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2024.12.26

【管理栄養士が解説】犬に甘酒を与えても大丈夫?効果や選び方を紹介

【管理栄養士が解説】犬に甘酒を与えても大丈夫?効果や選び方を紹介

甘酒は、素早くエネルギーになりやすいブドウ糖やビタミンなどが豊富なため、「飲む点滴」「飲む美容液」ともいわれるほど美容と健康に良い食品です。
犬がアルコールを含んでいない甘酒を飲んでも問題はなく、栄養や水分を補えます。ただし、甘酒を選ぶ際の注意点や与え方の工夫が必要です。

本記事では、犬に甘酒を与える際の方法や期待できる健康的な効果について解説します。甘酒がおすすめの犬も紹介するため、最後まで読んでみてください。

犬に甘酒を与えても大丈夫?

犬に甘酒を与えても大丈夫です。
ただし甘酒は2パターンの製造方法があり、アルコールの含まれない「麹甘酒」を選ぶ必要があります。
また、与えすぎると体調を崩してしまうこともあるため、量も注意しましょう。

■砂糖不使用・アルコールゼロの甘酒を選ぶ

犬に与えても問題ない甘酒は「麹甘酒」です。
麹甘酒とは、お米と蒸したお米に麹菌を繁殖させた米麹のみで作られたもので、アルコールや砂糖は含まれません。
一方、酒粕甘酒と呼ばれる甘酒は、アルコール発酵する酵母菌を加えて作られており、アルコールが含まれます。また、味を調整する目的で砂糖や甘味料などが添加される場合もあります。

犬に与える際の甘酒は、砂糖やアルコールが含まれていないものを選べるよう、甘酒の種類を確認しましょう。

■甘酒の与え方

犬に甘酒を与える際は、与えすぎないことが重要です。甘酒にはブドウ糖や犬の必須アミノ酸10種類全てを含有するなど栄養成分が豊富に含まれるため、多量摂取は栄養過多になる可能性があります。
犬にはじめて甘酒を与える際は、小さじ1〜2杯程度にし、水で薄めたり、フードに少量かけたりするとよいでしょう。

比較的アレルギーは起きにくいものの、犬の体質や体調により甘酒が適さない場合もあります。
与えて数時間は十分に体調変化を観察してください。

犬に甘酒を与えるメリットを考えてみる

甘酒は、健康や美容に良い効果が期待できる食材で、犬の体にも嬉しい成分が含まれます。素早くエネルギーになるブドウ糖や被毛の健康を維持するビタミン、消化吸収を助ける酵素などが豊富です。
それぞれの栄養成分について詳しく解説します。

■ブドウ糖による糖分補給

甘酒には、消化吸収が早く、即効的にエネルギーになるブドウ糖(グルコース)が含まれます。

ブドウ糖とは、自然界に最も多く存在する単糖類の一種で、脳がエネルギーとして使用できる唯一の成分です。
通常、デンプンや乳糖など食べ物に含まれる糖質は体内に吸収される際、糖の最小単位であるブドウ糖の形に分解されます。
甘酒はブドウ糖の形で含まれているため、分解する必要がなく、素早くエネルギー源になります。

即効性があるブドウ糖は、食欲が低下しているシニア犬や術後の回復食でも役立つ成分であるため、エネルギー補給にも甘酒が効果的です。

■犬に必要な必須アミノ酸全種含有で全身の機能をサポート

甘酒には犬に必要な必須アミノ酸10種類全てが含まれています。
アミノ酸は、体に必要なタンパク質を合成する働きがあります。アミノ酸が不足すると、タンパク質合成がされにくくなり、結果、皮膚や被毛の艶がなくなったり、免疫力が低下しやすくなります。

体にとって重要なアミノ酸の内、体内で合成できず食べ物から摂取しなければならないアミノ酸10種類を必須アミノ酸とよび、甘酒には必須アミノ酸10種類すべてが含まれています。
食欲がない時には、効率よく必須アミノ酸を摂取できておすすめです。

