• コラム
  • 巡る季節のハーブ便り

2019.05.06

フィトセラピストが贈る、犬と暮らしのハーブ便り『フェヌグリーク』

フィトセラピストが贈る、犬と暮らしのハーブ便り『フェヌグリーク』

【この特集の資料提供】Urara Herb Design Lab. フィトセラピスト 堂山うらら氏

*1 Urara Herb Design Lab. フィトセラピスト 堂山うらら氏:現在、ホリステックケアアドバイザーとして人と犬へのフィトセラピーを中心としたカウンセリングや、人と犬のクオリティ・オブ・ライフに役立ち、犬と一緒に楽しめるフィトセラピー講座、ハーブ講座を行っている。

夏がやって来る前のこの時期からしっかりと注意したいのが、熱中症による体調不良。
ここ数年は心地よい春の時期が短く、梅雨から猛烈な暑さに襲われることも多い日本列島。暑さに弱い犬たち、特にシニア犬の健康を心配されている飼い主さんの声を多く耳にします。 健康を害さない程度に節電に協力しながら、夏を乗り切る様々な工夫をして暮らすことや、しっかりと身体をケアして暑さに負けない身体を作ることが重要ですね。

今月ご紹介させていただくハーブは、豆料理やカレーのスパイスとして有名な「フェヌグリーク」です。

今月のオススメハーブフェヌグリーク

●注意:子宮を刺激する作用があるため、妊娠中の使用は避けましょう。


 ●フェヌグリーク

学名:Trigonella foenum-graecum
別名:コロハ / メティ
科名:マメ科
使用部位:種子・葉

有効成分
多糖類、コリン、フラボノイド、アミノ酸、セレン、アスパラギン、カルシオン、ホルモノネチン、アストロガロサイド、クマタケニン、ステロ―ル、イソフラボン配糖体(フォルモノネチン)、サポニン(アストラガロシドなど)、グルコース、フラクトース、ミネラルなど

フェヌグリークの歴史

西アジア原産、マメ科の植物の種子であるこのスパイスは、古くから中近東、アフリカ、インドで栽培され、古代エジプト時代から、食用、薬用として使用されてきたハーブのひとつです。

滋養強壮、精力増強、消化促進、催乳、防腐などの目的で用いられてきた歴史があり、エジプト医学では出産を楽にしてくれる薬草として用いられたことがパピルス書(紀元前1550年頃に書かれたエジプト医学ついて書かれたもの)に残され、またツタンカーメン王の墓からはフェヌグリークの種子が発見されています。
和名はコロハ(胡廬巴)と呼ばれ漢方薬のひとつとして腎臓機能障害の改善、下腹部の痛みの緩和、ヘルニア、下肢の浮腫みの改善に用いられています。
日本にも江戸時代に薬草として持ち込まれた記録が残っていますが、定着するには至らなかったという歴史があります。もしもこの時日本でも本格的な栽培がされていれば、フェヌグリークを使ったおいしい料理が日本食でも生まれていたかもしれませんね。

インドのキッチンから生活の知恵

インドの家庭料理に欠かせない食材がこのフェヌグリーク。インドのカレーパウダーには、乾燥させたフェヌグリークの種を炒って粉に引いた原材料が欠かせません。種子をメティ、葉をカソーリメティと呼び、とても親しまれています。
チャツネに使用するスパイスとしてよく利用されています。
また、ベジタリアンを実践されている方には、貴重なタンパク源としてそのまま豆料理に使われ、 葉はサブジ(野菜の蒸し煮、炒め煮)として食べられています。

フェヌグリークは、熟したサヤを収穫し乾燥させた後、種子を取り出しさらに乾燥させます。
そのままだとセロリに似た芳香があり、味には苦みがあります。
加熱して使用しますが、加熱しすぎると更に苦みが増すので注意しましょう。
軽く炒ってから使うことで、メープルシロップの香りづけに使用されるほど、甘くマイルドな芳香が楽しめるため、お菓子作りにも利用されます。
ハーブティに少量加えると、熱いお湯を注いだときにほのかに甘い香りが漂います。

