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2018.04.30
フィトセラピストが贈る、犬と暮らしのハーブ便り「カレンデュラ」
「カレンデュラ」は、ポットマリーゴールド・キンセンカの別名を持つキク科の植物です。
春の庭では度々見かけることも多いカレンデュラですが、実はこの時期に嬉しい効果を持つ薬草として、古くからヨーロッパでは親しまれてきました。
春先は寒暖差の激しい毎日に加えて、日差しも少しずつ強くなり、お肌や粘膜へのダメージが蓄積され始める時期。
実は、春は細胞が再生する季節。冬の間、寒さや乾燥から守ってくれた肌や粘膜をいたわることで皮膚トラブルが起きづらい健康な皮膚を保つためのケアをスタートさせるのがオススメです。
そんな今だからこそ、注目したい「カレンデュラ」の力をご紹介致します。
4月のオススメハーブカレンデュラ
別名:ポットマリーゴールド・キンセンカ
科名:キク科
使用部位:花部
有効成分:
カロテノイド、カレンデュリン、フラボノイド、ステロール、サポニン、トリテルペノイド、ルティン、苦味質、粘液質、多糖類、精油成分、ステロイド化合物など
※明確なエストロゲン様作用は報告されていませんが、念のため妊婦・授乳中の犬は避けましょう。
ただし、茶剤(ハーブティー)として服用する場合は、問題ありません。
カレンデュラってどんなハーブ?
春になるとヨーロッパの庭には太陽のハーブと呼ばれるカレンデュラの花が咲き誇ります。
その光景は待ちこがれた春の温かい光が感じられ、人々の心に明るさを与えてくれます。
「カレンデュラ」はマリーゴールドとも呼ばれ、この花が中世の教会のお祭りで聖母マリアに捧げられたことに由来し 、「Mary's Gold」と名付けられ、マリアさまの黄金の花として親しまれています。
薬効が多岐にわたることからハーバリストたちは、親しみを込めて「魔法の花」と呼んだりします。
また、「カレンデュラ」はコンパニオンプランツとしても有名。
早春から咲き始め、花期が長く育てやすいので園芸用の花として楽しまれていて、 その主な品種は「フレンチ・マリーゴールド」で、日本では「キンセンカ」と呼ばれています。
根に含まれる「アルファ・ターチェニール」という有効成分が、 植物に害を与える「センチュウ」と「害虫」の発生を抑制する効果があるので、実用目的で野菜畑や花壇に植えられています。
■ ちょっとひと言
学名「Calendula officinalis」は、ラテン語の「Calende(各月の初日)」が語源とされ、原産地のエジプトや地中海沿岸の温暖な気候では、一年を通して咲くことから由来し、現在のカレンダーの語源でもあります。
太陽が昇るとともに花が開き、夜になると閉じる「カレンデュラ」は、昔は花びらの開閉により、人々に朝と夕方を知らせる「花時計」としても利用されていたそうですよ。
カラダに役立つの?
「カレンデュラ」は、古い歴史を持ち薬用と共に食用としても使用されていました。
ヨーロッパでは食べられる花「エディブルフラワー」といって、葉はサラダに、美しいオレンジ色の花びらは、米、魚料理に彩りを添え、
お菓子の色付け、チーズやジャムなどの着色料としても使用されてきました。
薬用としてはとても優秀なハーブで、胃炎や消化性潰瘍にも素晴らしい効果があり、抗炎症作用により喉の炎症や皮膚のトラブル、外傷、熱傷の治癒に用いられてきた歴史を持ちます。
万能ハーブと呼ばれる「カレンデュラ」の多岐にわたる使い方の本質は「(1)損傷を受けた皮膚や粘膜の修復、(2)保護」。
花びらを植物油に浸出したマセレイテッドオイルの「カレンデュラ」オイルやミツロウを使った「カレンデュラ」クリームは、口唇の荒れや皮膚トラブル、切り傷、スキンケアとして用いられ、もちろん犬用のスキンケア用品にも使用されています。
(1)損傷を受けた皮膚や粘膜の修復
花びらにはダメージを受けた皮膚や粘膜、毛細血管の修復を速やかに促すカロテンや、殺菌・収斂の働きをするタンニン、 カレンデュリンなどが含まれています。
擦り傷、切り傷、治癒の遅い傷、手荒れ、スキンケア、消化器系の荒れなどに最も利用されたハーブの1つで、 ドイツと他のヨーロッパ諸国で薬用として承認されています。
また、「カレンデュラ」はタンパク質とコラーゲンの代謝を促進して、新しい健康な細胞が発達するのを助けます。 未だこのメカニズムは完全に分析されていないのですが、「カレンデュラ」の成分の多糖体は免疫系を調整し、 さらにカロテノイド色素やフラボノイドなどが複合的に働いて創傷治癒を促すことは解明されています。
(2)保護
皮膚の角質層には大きく2つの機能があります。
ひとつは、体内の水分の蒸発を防ぎ、乾燥肌にならないようにする保湿機能。
もうひとつは、化学物質や大気汚染物質、ダニ、ハウスダストなどのアレルゲンや、 細菌などの異物が体内に入り込むのを防ぐバリア機能です。
