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2019.10.31
ハロウィンの起源、アイルランドのケルト神話と犬の関係。[#selfishな歴史犬聞録]
本日はハロウィン!犬たちと一緒に仮装を楽しんだり、ハロウィン気分になれるかぼちゃを使った食事をしたり、Trick or treat!と犬たちにオヤツをプレゼントしたり…。さまざまな楽しみ方が知られるようになっています。
でもこのハロウィンというお祭りの元になっているのは、現代のイギリスやヨーロッパの一部、ケルト地方と呼ばれる地域の伝承です。ヨーロッパで知られている物語や伝説の元になったとも言われているケルト神話(アーサー王伝説など)や、ケルト音楽などは触れたことがある方も多いのではないでしょうか。
ハロウィンは、ケルト民族にとっての大晦日~新年のお祝いのお祭りであるサウィンという祭祀が元になっていると言われています。
ケルト民族は精霊や自然に存在するさまざまな力などに神を見出していた、多神教であったと考えられています。彼らはローマ人らによってキリスト教化させられた後に、現在のようなハロウィンの元を作り、ケルト人の子孫がやがてアメリカなどへと渡り、現在のハロウィンが作り上げられていったといわれています。
本日は、ハロウィンの元になったケルト神話から犬たちのお話をいくつかご紹介します。
ケルト神話では「犬」は勇気と美しさの象徴
ケルト神話が成立した場所のひとつ、アイルランド。アイルランドに伝わるケルト神話は、大きく分けて4つの部から成り立っているといわれています。
その中のひとつ、アルスターサイクルと呼ばれる部ではクー・フーリンという名前の英雄のお話が中心に描かれているのですが、何を隠そう、このクー・フーリンという名前は犬にちなんで付けられた名前なのだそうです。
クー・フーリンという名前は、「クランの犬」という意味です。
クランという人物の家を訪れたクー・フーリンは、突然番犬に襲われてしまいます。この番犬、飼い主自慢の強い犬だったそうですが、子どものクー・フーリンが番犬に勝利。犬は命を落としてしまいます。
しかし、このお話の中でクー・フーリンを襲った犬たちは、主人の財産を守るために必死に侵入者を遠ざけようと勇敢に戦っただけにすぎませんでした。
そう、その日クー・フーリンは、クランの家を訪れるための約束の時刻に遅刻してしまったために、犬たちが侵入者と勘違いしたことで起こったトラブルだったので、ほんとうは犬たちに非はなかったのです。
犬たちの飼い主は自分の飼い犬が傷つけられたことに酷くショックを受け悲しみました。子供ながらに飼い主の深い悲しみを心に刻み、英雄クー・フーリンは「犬を殺さない」ことと「犬にちなんだ名前を付ける」という誓いを立て、「クー・フーリン」という名前を自らに付けたということです。
当時のケルト人たちにとって、犬たちは侵入者に勇敢に立ち向かい、人々の大切な財産を守る存在として、「勇気」と主人のために必死に戦い、「美しさ」をもった存在として考えられていた、とされています。
しかし、古代ケルトの人々にとって犬たちが「とても大切な家族であった」ということも同時に読み取れるような気がします。
2頭の犬は永遠の象徴
また、古代ケルトの文明では犬たちはさまざまな図像として姿を残されています。イラストだけではなく、装飾品の一部としても犬たちの姿を象ったものが見つかっているのだそうです。
日本では、三角縁神獣鏡という鏡に刻まれた模様には、ひとつひとつ意味があり、当時の人々が思い描いていた世界観を表しているという風に解釈されていますね。
同じように、ケルト文明でも、犬たちの絵には大切な意味がありました。それは、犬たちは冥界と繋がっている、と考えられていたこと。これだけ聞くと「なんだか怖いな」と思ってしまいますが、ケルト文明では一度死んだものも新しく生命を受けてこの世界に帰ってくる、輪廻転生が信じられていました。
つまり、犬たちは魂を次の生命に導く役割を持つもの、としても考えられていたのかもしれません。
ケルト文明の装飾品では、二頭の犬たちが絡まりあうような図像がたびたび登場しますが、そんな巡り巡る命を象徴する存在として、犬たちには「永遠」の意味も与えられたと考えられています。
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ハロウィンから出発して、古代ケルト人と犬とのかかわりに触れたことで、やはり遠い昔から人と犬のつながりの深さが垣間見えた気がします。
遠い昔、日本人が持っていた感性にも通じるものがあるようにも思えますよね。先日のラグビーワールドカップで、ちょっとだけアイルランドを近く感じた気がしましたが、犬たちとの歴史を通すともっと近くに感じられそうな気がします。