■豊富なビタミンB群で被毛の健康を維持

甘酒にはビタミンB群が豊富に含まれ、犬の皮膚や被毛の健康維持をサポートします。
甘酒は、麹菌がお米のデンプンやタンパク質を分解する過程で、ビタミンB群を生成します。

とくに豊富なビタミンB群は、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシンです。
ビタミンB1は、糖質のエネルギー代謝に必要な成分で、犬の皮膚の健康を維持するのに重要です。皮膚の健康にはエネルギー供給が不可欠で、皮膚のトラブルを防ぐ効果が期待できます。

また、ビタミンB2は脂質の代謝に寄与し、皮膚の細胞や被毛の維持に役立ち、ナイアシンの作用により、血行促進や皮膚の健康維持をサポートします。
皮膚の細胞が活性化し、血行が良くなると、皮膚や被毛の栄養供給が改善され、毛が艶やかで毛並みをよく保てるでしょう。

■酵素の効果で消化吸収をサポート

甘酒は、麴菌が酵素を分泌するため酵素の持つ作用が体内で消化吸収をサポートします。
麴菌の発酵によって生成された酵素は消化を助け、胃腸に優しい成分です。
犬の腸内の環境を整え、免疫力を向上させる効果が期待できます。

代表的な酵素は次のとおりです。

  • アミラーゼ:デンプンをブドウ糖に分解する酵素
  • プロテアーゼ:タンパク質をアミノ酸に分解する酵素
  • リパーゼ:脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解する酵素

通常、エネルギー源になる糖質やタンパク質、脂質が含まれる食事を摂取した際、体内に吸収するためには消化酵素により小さな物質に分解されます。
犬の消化酵素は、胃液や膵液などに含まれますが、甘酒から摂ることで、消化吸収を助ける役割を担います。

こんな子に甘酒はオススメ!

甘酒は健康や被毛の健康に役立つ食品で、犬にもおすすめです。とくに、食欲が低下しているシニア犬や健康的な被毛を保ちたい犬に与えるとよいでしょう。
これからの寒い季節は水分摂取量が減少する場合もあるため、水分補給を促進するアイテムとしても活用できます。

■介護が必要な犬の糖分補給

甘酒は素早くエネルギー源になるため、食欲不振のシニア犬のエネルギー補給におすすめです。
自然な甘みで食欲を促す効果もあり、普段のドッグフードに数滴加えてみましょう。
消化吸収をサポートする効果も期待できるため、胃腸が衰えていることも多い、介護度の高い犬にはとくにおすすめです。

■キレイに保ちたい被毛ケア

甘酒に含まれるビタミンB群や酵素の効果で毛並みをキレイに保つ効果が期待できます。
腸内環境を整え、体内の血の巡りがよくなると栄養素が全身に生き届きやすくなります。
甘酒に含まれる栄養素は細胞の新陳代謝をサポートする働きが期待できるので、涙やけや皮膚の乾燥に悩んでいる犬にもおすすめなため、適量を与えてみるとよいでしょう。

■寒い時期の水分補給

甘酒を少量加えた水を与えると、水分摂取を促す効果も期待できます。
冬の寒い時期は、犬の水分摂取量が減少する傾向があります。
冷たい水は体を冷やす場合もあるため、30~35℃程度のぬるま湯に甘酒を加える方法もおすすめです。
甘味を好む犬は比較的多いため、飲水量が少ない場合は試してみてください。

まとめ

栄養豊富な甘酒は、犬に与えても大丈夫な食品です。ただし与える際は、アルコールや砂糖などが含まれない甘酒を選び、肥満や血糖値の急上昇の原因にならないよう少量にしましょう。
素早くエネルギーになるブドウ糖や皮膚、被毛の健康をサポートするビタミンが豊富なため、犬の健康に役立ちます。
食欲がないときのエネルギーチャージや水分摂取量が減る寒い冬に、甘酒を取り入れてみてはどうでしょうか