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- 巡る季節のハーブ便り
2019.04.18
フィトセラピストが贈る、犬と暮らしのハーブ便り『ホーステール』
【この特集の資料提供】
*1 Urara Herb Design Lab. フィトセラピスト 堂山うらら氏:現在、ホリステックケアアドバイザーとして人と犬へのフィトセラピーを中心としたカウンセリングや、人と犬のクオリティ・オブ・ライフに役立ち、犬と一緒に楽しめるフィトセラピー講座、ハーブ講座を行っている。
犬とのお散歩途中、暖かい日差しを浴びて、なんだか大きく伸びをしたくなるような朗らかな季節になりました。空に向かって力強く育つ新芽や野草、花々を見つけては、犬たちと一緒に楽しむことも増えてきましたね。
ふと目線を犬たちの高さまで落としてみると、いつのまにか顔を出し始めていた春の野草の代表選手、つくし(土筆)に目が留まりました。日本では春の食材として食べることもたびたびある、とっても馴染み深い存在です。
そこで、今月ご紹介させていただくハーブは、ツクシと同植物である「ホーステール」です。
今月のオススメハーブホーステール
●ホーステール
学名:Equisetum arvense
科名:トクサ科
使用部位:葉、茎部
有効成分:
ミネラル(シリカ、カルシウム、ビタミンA、B1、B2、B3、B5、C、E、セレン、マグネシウムなど)、フラボノイド、アルカロイド、タンニン、サポニン(エキセトニン、βシトステロ―ルなど)
春に地下茎からツクシ(土筆)と呼ばれる胞子茎を出し、古くから春の山菜として親しまれています。
胞子茎は穂から繁殖のために大量に胞子を放出し、枯れ、その後、地下茎で繋がっているスギナが伸びてきます。スギナは鮮やかな緑色の茎と葉からなり、光合成を行う栄養茎です。夏に地下茎を伸ばして繁茂し、地下茎は土の中で越冬し、また春の訪れを待ちます。
ヨーロッパでは、このスギナを「ホーステール」と呼び、古くから地上部をハーブとして利用してきました。
形が馬の尻尾に似ていることから由来して英語で「ホーステール」、馬の尻尾と呼ばれ、漢方医学では「問荊(もんけい)」といい民間薬として利用されています。
日本ではスギナの他に「トクサ」とも呼ばれ、研ぐ草からきているもので、含まれるシリカ(二酸化ケイ素)により、金属などの研磨に使われたことに由来しています。
17世紀の英国のハーバリストであるニコラス・カルペパーは、ホーステールの圧搾液(フレッシュジュース)や煎出液を止血の目的に使用しました。
また、結石、尿石症や膀胱炎による排尿痛の緩和にも用いられ、アーユルヴェーダ医学では前立腺肥大や失禁、夜尿症の改善に活用してきました。ドイツでは外傷後の浮腫に内用され、また膀胱炎や尿道炎などの泌尿器系の感染症や腎砂、尿砂の緩和に用いられています。
ホーステールの主な特徴
ホーステールは、ポリフェノールに代表されるフラボノイド類と、5~8%にもなるケイ酸塩をはじめとして、エキセトニン、βシテストロールなどの薬用成分が含まれ、古くから植物性利尿剤として用いられてきました。
シリカ(二酸化ケイ素)は生物圏で酸素の次に多い元素で石英として存在しますが、その一部は可溶化して植物に取り込まれ、シリカ(二酸化ケイ素)やケイ酸塩として含有されます。
シリカ(二酸化ケイ素)は、結合組織の強化や修復、再生能力に優れ、強度や弾力性を高めるために役立つミネラルで、 体内で骨や軟骨の発育やコラーゲン・エラスチンなどの結合組織の強化・修復・再生に関与し、コラーゲンやエラスチンが含まれる皮膚の結合組織の強度や弾力性を高めるのに欠かせない成分です。
ホーステールにはカルシウムも含まれており、カルシウムとシリカ(二酸化ケイ素)は、骨、器官、肌、毛髪、爪など、全身の結合組織の修復と維持に不可欠です。
また、シリカ(二酸化ケイ素)は体内でのカルシウムの吸収を助ける働きもあり、骨格、毛髪、皮膚、爪を強化する処方として有効なハーブと言えます。
加齢とともに、循環器系や骨、皮膚、被毛に含まれるシリカ(二酸化ケイ素)の量が減少し、組織の退行や新しい組織を形成する能力が低下します。それが皮膚、骨、関節の老化の原因のひとつでもあります。
シリカ(二酸化ケイ素)は、血管や骨・軟骨の健康維持、結合組織の強化やコラーゲンの再生、爪や皮膚、髪、骨、その他結合組織の栄養補給に役立ちます。シニア犬には特にオススメです。
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ちょっと一言
シリカ(二酸化ケイ素)と言えば、「シリカゲル」を思い浮かべる方も多いと思いますが、 残念ながら、植物が取り込んだシリカ(二酸化ケイ素)と違って、「シリカゲル」はそのまま体に入れても吸収されません。
■ ホーステールの豆知識
シリカ(二酸化ケイ素)は、フィトエステの分野でも、弾力のある美肌、爪のトラブル(折れやすい爪、爪の変質)や、細くなり弾力・艶を失った髪の改善にと、古くから用いられ、現在でもスギナエキスとして様々なスキンケア商品にも配合されています。最近では、体内の余分な水分を利尿作用により排泄し、コラーゲン組織を強化することで、浮腫みを改善し、皮膚が引き締まった印象を与えることで、小顔効果のサプリメントとして話題になっているそうです。