フェヌグリークの種子を使ったティは消化を促進し、お腹の張りを予防して下痢を軽減するため、おばあさんの知恵袋として用いられてきました。
若芽はサラダに、成長した葉は茹でたり炒めたりして食べることができます。
ヨーロッパでもサラダやハーバルティとして用いられます。
また、種子を植木鉢に蒔いてアルファルファなどのように発芽させたものをサラダに利用することもでき、種子や葉はアーユルヴェーダ料理や療法にもかかせないハーブのひとつです。

フィトセラピストからのアドバイス

■ こんなことが気になったら…。

○ 夏バテかなと思ったら
○ 関節が気になる
○ ちょっと太ったかな
○ 出産後の犬に

1.夏の食欲増進と関節、肝機能に
フェヌグリークの種子には、粘液質を多量に含み、リジンやトリプトファンといったアミノ酸に富んだタンパク質やトリゴネリンなどのピリジン型アルカロイド、ステロイドサポニンなどを含みます。
ドイツのコミッションEでは、消化不良や食欲不振、病後の回復期のサポート、強壮、痛風、関節炎やリウマチ、 咳の緩和に内服を勧めており、その他、代謝を向上させ体力を強化したり、肝機能を促進する働きも認められています。

2.マザーズハーブ
フェヌグリークと言えば、古くからマザーズハーブのひとつとして用いられ、 現在でも母乳の出を良くするハーブとしても有名です。
子宮の機能を高め、穏やかな鎮痛作用により月経前症候群(PMS)を緩和するためにも利用されています。

3.夏のダイエットに
最近の研究によればフェヌグリークの種子には、水溶性食物繊維である「ガラクトマンナン」という成分が含まれており、 糖質が腸内から吸収されるのを抑制するため、血糖値の上昇を抑える効果が期待され、糖尿病の予防に有効であるとされています。
この成分は、胃の中でゲル状になり長く満腹感を持続させ、食欲を抑制することからダイエット用サプリメントなどに配合されています。
そして、種子に含まれるサポニンが血管内の脂肪を除去したり、コレステロール値を下げ、体脂肪が減るなどの報告がされおり、 日常の食生活に取り入れることでメタボリックの予防になると注目されています。
これから暑さが増し、夏の運動不足や代謝低下による夏太り予防、ダイエットサポートとしてもオススメのハーブのひとつと言えます。

4.皮膚(肌)トラブルや痛みの外用として
古くからの民間療法として、フェヌグリークは外用でも用いられています。
外傷や湿疹、打撲傷、関節炎の痛みの緩和、坐骨神経痛、下肢の潰瘍には種子のパウダーを少量の水又は、ミルクでペースト状にしたものをガーゼに包み患部に湿布、種子の浸出液は、肌を柔軟に保つ洗顔料や、ニキビの治療、改善のためコットンにしみ込ませてパックとして使用します。それから、種子をパウダー状にして油と練り合わせたものは、リップクリームや髪の艶を取り戻すためのマッサージオイルに使用してきました。
アーユルヴェーダ系のスキンケア用品にはフェヌグリークのエキスが洗顔、化粧品、乳液、クリームなどに配合されています。

5.夏のオススメ料理
カレーのスパイスの代表的なものには、フェヌグリーク以外にもクミン、ターメリック、ジンジャー、コリアンダー、カルダモン、クローブ、シナモン、フェネル、ブラックペッパーなどがありますが、それぞれのスパイスには食欲をアップさせたり、消化力をあげる成分や、身体を元気づけ免疫アップに役立つ成分が含まれていますので、暑さによる食欲低下がおこりがちな夏にはピッタリの食べ物と言えます。
今年の夏は、様々なハーブやスパイスを調合し、身体の熱を取り去る美味しい夏野菜を使って、夏バテ予防のオリジナルカレー作りを楽しむのも良いかもしれませんね。

(フェヌグリークを使用する際の注意)

*1 子宮を刺激する作用があるため、妊娠中の使用は避けましょう。

*2 過剰摂取をすると胃粘膜の炎症や逆流を起こす可能性があるため注意しましょう。

*3 インスリン依存型糖尿病の方が、血糖低下薬としてフェヌグリークのサプリメントなどを 用いる際は、事前に専門家の指導を受けてから使用してください。

DOG's TALK

フィトセラピスト 堂山うららさん

さぁ、ハーブのやさしいチカラをかりて、今よりもっとHappyな毎日をスタートしましょう。