• コラム
  • スタッフコラム

2019.08.27

桃太郎のお供にはなぜ犬が選ばれたの?【#selfishな歴史犬聞録】

桃太郎のお供にはなぜ犬が選ばれたの?【#selfishな歴史犬聞録】


日本の昔話の中でも、ひときわ有名なもののひとつが桃太郎。桃から生まれ、鬼退治に向かった桃太郎が引き連れているお供には、犬・猿・キジが登場します。
子供の頃から聞かされている話なので、あまり意識することはないかもしれませんが、なぜお供の筆頭に犬が選ばれたのでしょうか。もっと大きな馬や強いトラやオオカミではなく犬だったのでしょうか。
今日は桃太郎のお話に登場する犬とその仲間たちについてのお話です。

桃太郎のお話の成立

現代に伝わっている桃太郎のお話が確立するのに大きな役割を果たしたのは、学校制が始まった明治時代の教科書でした。それ以前はそれぞれの地域にさまざまな形の「桃太郎」のお話が伝わっており、標準的なストーリーラインはなかったといわれています。

桃太郎に繋がるストーリーの中で、現代に残っている古いお話では学問の神様・菅原道真が聞いた神話をまとめたものとされているものがあります。菅原道真といえば平安時代の官僚ですから、約1000年以上前にはもう桃太郎の原型は存在していたのですね。
その時にはまだ、お供は犬や猿、キジではなく人間でした。後の時代にお供は動物たちへと姿を変えていったと考えられているのです。

桃太郎のお供たちは鬼門を封じる動物たち

左側にはそれぞれ、戌・酉・申が、右側(鬼門)には丑・寅が配置されています。

それではなぜ、犬や猿、キジがお供になったのかというと、これにはたびたびコラムでもご紹介している陰陽五行説の考え方が関わっているとも考えられています。
かつて日本では方角を示す際に、時などと同じように十二支を使用していました。北から子、丑、寅といったように。

鬼退治に行った動物たちは、犬、猿、キジ(鳥)です。それぞれ、十二支の表記にすると戌、申、酉です。これらの動物たちを方角に当てはめると……西側の方角を示しているのがわかります。
一部の方はお気づきかもしれませんが、この方角はいわゆる「鬼門」の真逆にあたります。鬼門といえば、鬼たちの出入り口といわれている方角でかつて日本では縁起が悪いといわれていました。

一説によると、鬼たちのイメージの典型ともいえる「角が生えていて」「トラ柄の腰巻」という姿も角が生えている牛と虎の姿に由来しているとも考えられているそうです。丑寅(うしとら)の方角は鬼門を指しますから、徐々にそのイメージから姿が固まっていったのかもしれません。

DOG's TALK

鬼退治と少し関係しているのですが、犬たちは家を守る番犬として以外の役割として「魔を祓う」という役割を持っていたのではないでしょうか。
これは犬たちが大きな声で吠えることで鬼や魔を追い払うことができると考えられていて、平安時代の日本では、宮廷などの神聖な場所の魔を祓う際には弓などを鳴らして大きな音を立てることでお払いをしていました。
また、犬たちを育てることを専門とする氏族は大和朝廷のころから存在しており、中央政権を守るために犬たちは育てられていたことからも、当時の人々は犬たちの声や家族を守ろうとする行動をとても頼りにしていたことがうかがえます。
現代では、大きな声で吠えてしまう犬は「ちょっと静かにしてね」とついつい言ってしまいますが、昔の犬たちは大きな声で吠えることがお仕事で、それによって褒められることもあったのだと思うと、感慨深いですね。