また、体内の傷を修復し、出血を止め、組織の治療促進をしてくれるため、アメリカでは多くの運動選手やボディビルダーが、関節の怪我の予防や、挫傷した患部の早期治療のために使用しているそうです。
フィトセラピストからのアドバイス
■ こんなことが気になったら…。
○ 骨、関節の怪我の治癒促進に、シニア犬の骨、関節のサポートに
○ 被毛にハリをあたえ、健康な被毛を保つために
○ 軽度の傷に
○ 術後の傷跡の回復に
知って得するオススメのハーブの取り入れ方
【1】関節のトラブルでお悩みの犬の場合は、適度な運動により肥満を避けつつ筋肉を維持し、グルコサミン、コンドロイチン、緑イガイ、MSMなどの関節系サプリメントと一緒にホーステールとローズヒップのブレンドを、時々休みながら、継続的に摂取することをオススメしています。
【2】ホーステールを使用する際のポイントとして、カルシウム、シリカ(二酸化ケイ素)の体内での吸収をアップさせ、コラーゲンの生成を促進させるためにビタミンCが豊富なローズヒップとブレンドして摂取すると、より相乗効果が期待できます。
もうひとつ、ホーステールは煎出液やチンキ剤の形態で摂取したほうが体内での吸収が良いと言われています。
ホーステールの成分を有効に抽出するために一番理想的なのは、煎剤(弱火で20分以上煮出す)です。 その煎出液を飲ませるか、フードにかけると良いのですが、中にはティーでは飲んでくれない場合があります。 その場合は、パウダーにしたものをご飯に加えてみたり、その犬が取り入れやすい方法を選んであげてください。
女性の方はよくご存知だと思いますが、コラーゲンは皮膚を構成する主要成分で、シワや弛みを予防し、健康で若々しい皮膚を保つためにかかせないものです。
皮膚に含まれるコラーゲンは、水分を除くと全体の70%にも達し、形状は細長い繊維状で、この線維が細胞と細胞をつなぐ接着剤の役割をします。
また、この線維が絡み合って、ちょうどスプリングのような役割をし、弾力のある肌や張りのある肌を作ります。
【3】口内ケアとしてマウスウォッシュとして使用すると、殺菌、収斂、組織を丈夫に保つ働きがあるため、口内粘膜を健康に保ち、歯肉炎の予防や歯茎からの出血に有効です。
【4】スギナの煎出液やローションは、湿疹などによる皮膚の痒みを鎮め、切り傷、ただれ、潰瘍などの治癒を助けるためにも有効です。犬のシャンプー後のリンスやコンプレスに使用すると、皮膚の健康を保ち、被毛にハリと艶を与えます。
【5】ホーステールは外用でも用いられ、局所の止血や骨折、捻挫、痛風、関節炎に、また治りにくい傷や爪、髪の弱質化に湿布で用いたり、婦人科の疾患の入浴剤として、あるいは痩身療法の補助剤(入浴剤、湿布)として用いられます。
■ ホーステール、使用のご注意
・過剰摂取、長期間の使用は避けましょう。
・重度の高血圧、心臓疾患、また泌尿器系のケイ酸塩石(シリカ結石)の病歴がある場合は使用を避けましょう。
・膀胱や尿管からの出血を伴う泌尿器感染にも使用されるケースもありますが、ホーステールを単独で使用するのは避け、必ず獣医の診断を受け、獣医もしくは専門家に相談してから使用するようにすると安心です。
・妊娠中、授乳中の動物への使用は避けましょう。
・10日以上続けて使用する場合は、保護作用のあるマシュマロウとブレンドをして使用すると、尿管などの泌尿器系に刺激から守ることができます。
・日本では、春の野草として佃煮などで食卓にも春を彩り、なじみのある植物ではありますが、重度の心疾患や腎臓機能障害の場合は禁忌とされ、 また、いくつか品種があり、中にはアルカロイドを多く含むために使用できない種もあるので、食品として販売されているホーステールを使用すると安心です。
これからのホーステール
ホーステールに関する最近の研究では、花粉症にも効果があるとされ、このホーステール(スギナ)、 そしてその胞子体であるツクシの抽出物がアレルギーを引き起こすヒスタミンH1受容体(H1R)遺伝子の発現を抑制するという 徳島大の研究結果が日本薬学会で発表され、春の悩みである花粉症の症状が改善できることに期待が寄せられています。
春の野草や春野菜は、春に起こりがちがトラブルから私たちを守る働きを持っているものが多く、 ホーステールにも現代病でもある花粉症の改善に役立つかもしれませんね。
4億年前もの大昔からこの地球上に生息していたホーステールは、石炭紀には30メートルまで丈がのびる堂々とした樹だったそうです。
現在のホーステールの姿を見ると、節のある茎が天に向かって直立し、建物の骨格のような当時の姿が思い起こされます。 何億年も生き抜き、春の野草らしいたくましい生命力を持ったホーステールは、これからの様々な研究が楽しみなハーブのひとつです。
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フィトセラピスト 堂山うららさん
さぁ、ハーブのやさしいチカラをかりて、今よりもっとHappyな毎日をスタートしましょう。
ホーステールを使ったアイテムご紹介