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2019.10.16

フィトセラピストが贈る、犬と暮らしのハーブ便り『ミルクシスル』

フィトセラピストが贈る、犬と暮らしのハーブ便り『ミルクシスル』

ぐっと朝晩の冷え込みが感じられるようになり、日差しも柔らかくなって犬とのお散歩が心地良い季節になりました。この季節は犬たちにとっても過ごしやすく、涼しくなるにつれて、私たち同様、食欲も回復し身体は冬支度に入っていきます。
春先から続けてきたフィラリア予防薬も、ひとつの区切りとなる冬までもう少し。 予防薬の肝臓、腎臓に対する影響を軽減し、肝機能をアップさせ、冬に備えての体力回復と、 そして実りの秋に気になるダイエットのサポートにおすすめのハーブが「ミルクシスル」です。

少し長くなりますが、「なるほど!」や「使えるかも!」を、少しずつ説明していきますね。

秋のオススメハーブ「ミルクシスル」

 ●ミルクシスル
学名: Silybum marianum
科名:キク科
別名:オオアザミ/マリアアザミ
使用部位:種子
有効成分(フィトケミカル): シリマリン〔フラボノリグナン類、シリビニン 又はシリビン、イソシリビニン、シリクリスチン、 シリジアニン〕約70%はシリビニン、ノール酸、オレイン酸、ミリスチン酸

こんな時に: 肝機能リフレッシュ・ダイエット。

ミルクシスルってどんなハーブ?

ミルクシスルは、古代ギリシャの時代から肝障害の治療として経験的に愛用されてきたメディカルハーブです。 主な活性成分《フィトケミカル》は、シリマリンというフラボノリグナンの混合物で、 ミルクシスルの種子は4~6%のシリマリンを含有しています。
シリマリンは最も頼もしい肝臓保護物質のひとつとして知られ、シリビニン、シリジアニン、イソシリビン、 シリクリスチンなどのフラボノリグナン類が多く含まれます。

現在、種子に含まれる3種のフラボノリグナン類のシリマリンの有効性に関する研究論文は300以上にのぼり、慢性肝炎やアルコール性肝炎、脂肪肝、肝硬変などに対する効果が報告されています。
シリマリンの働きは肝細胞の細胞膜を保護し、毒素が細胞膜上の受容体に結合するのを防ぎ、 有害な活性酸素を補捉して無毒化することで肝細胞の損傷を防止します。
更にもうひとつ、シリマリンは、すでに毒素やなんらかの影響によって損傷を受けてしまった肝細胞のタンパク合成を助け、 肝細胞の修復を促進します。
シリマリンを多く含んだミルクシスルは、動物の肝機能をいたわるのに有効な植物。 予防薬摂取前後や長期に渡って医薬品を摂取している犬には、積極的に食事に取り入れてほしいハーブです。

ミルクシスルと聖母マリアの関わり

ミルクシスルは、地中海沿岸が原産のキク科の植物で、日本ではオオアザミと呼ばれ、 その他マリアアザミ、オオヒレアザミなどと呼ばれています。
葉の白い模様が、ミルクがこぼれたように見えるため milk thistle(thistle=アザミ)と呼ばれ、 聖母マリアの母乳が葉の上にこぼれたことがから白い模様になったという説や、 聖母マリアに捧げるミルクを運んでいた娘がこの葉にトゲに刺されてミルクをこぼし、 葉の上に散ったミルクが白い模様となって残ったという説があり、聖母マリアに由来する植物として 親しまれています。

DOG's TALK

肝臓の機能を健康に保つ際に役立つ天然成分が豊富なミルクシスルは、犬たちのサプリメントでよく使われているハーブのひとつです。また、ドッグフードや犬たちのオヤツにプラスされていることも多いので、「見たことある!」という方も多いかもしれません。
それから、聖母マリアと聞くと『フランダースの犬』のネロとパトラッシュが見たがっていたルーベンスの絵画が納められている場所が、『アントワープ聖母大聖堂』だったことを思い出しました。聖母マリアといえば、全ての人々を癒してくれる存在だとも言われていますので、たまった肝臓の疲れを癒すハーブと結び付けられるのも納得かもしれません。

