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2022.01.24

【#大きな犬と】腫瘍の専門獣医師が生涯寄り添う「アーツ人形町動物病院(東京都中央区)」訪問記

【#大きな犬と】腫瘍の専門獣医師が生涯寄り添う「アーツ人形町動物病院(東京都中央区)」訪問記

同じ犬でも小型犬と大型犬では、育て方や食事など気をつけたいポイントがちょっと違います。でも世の中にある知りたい情報は小型犬向けが多いのが少々残念…。そんな飼い主さんのために、大きな犬にフォーカスした、健康や食事や遊びといった暮らしの情報を集めて紹介します。(POCHI編集チーム・大きい犬班)



今回のお役立ち情報健康

東京都中央区にある「アーツ人形町動物病院」は、日本獣医がん学会獣医腫瘍科認定医Ⅰ種の資格を持つ獣医師が院長で、腫瘍に関しては1.5次診療施設とも言える充実度を誇り、セカンドオピニオンにも対応しています。
「ホームドクターとしても寄り添いながら、トータルケアをしたい」と語る今井理衣院長に話を聞きました。

腫瘍の専門医でありホームドクターでもある

2021年に開院した「アーツ人形町動物病院」(東京都中央区)の今井理衣院長は、「日本獣医がん学会」の最高位資格であり、2021年現在50名ほどが認定者である「獣医腫瘍科認定医(Ⅰ種)」のひとりです。
「主に腫瘍に関する長年の臨床経験を活かして開院したのは、ホームドクターとして犬たちが元気なうちから寄り添いながら、増加傾向にあるがんの適切な診断と治療を早期に行い、1頭でも多く苦しみから救いたい、がんで大切な家族を失う経験をする方を少しでも減らしたいと思ったからです」と、今井獣医師。
予約がなかなか取れず診断までに時間がかかるといった、二次診療施設に関する飼い主さんの悩みを解消すべく、今井獣医師は腫瘍のセカンドオピニオンにも積極的に対応しています。

今井家の“パパ友”がデザインした病院ロゴの前でほほ笑む、今井獣医師

今井家の“パパ友”がデザインした病院ロゴの前でほほ笑む、今井獣医師

大きな犬は5歳前後から腫瘍を患いやすい中年期に入るため、小型犬よりも早めに健康チェックに力を入れてもらいたいと今井獣医師は言います。
「健康診断は当院でも行えますが、血液検査だけでは、肺やお腹にある腫瘍は見つけられません。大きな犬は理想的には半年に1回のペースで、肺や骨などの様子がわかるレントゲン検査、リンパ節や脾臓などの小さな腫瘍も見つけられる確率が高いエコー検査(超音波検査)も受けてもらいたいですね」
異常が疑われた場合に比較するのに役立つ、正常な時のデータを残しておくためにも、健康診断は重要な意義があります。

大きな犬がかかりやすい、がん(悪性腫瘍)は?

■ 今井獣医師によると、大きな犬は以下のがん(悪性腫瘍)にかかりやすいそうです。

・骨肉腫:大型犬、超大型犬全般
・血管肉腫(脾臓にできるケース):大型犬、超大型犬全般(ゴールデン・レトリーバー)
・関節に発生する組織球性肉腫:バーニーズ・マウンテン・ドッグ、フラットコーテッド・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー
・皮膚肥満細胞腫:ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー
・口腔内腫瘍(特に診断がしにくい線維肉腫):ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー
・リンパ腫・白血病:ゴールデン・レトリーバー

レントゲンや超音波など最新機器がそろいます

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「腫瘍に関しては、早期に診断にたどり着き、適切な治療を早く開始するのがとても重要です。
検査時間や生検方法などの犬への負担が最小限になるように、腫瘍科認定医はお役に立てるはずです」(今井獣医師)
なお、CT検査やMRI検査が必要になった場合は、今井獣医師が適切な検査施設を紹介しています。民間の検査センターや大学を含む2次診療施設など、同時に診断や治療につながる処置ができる場合もあるため、それぞれにべストな方法を選択します。

