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2024.08.21
【#もっと知りたい】低脂肪フードで、膵臓や高脂血症の日常管理
今回のお役立ち情報低脂質フード
体質的に低脂肪のフードが身体に合う、膵炎や高脂血症になったのがきっかけで獣医師に低脂質フードを勧められたなど、さまざなケースで低脂質フードを探す飼い主さんが増えているようです。
低脂肪ドッグフードのメリットや特徴を知り、うちの子の健康管理に役立てましょう。
本記事ライターの犬が慢性膵炎になり……
筆者は、ノーリッチ・テリア2頭と暮らしていました。
テリア系の犬種は膵臓トラブルが生じやすい傾向にありますが、2頭とも、膵炎になりました。
1頭は、10歳のときに嘔吐と下痢とぐったりした様子が見られ、慌てて動物病院に駆け込んだところ「急性膵炎」と診断され、点滴治療を受けるために入院した経験があります。
「注射や点滴で投与する“ブレンダZ”による治療を早期に開始できれば、急性膵炎になっても命を落とさずに回復するケースも多いものです。
いちど急性膵炎を発症した犬は、慢性膵炎にもなりやすいですし、膵臓に負担がかからない低脂肪のフードを今後は食べるようにしてください。フードの脂質は10%以下が好ましいですね」
獣医師からそう言われてから、筆者はそれまで食べていた脂質14%のドライフードをやめ、低脂質フードを選ぶようになりました。
低脂肪フードが推奨される犬とは?
多くの犬たちを診てきた箱崎加奈子獣医師に、どのような犬に低脂肪フードが推奨されるかを聞きました。
「膵炎を経験した犬や慢性膵炎の犬、高脂血症の犬には、低脂肪のフードをおすすめしています。
これまで動物病院で診察してきたケースですと、膵炎はシェットランド・シープドッグ(シェルティー)、コリー、ミニチュア・シュナウザー、ヨークシャー・テリア(ヨーキー)、ジャック・ラッセル・テリア、コッカー・スパニエルなどで他犬種に比べて発症しやすい印象があります。
高脂血症はミニチュア・シュナウザーやシェットランド・シープドッグがかかりやすいと言われています。
また、高脂血症は糖尿病やクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)といった病気に続発して起こるケースも少なくありません。
もちろん、今挙げた犬種の血が入っているミックス犬も、他犬種より罹患しやすい可能性があるでしょう」
膵炎の原因にもなる「高脂血症」とは
脂質代謝異常症とも呼ばれる高脂血症は、血液中の中性脂肪や総コレステロールが高い状態になる代謝疾患です。
高脂血症そのものでは症状はほとんど出ませんが、高脂血症が原因で膵炎になることもあります。
高脂血症は根本治療ができません。けれども、肥満が症状を悪化させるため、高脂血症の犬との生活では体重管理や食事管理が重要になります。食事は、血中の中性脂肪が高くならないように、低脂質フードの活用が勧められます。
「低脂肪のフードを食べていても、脂肪分たっぷりのおやつをあげている飼い主さんも少なくありません。おやつも、脂肪分の少ないものを選んでくださいね」(箱崎獣医師)
急性では命にも危険がおよぶ「膵炎」とは
膵臓は、タンパク質、脂肪、炭水化物を消化する酵素を作り出す臓器。その膵臓に炎症が生じるのが、膵炎です。
若齢から高齢まで、膵炎を発症する可能性があります。
急性膵炎では病状の進行が早く、処置が遅れると腹膜炎や血液凝固異常を引き起こし、発症から数日で命を落とす例もめずらしくありません。
食欲低下や嘔吐や下痢が主な症状ですが、似たような症状が出る胃腸炎よりも急性膵炎のほうが症状は重めで、痛みのある腹部を持ち上げて上半身だけ伏せるようなポーズを取る犬もいます。症状に気づいたら、早めに動物病院へ。
血液検査でリパーゼやCRP(炎症反応)の数値が高かったり、超音波検査(エコー検査)で膵臓に腫れが確認されたりした場合、膵炎であると診断されます。
急性膵炎になった犬は、そもそも膵臓にトラブルを生じやすい傾向があり、再度膵炎を発症したり、慢性膵炎になることも少なくありません。
「膵炎になりやすい犬種や、膵炎を経験した犬は、膵臓に負担をかけないよう、日常的に脂肪分の高い食事を控えるようにしましょう」(箱崎獣医師)
待望の、生肉使用の低脂肪フード
筆者は2頭の慢性膵炎のノーリッチ・テリアと暮らしていたとき、低脂肪のドライフードを探し続けていました。
個人的な好みから、飼料用ではない生肉を使用した原材料を使用したドライフードをうちの子たちに食べさせていたのですが、低脂肪でその条件を満たすフードがなかなか見つからずに苦労した経験があります。
2024年7月に、POCHIから生肉を使った低脂肪フードが新発売されたと知り、正直なところ「うわぁ、あと10年早く欲しかった」と思わずにはいられませんでした。
その「POCHI犬用食事療法食 消化器ケア 低脂肪 フレッシュターキー」をさっそく、我が家の新入りの元野犬雑種に食べさせてみることに。
遺伝子検査の記事<【#サイエンス犬学】遺伝子検査でミックス保護犬の犬種構成や健康情報を知りたい!驚きの体験談>でも紹介したとおり、元保護犬のリリは、100%日本や韓国地方の土着犬の遺伝子を持ちますが、7%ほど共通の遺伝子を持つ犬種として、膵炎や高脂血症になりやすいミニチュア・シュナウザーが多数リストアップされていたこともあり、将来必要になるかもしれないと見越してお試しで与えてみたのです。
POCHI消化器ケア低脂肪は食いつき抜群
「POCHI犬用食事療法食 消化器ケア 低脂肪 フレッシュターキー」のパッケージを開けてドライフードの粒を触ると、サラサラとしていて、脂肪分がいかにも少なそうな印象を受けました。気になる脂質は、5%。
生肉の七面鳥が第一原材料なので香りも良く、リリは首を伸ばしてフードのにおいを嗅いでいます。
与えてみると、ガツガツと一気に完食しました。
食いつきが抜群で、着色料やBHAなどの酸化防止剤や遺伝子組み換え食品(GMO)も一切不使用なところも、筆者は気に入りました。
病気の予防や病気の管理をしていても、うちの子には食べる楽しみを存分に味わってもらいたい。そんな飼い主の願いが叶えてあげられるフードに出会えて、良かった!
肥満にさせないため、そして脂肪を適切に燃焼する筋肉量を維持させるため、うちの子の食事管理と運動管理は重要だとあらためて感じています。
さらに心の健康も大切に、ストレスを減らしてたくさんの幸せを感じてもらえるよう、飼い主としても努めていきたいものです。
文:臼井京音
■ 取材協力:箱崎加奈子 獣医師