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2020.04.23
犬の抗体検査って?予防接種、ワクチン。効果はどれくらい続く?
毎年、決まった時期に犬の予防接種のお知らせが届きますよね。犬の予防接種にはいくつか種類があり、コアワクチン、ノンコアワクチンという言葉を聞いた方も多いのではないでしょうか。
そんな犬のワクチンの中の一部、コアワクチンの接種について「毎年の接種は必要ない」という見解を示す国も出てきています。果たしてそれはなぜなのでしょうか?そして、気を付けたいことはどんなことでしょうか。
また、犬の毎年のワクチンの接種の方法について新しい取り組みとしてワクチンの効果を調べる「抗体検査」を取り入れるという病院も出てきているようです。
今回は犬のワクチンとその効果を調べる抗体検査について、ご紹介します。
犬のコアワクチン、ノンコアワクチンの違いは?
犬が受ける予防接種には、いわゆるコアワクチン、ノンコアワクチン、そして狂犬病ワクチンがあります。日本の法律では、人畜共通伝染病である狂犬病はすべての犬にワクチンの摂取が義務付けられています。
これとは別に混合ワクチンを受ける必要があり、この中にコアワクチンとノンコアワクチンが含まれています。コアワクチンは犬の病気の中でも特に注意が必要な病気を対象としたものである一方、ノンコアワクチンは特定の条件の犬が感染する可能性がある病気を対象としているため、すべての犬が受けなくてはいけないものではありません。
そのため、ノンコアワクチンを含むワクチンを接種するかどうかは飼い主の判断にゆだねられます。できれば、かかりつけの獣医師さんに犬との暮らしぶりをチェックしてもらい、適したものを選んでもえるようらう信頼関係がつくれたらいいですよね。
<コアワクチン>
・犬パルボウイルス感染症
・犬ジステンバーウイルス感染症
・犬伝染性肝炎(アデノウイルス1型)
・犬伝染性喉頭気管炎(アデノウイルス2型)
<ノンコアワクチン>
・犬パラインフルエンザウイルス感染症
・犬コロナウイルス感染症
・レプトスピラ感染症
それぞれのワクチンで予防できる病気についてはコチラ(お忘れなく!犬を感染症から守る「ワクチン」について。)も参照してみてくださいね。
犬のワクチン接種は毎年する必要はないって本当?
ワクチンの接種は病気の予防のためにはとても大切なことです。最近では多くの犬が利用する施設やドッグラン、ドッグホテルなどではワクチン接種の証明書の提出が必要になる場所もあります。ほかの飼い主や犬と接する際のマナーとしてワクチン接種を続けているという方も多いですよね。
でも、体質によっては1度のワクチン接種で数年間抗体を維持することが可能な犬もいることが分かっています。このことを受けて、世界小動物獣医師学会(WSAVA)や米国動物病院協会(AAHA)では、ワクチン接種は数年に一度とする、というガイドラインを発行する流れもあるのだそうです。
しかし、一方で犬の体質によっては、1年抗体が持たないという逆のケースもあり、犬のワクチン接種による抗体は維持できる期間に個体差があるようです。
このことから、それぞれの犬の抗体を検査する「抗体検査」を実施したうえで、それぞれの犬に適した時期に再度ワクチンの接種を行うという方法が提案されています。
point犬の抗体検査とは?
日本国内の動物病院でも導入されている抗体検査は、犬たちの体の中にワクチンの対象となっている病気への抗体(抵抗力)がどれだけ存在しているかを調べることが出来る検査です。
体力が落ちている犬や免疫系の疾患を持っている犬、腫瘍などの治療で免疫抑制剤、抗がん剤などを使用している犬は、ワクチンの接種を慎重に判断する必要があります。これらの犬は以前の接種で作られた抗体が残っているようであれば、ワクチンの接種を遅らせるなどの対処が可能になります。
犬の抗体検査は血液の採取が必要となり、また検査結果が出るまで1週間ほどかかることもあります。そのため、予防接種を受ける事前に検査を受ける必要があります。
犬の抗体はワクチン接種からどれくらいで減少するの?
ワクチンを接種してから、継続して抗体の検査を行った成犬(127頭)の検査結果によると、段階的に抗体の数は減少していき、1年以内であれば80%以上の犬がコアワクチンの抗体を保有していた一方、1~2年の間には約75%、2~3年の間には約60%まで抗体が減少していることが分かったのだそうです。
また、コアワクチンに含まれている抗体の内、それぞれの病気に対する抗体の種類によっても減少の幅に差があることも分かっています。つまり、Aという病気に対する抗体は残っているけれど、Bという病気に対する抗体は減ってしまっている、ということもあるようです。
おわりに
ほとんどの飼い主が、今まで継続して1年に一度、決まった時期にワクチンを接種させてきたと思いますが、現在、動物病院でも抗体検査を積極的に取り入れているところが多くなっています。今後は抗体検査がより広まって、犬の体質によっては頻度やタイミングを変えることができるようになっていくのかもしれませんね。ワクチン接種によって副作用が起きる可能性は非常に低いと言われてはいますが、体質的に副作用が出やすい犬や持病がある犬はやはり気になるところです。
また、免疫系の病気の療法中の犬、腫瘍の治療を行っている犬、体力の落ちたハイシニア犬などは、ワクチンの接種そのものを慎重に行い、検討する必要がありますが、この時の判断のサポートとしても抗体検査は有効な手段となっていくはずです。
ワクチン接種証明書などのシステムも今後は変化していくことになるかもしれませんね。
参考文献
*1 2016「犬コアワクチン接種後の経過年数による抗体保有状況の推移」『日本獣医師会雑誌』 69 巻 9 号 p. 538-541 相馬 武久, 河口 雅登, 髙木 洋史, 齊藤 奈美子