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2020.05.20
馬と鹿。犬に人気の原材料。歴史が古いのは、どっち!?
ポチで取り扱っているドッグフードには、さまざまな肉がタンパク源として使用されています。その中でも、人気があるのが馬肉と鹿肉です。もちろん、広く使用されているチキンや魚のほうがドッグフードのバラエティも多く、目にする機会も選ばれる数も多いのですが、馬肉や鹿肉はラインナップの割に人気が高いという印象があります。
そんな原材料「馬肉」と「鹿肉」について、面白いデータをこちらでご紹介します。
犬たちは食べて楽しんで、飼い主は「知って楽しむ」雑学です。
馬肉と鹿肉、世界で人気なのはどっち!?
さて、犬にとってはどちらも引けを取らない人気食材の両者ですが、人間にとっては「馬肉」と「鹿肉」のどちらがより人気なのでしょうか?
調べてみても、馬肉・鹿肉どちらもいわゆるメジャーな肉類(ビーフ、チキン、ポーク)などとは違い、その他の肉と分類されていることが多く、信頼できるデータを見つけることができませんでした・・・。
いきなりつまずいてしまいましたが、文化的な側面を見てみればどちらの方がより消費されているのかを推測することはできそうです。
鹿肉の歴史と豆知識
日本「薬肉」として食べられていた鹿肉
日本でも昔から「もみじ」という別名で呼ばれていた鹿肉。日本では仏教的な観点から殺生を伴う狩猟をしていなかった…ということをよく聞きますが、最近では日本人が狩猟を行う民族であったことがわかってきています。
中央政府では仏教的な倫理観に従って「狩猟を禁ず」というお触れを出すことはあったようですが、一般庶民にとっては大切なタンパク源だったわけです。もちろん、すべての庶民が口にできる食材だったかというと、少々微妙なところですが……。
だからこそなのか、鹿肉は日本では「薬肉」とされ「病気治療のための薬」と称して食べられていたとされています。鉄分やタンパク質が豊富な鹿肉は、体力が低下している病人を元気づける効果があることを当時の人々は知っていたんでしょうか。
日本犬のご先祖様たちなら、飼い主である猟師と一緒に狩りをした後には、ご褒美に鹿肉を少しもらって頬張っていたかもしれませんね。
ちなみに、日本以外でも中国などでは昔から鹿肉は食べられてきました。大きく伸びて毎年生え変わる鹿の角に、再生能力や不思議な力があると考えられていたようで、かつては漢方薬や薬膳料理として使用されていました。しかし現在では鹿肉ジャーキーも(人間用に)販売されるなど身近な存在です。
欧米鹿肉は比較的よく食べられる、でもちょっと特別な肉
鹿肉を食べる地域は比較的多いようで、とくに狩猟の文化が発展しているヨーロッパではメジャーだったようです。とはいっても、鹿肉を手に入れることができるのは一部の特権階級が中心。それもそのはずで、ヨーロッパでは狩猟は権力と常にセットで考えられてきた競技(ゲーム)だったからです。
中でも大きな獲物である鹿狩りは、立派に育った鹿を追い(この時に犬たちも活躍しました)、倒す必要があります。必要になる人手も、犬も、土地も大きかったのです。
また、文化人類学的には鹿を狩るという行為は「自然の驚異を克服する」こととも考えられていたようで、権力者が人々を天災から守る「祭り」のような一面も持っていたと考える学者もいます。
ヨーロッパの中でも、ドイツやフランスなどでは鹿肉を大切に食べてきた文化が息づいています。今では狩猟で鹿を狩る、ということ自体に特別な意味はなくなり、飼育された鹿を食べることが多いみたいです。
現在鹿肉の産地として人気のニュージーランドですが、ニュージーランドの鹿は外来種なのだそうです。ヨーロッパから移住してきた人々が、ハンティングのために広大で美しい大地に鹿を放ったことが始まりとされています。
ニュージーランドでは、飼育された鹿の肉を出荷するケースも多いのですが、一方で自然保護のために鹿の狩猟が行われているということも、ぜひ知っておきたいことです。
大型でツンドラ地域に暮らすヘラジカ(ムース、エルク)と森林で暮らす鹿(ベニソン)がおり、呼び名が異なっています。ベニソンには、アカシカやノロジカ、ダマジカなどの種類がいるのだとか。ちなみにエゾシカは日本の本州の鹿の亜種であり、正確な分類は難しいともいわれています。
馬肉の歴史と豆知識
欧米馬肉を食べる地域は限られている!?
