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2024.10.30

【#うちの犬とチャレンジ】保護犬の迎え方・暮らし方

【#うちの犬とチャレンジ】保護犬の迎え方・暮らし方

犬たちの個性や犬種の特性による行動は、ワクワクだけでなく社会貢献につながることがあるかもしれません。犬たちの個性を受け入れて、前向きにうちの子と向き合う時間につながる、そんな”チャレンジ”を紹介します。(POCHI編集チーム)

今回のお役立ち情報保護犬

保護犬を迎えるのって、少し大変? そのように感じている方も少なくないでしょう。実際に元野犬を迎えた筆者のエピソードと、保護犬を迎える際に心がけておきたいこと、迎え方などをお伝えします。読めば、きっと保護犬へのハードルが下がるはず。

保護犬と出会うチャンスが増えている!

「次に迎えるなら、保護犬がいいな」
最近、このような声を筆者の身近でよく聞くようになりました。
イギリスやアメリカには、100年以上前から大規模なアニマルシェルター(動物愛護施設)があり、そこから犬や猫を迎えるのはとてもポピュラーなこと。
日本でも昨今、愛護団体が主催する譲渡会があちらこちらで開かれるようになったり、家族募集中の保護犬をインターネットで探せたり、保護犬との出会いのチャンスが増えてきています。

筆者も、インターネットを利用して、元保護犬を迎えたうちのひとり。
“テリア 保護犬”とネット検索をして、見た目が好みでハートを射ぬかれたのが、クリーム色の中毛テリアミックスでした。
「う~ん。体重17kgって、抱っこできるかな? 
それから、野犬時代の椎間板ヘルニアかケガの後遺症かなにかで、後肢がたまにナックリングして、おしっこがピトピトとしっかり閉まらない蛇口状態なのか……」
紹介文を読み、正直ちゅうちょしたのを思い出します。
おそらくそのハンデが原因で、一時預かりボランティアさん宅に半年もいたのでしょう。
けれども、「うちは譲渡可能な地域内だし、なにかのご縁。ともかく、会いに行ってみよう!」と、愛護団体にメールで問い合わせをすることに。

我が家に迎え入れたテリアミックス

我が家に迎え入れたテリアミックス

ドキドキのお見合いとトライアル

愛護団体さんとはメールと電話のやりとりののち、事務所でのお見合いが設定されました。
ワクワクとドキドキを半々に抱きつつ、リリくんと対面すると……。
「デ、デカイ」というのが、最初の印象でした。思ったより骨太でガッシリ体型。病気や老犬になったら抱っこも必要だと思うけど、大丈夫かな、などと再び考えていると、
「こんにちは~っ」と、こちらをまっすぐに見つめつつお手のしぐさであいさつしてくれるではありませんか!
ちゃんと抱っこもできることを確認したら、愛護団体代表と一時預かりさんと、互いに30分ほど情報交換。
帰宅して落ち着いた気持ちで再検討したのち、14歳の先住テリア犬との相性もチェックしたいので、1週間ほどのトライアル(お試し預かり)を申し込みました。

このような譲渡会(Do One Good)に行かなくても直接お見合い申し込みもできます

このような譲渡会(Do One Good)に行かなくても直接お見合い申し込みもできます

トライアルで自宅にやってきたリリくんは、元野犬とは思えないほどに人なつっこく、おおらかな性格。5㎏の先住犬は初対面の一瞬でガウっと強さを示して上位となり、犬同士もうまくいきそうな予感がしました。
漏れやすいおしっこやナックリングも、個性として受け入れつつ、できる限りお互いにストレスにならない対策を講じてやっていけそうです。
その後も先住老犬とも問題なく、そのままうちの子としてリリくんを迎え入れることにしました。
見た目はテリア風ですが、いわゆる“テリア気質”と呼ばれる気の強さや頑固さもなく、まるでレトリーバーかのようなマイルドな性格の、リリ。結局は、アメリカに遺伝子検査を依頼した結果、テリア犬種の遺伝子はまったく入っていないことが判明したのですが、そこも、元野犬雑種を迎え入れるおもしろさとも言えます。

愛護団体“ぼくらはみんないきている”で預かり中の元野犬

愛護団体“ぼくらはみんないきている”で預かり中の元野犬

保護犬を迎えるメリットとは

里親募集をしている保護犬は、成犬が大多数を占めます。
成犬の保護犬を迎える主なメリットとしては、以下のことが挙げられるでしょう。

・頻回なトイレや食事など、子犬期の大変なお世話をしなくてすむ。
・成犬なので気質がほぼ判明していて、家族の性格に合う犬を選びやすい。
・預かりボランティアや愛護団体のトレーナーなどが、すでにある程度のしつけやトレーニングを行っているケースが多い。
・シニアドッグや老犬などを迎える場合、飼い主さん自身がシニアでも新しく犬を迎えやすい。

Do One Good主催の東京都・国連大学前での譲渡会Adoption Parkでの一コマ

Do One Good主催の東京都・国連大学前での譲渡会Adoption Parkでの一コマ

保護犬を迎える際の注意点は?