皮膚、粘膜が荒れたり、損傷を受けていると皮膚のバリア機能が低下して異物が入りやすい状態になり、ウイルスや菌に感染しやすくなります。
ホリスティックな考え方では、消化器系の粘膜と外側の皮膚は繋がっていて影響しあっていると考えます。
皆さんも胃腸が疲れたりすると吹き出物がでたり、肌が荒れてしまったという経験があるかと思いますが、 「カレンデュラ」は内臓機能、皮膚どちらにも働きかけることができるので、 内側と外側(ハーブティーやオイル)の両方からのケアすることをオススメしています。
■ ちょっとひと言
ナチュラルメディスンとして使用されるのは、「ポット・マリーゴールド」と言う品種で、 他の品種のマリーゴールドと混同しないように学名の「カレンデュラ」と呼ばれることがあります。 これらのハーブは薬理成分が異なるため、使用する際には学名をチェックすることが大切。
もっと詳しく!カレンデュラの働き
「カレンデュラ」に含まれるトリテルペノイドは抗炎症、抗ウイルス作用とともに、 免疫系を刺激して白血球の貪食作用を増やす働きがあることから、殺菌作用とともに感染に対する抵抗力を高めます。
更に発汗作用や解熱作用、抗炎症作用により、喉の炎症、痛みの緩和などの初期段階における風邪にも有効とされています。
研究によると、「カレンデュラ」はウイルスを抑え、リンパの老廃物の排泄を助け、腫れをやわらげることがわかっています。
その他、白癬菌などへの抗真菌作用、ヘルペスなどに対する抗ウイルス作用、抗寄生虫作用も確認されています。
また、「カレンデュラ」にはアスピリンと同様の作用を有するサリチル酸物質を少量含むことから、 解熱、鎮痛、抗リウマチ作用や尿結石生成防止作用があり、リウマチ、痛風など関節炎の緩和にも用いられます。
現在でも「カレンデュラ」の花びらをアルコールに浸出した「カレンデュラ」ティンクチャー(エキス)は 原液または希釈して内用・外用ともに用いられています。
その他にも、血液循環の促進作用とリンパ系の老廃物やうっ滞を取り除く働きと、 「カレンデュラ」の苦味質は胆嚢、肝機能を高め、利尿作用により排泄を促すことから、 デトックスのためのブレンドにかかせないハーブです。
ブルーベリーだけじゃない!カレンデュラは目にも嬉しい!
この季節は、色とりどりの草花を見ながらの犬との散歩はとても楽しく、成長する若葉の芳香物質からもエネルギーをもらい気持ちも弾みますが、気になるのが強くなってくる「紫外線」ですよね。
私たちが受ける紫外線の様々な影響は、必ずしも肌だけでなく、目にも影響を与えます。
紫外線の大部分はまず角膜で吸収され、角膜の細胞に活性酸素が発生し細胞を傷つけることで、時には目のトラブルの原因となることがあります。
また、角膜で吸収されなかった残りの紫外線の多くは水晶体で吸収され、タンパク質でできている水晶体は、紫外線の影響で白く濁る原因になるとも言われていますね。
「カレンデュラ」は、目の健康に良いカロテン、ルティンを含むので、手軽なサプリメントとしてオススメです。
■
前回のハーブ便り「ダンディライオン」では、春は肝臓が働く季節とお伝えしましたが、 古くから中医学では、「肝は目に穴を開ける」と言われ、肝臓の疲れは目に影響を与えることがあります。五臓の「肝」をケアすることは、目にとってもいいんですよ。
この季節、大活躍しそうな「カレンデュラ」。
今年は少しでも皮膚トラブルがひどくなってしまわないように、今からジャーマンカモミール、ネトル、
ローズヒップ、バードックなどとブレンドして食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。
心地良い春ですが、私たちも寒暖差や乾燥、ほこり、皮脂バランスの乱れから肌荒れしやすい季節です。
花びらを米料理に加えたり、サラダに散らしたり、パンやビスケット、ケーキに焼き込んだり、いつもの食事に彩りを添え、是非、愛犬と一緒に楽しんでみてください。
今月もデトックスを心掛け、肝臓や消化器をいたわり、健康で丈夫な皮膚を目指してくださいね。
■ こんなときにオススメ
今回ご紹介した「カレンデュラ」は特に以下の場合にオススメしたいハーブです。
・梅雨になると体を痒がる犬に
・皮膚、粘膜の健康維持に
・消化器系トラブル
・口腔ケアに
・シニア犬の目の健康のために
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フィトセラピスト 堂山うららさん
さぁ、ハーブのやさしいチカラをかりて、今よりもっとHappyな毎日をスタートしましょう。
*1 【この特集の資料提供】Urara Herb Design Lab. フィトセラピスト 堂山うらら氏 現在、ホリステックケアアドバイザーとして人と犬へのフィトセラピーを中心としたカウンセリングや、人と犬のクオリティ・オブ・ライフに役立ち、犬と一緒に楽しめるフィトセラピー講座、ハーブ講座を行っている。