一方の馬肉はというと、ちょっと事情が異なります。日本ではおいしい食材として良く知られている馬肉ですが、一部の地域では食べるものとして認識されていないこともあるようです。
とくにイギリス、アメリカ、ドイツ、スイスといった国では馬は大切な移動手段であり、家族の一員でもあった歴史があります。そのため、馬を食べるという文化が根付かなかったとされています。これらの地域では時に馬は財産でもあったので、食べるものというよりも大切にするものとされてきました。馬を食べない地域はおおむねゲルマン・アングロサクソン民族と呼ばれる騎馬民族文化圏に含まれます。先祖代々の思想として、馬を大切にする地域と呼ぶことができるかもしれませんね。
しかし同じ欧米の地域であっても、馬の食文化がある国も存在しています。代表的な例でいうとフランス、イタリアなどの地域です。これらの地域では一般庶民の食事として馬を食してきた歴史がありました。
馬肉を食べることが大きく広まったきっかけは、ナポレオンによる遠征で、戦争中の非常食として馬を食べることを推奨した、というエピソードなのだとか。
先ほど挙げた「馬を食べない」地域と違い、これらの地域はいわゆるラテン語系の民族の地域です。つい、同じヨーロッパと一言で呼んでしまいがちですが、現代の国々よりももっと古い時代の民族の風習や文化によって「馬」を食べるか否かが分かれているのだと思うと、少し不思議な気がしますね。
日本日本では幕末ころから流通しだした馬肉
日本では、もともと「馬」という動物自体がとても貴重だったという歴史があります。日本は地形に山や川が多く、平地で全力疾走することで素晴らしい能力を持つ馬は、あまり活躍する場がなかったと考えられています。
遠くの人へ手紙や荷物を届ける「飛脚」という職業がありましたが、飛脚は人が走って手紙を届けるのがよく知られていますが、馬早飛脚というものも存在していたようで早さを売り物にしていたそうです。
早さが売り物の移動手段である馬は、非常に貴重で高値で取引されたため、一般庶民の手に渡ることはあまり多くなかったようです。
農業技術の発展に伴い、農具と同じような用途で馬が使われるようになってようやく人々と馬の距離がぐっと縮まってきますが、このころの日本の馬はいわゆる「在来種」と呼ばれる日本固有の馬で、体格が小さくポニーくらいのサイズだったようです。
幕末に入り西洋の文化が流入するようになると、人々は馬を食用として食べるようになっていきます。鹿と比べると、日本人にとって馬肉は比較的最近食べるようになった食材、ということが言えるかもしれませんね。
さて、日本以外のアジア圏はというと、中国などでは馬は「軍事力」の象徴として大切にされてきた背景があります。しかし一方で中国の北部やモンゴルには野生の馬がいて、遊牧民たちの暮らす地域ではこれらの在来種の馬の肉を使ったソーセージやジャーキーが伝統的に作られてきました。馬の産地として知られる地域では、ヒツジや牛などのほかの家畜と同じような存在として馬を食してきたようです。今でも、モンゴルや中国の北部は馬肉を生産している地域です。
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馬肉も鹿肉も、どちらも低脂肪で高タンパクの食材として今、注目を集めています。人用の食材として世界中で需要が高まっているのですが、ペットフードでは、鹿肉はアレルギー対応の新奇タンパク源としてかなり前から活用されてきました。さらに最近ではヘルシーさもあって需要が増加傾向となり原材料の高騰が続いています。馬肉は、犬の生食スタイルをとりいれた飼い主から人気が出ました。人でも唯一生食できる肉ですよね。ドライフードとしてはAAFCO基準ではない国産のものが少しありましたが、ここ最近になってAAFCO基準の総合栄養食の海外フードも並ぶようになりました。
おわりに馬肉と鹿肉、どちらも犬にはおなじみの食材
馬肉と鹿肉、どちらも犬にはおなじみの食材になりつつありますが、ですが、さて、どちらを選ぼうかな?というときに気になるのが栄養。
【100g当たりの含有量(可食部)】
馬肉:タンパク質 20.1g、脂質:2.5g、ビタミンB12が豊富、鉄4.3mg、亜鉛2.8mg
鹿肉:タンパク質 22.3g、脂質:1.5g、ビタミンB3,B6、鉄3.1 mg 亜鉛3.1mg
どちらも高タンパク質で低脂質のヘルシー肉。悩ましいのでローテーションということで。。。
*1 栄養成分情報は、「日本食品標準成分表2010」「日本食品標準成分表準拠アミノ酸成分表2010」「5訂増補日本食品標準成分表脂肪酸成分表編」によるものです。