治療の選択肢はいくつもある

がんだと診断が下ったら、今井獣医師は最新の治療法も含め、複数の治療の選択肢を飼い主さんに提示しています。
「まず、どんな腫瘍でそれぞれどのような治療法があるか、そして治療をしたら、また、しなかった場合もどのようなことが起きるのかを説明します。
もちろん、それらを知ったうえで、飼い主さんが大きな犬に腫瘍に対する治療を受けさせない道を選ばれることもあります。治療をするかしないに関わらず、どんな時にも点滴や痛み止め、食事の工夫といった緩和治療についてはできる限りのご提案とサポートをしていきます。

また、治療の種類によっては途中でやめることもできるとお伝えします。たとえば、抗がん剤を始めるとやめられないのかと心配される飼い主さんは少なくありません。そこで『治療は検査結果や犬の様子、ご家族の希望などをうかがいながら進めて行きます。疑問やご心配を解消しながら、治療の変更や中止のご希望もうがいます』とも伝えています。ちなみに、抗がん剤治療はつらいばかりの日々と想像されがちですが、実際はご自宅から通院しながら行うことが大前提で、入院は必要な時のみで、元気で過ごしている犬も多いですよ」

大きな犬も診察を受けやすい昇降式診察台

大きな犬も診察を受けやすい昇降式診察台

今井獣医師は、次のことも大切にしながら、動物病院を訪れる犬たちや飼い主さんに向き合っているとも語ります。
「がんを患った犬たちが、自宅で過ごす楽しい時間を増やせるよう願っています。そのためには、入院をうまく活用しながら自宅で大きな犬もご家族も心穏やかに過ごせるように、腫瘍に対する治療と緩和療法を組み合わせていきたいと思っています」

いつもキレイでどこを触ってもOKな犬でいるのが大切!

今井獣医師がホームドクターとして開院した理由のひとつは、日常のケアにおいても力になりたいからだと言います。
「いつも大きな犬たちとワクチン接種などで触れ合いながら、『あら? 少し太りましたね』とか『歯石がついてきましたね』とか『小さなしこりがありますよ』と、小さな変化に気づいてあげたいんです。
たとえば、飼い主さんは加齢によってできた良性の脂肪腫だと思っていたけれど、すべて生検をしてみたら、10個ほどあるうちの2個が悪性の肥満細胞腫だったことがあります。

また、お尻周りにある毛玉だと思っていたらしこりだったというケースも。あ、逆にしこりだと思ったら毛玉だったケースもあるんですけどね(笑)」
腫瘍は、早期発見による早期治療の開始が非常に重要です。
元気なうちからかかりつけ医として犬たちの様子を見ておき、どこでも触らせてもられるような信頼関係を築いておくことを、今井獣医師は大切にしています。

「また、病気の治療中にも犬たちにキレイでかわいくいてほしいというご家族に気持ちにも応えていきたいですね。そのための1.5次診療施設でもあるので、犬自身が負担にならない範囲のグルーミングなどは当院で行っています。病気とともにくらす犬たちとご家族にとっても、それが穏やかな日を過ごす手助けにもなると考えています」(今井獣医師)

江戸日本橋の下町らしい人情や伝統文化を感じる待合室

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肥満は万病のもとと言われますが、肥満に陥った大きな犬は腫瘍を発見しにくいことと、手術時の麻酔リスクが高まるので、いつも理想体重でいてほしいとも今井獣医師は言います。
「筋肉がほど良くつき理想体重をキープできていて、いつも衛生的だと、大きな犬自身も気持ちがいいはずです。犬たちが日々快適で健康でいられるためにも、獣医師として健康管理のサポートをしていきたいと思っています。
キレイでいるには、定期的なトリミングも欠かせません。実は、トリマーさんが小さな腫瘍を見つけてくれる例も多いんです」とのこと。
大きな犬たちが、トリマーさんにも獣医さんにも、足先から口の中まで、どこを触られても大丈夫なようにしておくのも、飼い主さんが大きな犬の健康を守り腫瘍を早期発見するうえで大切なポイントと言えるでしょう。

ライター:臼井 京音



*1 取材協力:  アーツ人形町動物病院



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