ニュース、帰国子女教育などをテーマに撮影・執筆活動をしている。特にアイメイト(盲導犬)関係の撮影・取材に力を入れている。ライフワークはモノクロのストリート・スナップ。日本写真家協会(JPS)正会員。