犬たちの肝臓の働きについて

肝臓は血液の浄化を始め、血液凝固因子、タンパク質、胆汁、千種以上もの異なる酵素の生産、 コレステロールの代謝、筋肉に燃料を与えるエネルギーの貯蔵、正常な血糖濃度維持、 ホルモンの調整、食品添加物、農薬、アルコール、薬などや体内で老廃物となったホルモン、ヘモグロビン、アンモニア、ビリルビンを解毒し、さらに分解して体の外に出すなど多くの重要な働きがあります。 昔から『肝腎要(かんじんかなめ)』と言いますよね。

薬や合成添加物、有害な化学物質は肝臓で解毒します。
解毒するときに大量の活性酸素が発生し、その活性酸素の量が、 活性酸素を中和する働きのある酵素や抗酸化物質よりも増えすぎてしまうと細胞は傷つき、老化が進んでいくといわれています。

肝臓での解毒力を高めるためには、有害物質の摂取量を減らすだけではなく、 対抗する有効成分のSOD酵素の働きを高めることと、抗酸化物質を積極的にとることが大切です。
ハーブには、含有量はそれぞれ異なりますが、活性酸素を中和する働きを持つ酵素が含まれているとされています。 そして、肝臓の解毒に必要な抗酸化物質のひとつがグルタチオンです。そのグルタチオンを増やす働きをするのがミルクシスルです。
だから、肝障害の治療として経験的に愛用されてきたんですね。

その他グルタチオンを増やす働きのあるものはウコン(ターメリック)やαリポ酸が代表的ですが、 手作り食にオススメしたいハーブの組み合わせは、 ミルクシスルにダンディライオン。ダンディライオンは、ビタミン、ミネラルが豊富で、 胆汁の分泌を高めることで消化吸収を促進するので好相性。 食欲不振にも役立ちます。

 

■ダイエット中の犬にもオススメ

ダイエットしている犬にすすめる理由は、 ミルクシスルは肝臓でのコレステロール産生を抑制するから。
現在、ミルクシスルの摂取によって、胆汁中のコレステロールのレベルが低下することが報告されており、 血清中の中性脂肪、コレステロールを下げる働きも知られています。
動物の身体は、今、冬に向けてしっかりと栄養を摂る大切な季節。 食欲の秋のダイエットサポートにもぴったりなのです。

■ こんなことが気になったら

★フィラリア予防薬など、薬を長い間投与している犬
★ダイエットをしている犬
★特に加齢に伴う肝機能低下を予防したいシニア犬

■ お散歩で植物の力を感じよう

秋は、日ごと色を変化させていく街路樹を眺めているだけでも心が潤います。
「森林浴」と聞くと、春や新緑の季節をイメージしがちですが、緑じゃなくても、木や自然があるところで森林浴の恩恵は受けられます。
フィトンチッドとはひと言でいうと自身を守るためのシステムで、自分で作り出して発散している揮発性物質です。 その主な成分は有機化合物の「テルペン類」で、心と身体をリフレッシュさせる働きがあるのはもちろん、抗菌、消臭、さらに防虫作用があります。 

紅葉狩りや、公園など樹木のある場所を通ると、爽やかな気持ちになる経験があるかと思います。
実はこれもフィトンチッドが自律神経を安定させ、肝機能を改善したり、快適な睡眠をもたらすことも知られています。
ダイエットサポートには適度な運動がかかせませんし、 ぜひ、季節を楽しみながら犬と一緒の散歩で、寒い冬を乗り切るパワーを充電してくださいね。

DOG's TALK

フィトセラピスト 堂山うららさん

さぁ、ハーブのやさしいチカラをかりて、今よりもっとHappyな毎日をスタートしましょう。