保護犬を迎える際、注意したい点もあります。
「とくに元野犬に多いのが、脱走ですね。
散歩中、バイクや踏切の音、ゴミ集積所のビニール袋がガサッと風に揺れる音、転がってきたペットボトルなど、野山ではなじみがなかったものや音に遭遇した瞬間、身体をすくめて首輪がスポッと抜け、走り去ってしまうことも少なくありません。
自宅内でも迷子札をつけた首輪をして、さらに散歩中は、人の腰にリードをつないだり斜めがけができるリードも活用しながら、首輪とハーネスのダブルリードで、持ち手を常にギュッと握るのが大切です」
このように語るのは、10年以上、滋賀県で犬と猫の保護活動をしている“ぼくらはみんないきている”の代表、千夏さん。

ぼくらはみんないきているの譲渡会の様子。元野犬は預かり中に散歩トレーニングも

ぼくらはみんないきているの譲渡会の様子。元野犬は預かり中に散歩トレーニングも

また、千夏さんが実際に現場に出向いてレスキューもする多頭飼育崩壊のケースでは、何年もケージから一歩も外に出なかったせいで、散歩で外の世界に出ると完全にフリーズする犬もめずらしくないそうです。
「完全なる社会化不足が原因なのですが、犬たちに無理をさせずじっくり向き合って慣らしていけば、保護した直後のままの態度ということには絶対にありません。
野犬に関しては、生後早期に保護された子犬や、もともと野犬気質の強くない子は、人慣れしやすい傾向にあります。
ただ、生後3ヵ月を過ぎて保護された野犬は、人間との生活に慣れるまでは年月単位で時間がかかる子も多いですね。
多頭飼育やブリーダー崩壊現場から保護された犬、そして野犬は、最初は距離があっても、人間側の配慮と寛大さと忍耐と愛情で、必ず距離は少しずつ縮まっていくと信じてくださいね」(千夏さん)

千夏さんと、預かり中の元野犬たち。だんだん慣れてきているとのこと

千夏さんと、預かり中の元野犬たち。だんだん慣れてきているとのこと

どこで、どうやって保護犬を迎えればいい?

保護犬を迎えたい場合、さまざまな手段があります。主な方法は、以下のとおり。

・動物愛護団体の譲渡会に参加
・商業施設などで開催される譲渡会イベントに参加
・自治体の動物愛護センターなどの譲渡会に参加
・直接、動物愛護センターや愛護団体に問い合わせてお見合い

譲渡会の日程や愛護団体は、インターネットで簡単に見つけられます。
ただ、愛護団体によって、留守番時間、希望者の年齢などに制限を設けているケースがあります。さらに、保護犬の性格によっては、多頭飼育はNG、ひとり暮らしや乳幼児のいる家庭はNGなどの条件がついているかもしれません。
それらの条件は、問い合わせ前によく確認しましょう。

「譲渡会などでは、スタッフに気軽に声をかけてくださいね。『どこから来たの?』『性格は?』など、どんな質問でもやさしくていねいに説明しますから」と、千夏さんは言います。

譲渡会Adoption PARKは都会のど真ん中で開催

譲渡会Adoption PARKは都会のど真ん中で開催

複数の愛護団体が、ひとつの会場に集まって新しい家族を探す譲渡会もあります。
まずはそのようなイベントに足を運んでみるのも、保護犬を検討する際に参考になるでしょう。
「東京都青山の国連大学前で10年以上前から定期開催している“Adoption PARK(アダプションパーク)”では、農産物などを販売するマルシェも同時開催しているので、ぜひふらっと立ち寄ってみてください。考え方が違ってもお互いを尊重しあって保護活動をしているさまざまな団体があることや、保護動物の現状を見たり知ったりしてもらいたいと思っています」
このように語る、イベント主催団体Do One Good代表理事の高橋一聡さんは、この10年で保護犬を迎える人がどんどん増えていると実感しているそうです。
同イベントやペットが立ち入れない商業施設や飲食店では、パネル展示による里親募集も開催され、その展示をとおして何頭もの保護犬が新しい家族との縁を結べました。

Do One Goodのパネル展示スタイルの譲渡会は、どこでも開催可能!

Do One Goodのパネル展示スタイルの譲渡会は、どこでも開催可能!

筆者も、人生4頭目にして初めての保護犬を迎えたばかり。身体的なハンディキャップもある元野犬だったので自分自身にとってはチャレンジと言えましたが、ふたを開けてみれば、ハチャメチャな子犬期から育てたテリア気質満点の先住犬のほうが大変だったかも……。
もちろん、飼い主さんが大変だと感じるポイントもそれぞれ異なるとは思いますが、保護犬だからむずかしいに違いないと固定概念を抱かず、“十頭十色”の犬のうちの1頭として、これからは保護犬という選択肢を加えてみてはいかがですか? みなさんにご縁のある保護犬は、案外身近にいるかもしれません。

Adoption PARKで、相談にのるスタッフ

Adoption PARKで、相談にのるスタッフ



文:臼井京音

取材協力:

*1 ぼくらはみんないきている https://www.facebook.com/profile.php?id=100070146992319

*2 一般社団法人Do One Good https://doonegood.jp