同じ犬でも小型犬と大型犬では、育て方や食事など気をつけたいポイントがちょっと違います。でも世の中にある知りたい情報は小型犬向けが多いのが少々残念…。そんな飼い主さんのために、大きな犬にフォーカスした、最新情報やお役立ち情報を集めて紹介します。（POCHI編集チーム・大きい犬班）

かつてラブラドールとゴールデンの2頭のレトリーバーの多頭飼育をしていた田尻さん夫妻は、3頭目と4頭目に元野犬を引き取りました。さらに、レトリーバーたちの晩年には保護猫がやってきて……。2022年現在、犬2頭と猫2匹と暮らす田尻さん夫妻の、にぎやか多頭飼いライフを紹介します。

保護猫との縁が、ありすぎる！

「一時預かりのミルクボランティアをしようとか、飼おうと決めて探したわけではないのに、やたらと保護猫と縁があるんですよね」
そう言って笑うカメラマンの田尻光久さんは、5年前から黒猫のくぅちゃんとの生活を始めました。

「当時は黒ラブのさくらと、ゴールデンのきっかが我が家にいました。それまでにも、子猫を道端で拾ってしまったり、友人が保護した子猫を一時的に預かったり……。
『また来たのね』という顔をするレトリーバー2頭と保護猫とのしばしの同居生活を経験して、我が家の大型犬と猫は一緒にいられると確かめられ、正式にうちの子として黒猫を迎えたんです」
くぅちゃんはもともと、バーニーズ・マウンテン・ドッグとゴールデン・レトリーバーを多頭飼いしていた友人のところに保護されていました。
「大きな犬は心に余裕があって穏やかな子が多いから、猫を受け入れやすいのではないでしょうか」と、田尻さんは考察します。

いつも保護猫が来てから1～2日は、田尻家の大きな犬たちは「なんだよぉ、うっとうしいな」という反応を示すのだとか。
「きっかはくぅと半年ほど一緒に暮らし、旅立ちました。
その後、ひとりになって寂しそうだったさくらのために、推定3歳の元野犬の“なつ”を迎えました。なつは、沖縄での野犬時代に出産経験があるようで、赤ちゃんを見ると世話を焼きたくてしょうがない感じ。自分から子猫を懐に入れて、自分の乳首を血が出るまで吸わせます」
そうやって育てられたのが、現在2歳半になるサバトラ模様のぼたんちゃん。
「ぼたんは、なつのことを完全に母親だと思っているので、なつになにをされても怒りません。ところが、約1年前に迎えた元野犬のきのこには、『シャーッ』と威嚇しながら猫パンチを繰り出すんですよ（笑）」

なつちゃんは、最近はきのこちゃんが調子に乗ると「コラッ」とたしなめたりするそうで、田尻家の犬2頭と猫2匹の間には、自然とチーム内の関係性ができ上がったようです。

猫も散歩に同行するようになったワケ

田尻家の毎日の散歩スタイルは、犬たちをリードで引き、猫2匹をカートに入れてというもの。
「ご近所さんには見慣れた光景になったと思いますが、初めてすれ違う人からは、2度見をされることもしばしば。『わっ、猫だった！』と」

そもそも猫も散歩に同行するようになったのは、くぅちゃんが「え～、アタシはお留守番なの？」といった表情で、うらめしそうに玄関先までついて来るようになったから。
「当時、老犬になって足腰の弱った黒ラブのさくらを、大きなバギーに乗せて散歩していたんです。なので『じゃぁ、しょうがないな』と、ハーネスとリードを付けてそのバギーにくぅも入れてみたところ、仁王立ちをして景色を眺めながら楽しそうにしていて。以来、くぅも散歩に連れて行くようになりました。
今ではくぅは、近隣の野良猫を見下ろしながら『おぉーい、元気にやってる？』と見回る女王様のようですよ（笑）」

さすがに、こうなると、新入りだからといってぼたんちゃんだけ留守番させるわけにはいきません。
田尻さんは、ぼたんちゃんの幼齢期から、お散歩デビューの日を見越してハーネスとリードに慣れさせました。
「昨年末のこと。ボーダー・コリー3頭と暮らす友人から『うちも田尻さんのところみたいに、猫とお出かけしたい』とアドバイスを求められたので、子猫のうちから、ほかの犬とリードにしっかり慣れさせるのが大切だと答えました。今では我が家と同じように、犬と猫を一緒に散歩するだけでなく、キャンプもみんなで楽しんでいますよ。ほかの犬がいても大丈夫だそうです」

猫と犬とマイカーで旅行に

田尻さん夫妻も、犬と猫を連れて旅行を楽しんでいます。
「自宅ではバラバラにいることが多いですが、車内では犬と猫がくっついて寝ている光景も目にしますね。狭いからかな？」
田尻さんのマイカーの中には猫用トイレも設置してあり、くぅちゃんやぼたんちゃんは、旅行中そこで用を足します。

外出先で猫をリードでつないで歩かせると、だいたい“道草を食う”のだそう。
「見事に、道に生えている草を食べていくんですよ（笑）。なので、犬と並んで歩くというより、気ままな感じですね」
猫たちは、山奥に行くと、探検とばかりにグイグイリードを引くこともあると言います。

「あ、お出かけ中におもしろいのが。ぼたんに接近しすぎたきのこに、前触れもなくぼたんが振り返りざまに猫パンチをしたりするんです」とも。
近年は猫も泊まれる宿も増えてきて、車中泊だけでなくペット可の宿に2頭と2匹で滞在することもあるそうです。
「猫は家になつくと言うけれど、客室でも警戒せず普通に過ごしていますね。犬たちもいるから不安にならないのかもしれません」と、田尻さん。

犬派の夫婦、初の猫の行動にびっくり

田尻さん夫妻は、もともとは犬派。そのため、猫ならではの行動に最初はびっくりしたとか。
「それは、猫1匹しかいなかった時でも、夜中にダーッダーッと室内を走り回ること。『わ～、本当に猫って夜の運動会するんだ』と、感心すらしました（笑）」

慣れるまではうるさくて眠れなかったと振り返る田尻さんは、犬と猫との違いにもあらためて気づかされました。
「犬には『ちょっとうるさいから静かにして』とか『待ってて』と言うとつうじて、がまんしてくれたりします。でも猫は、人の言葉はつうじてるけど気にせず、ひたすらミャーミャーと何度でも何時間でも鳴き続けて訴えてくるんですよ。そのあきらめない感じは、決定的に犬と違いますね」

犬と猫との習性差により、田尻さんは食事スタイルを工夫するようにもなりました。

「猫は少し食べては残し、またあとで食べますよね。けれども、犬は食いだめをします。最初はみんな一緒に器を並べて食べさせていたのですが、なつが猫たちの食べ残しを平らげてしまうんです。だから、猫のフードボウルだけ、階段の上段に置くようになりました」

ところが、階段をそーっと上るなつちゃんの後ろ姿を田尻さん夫妻はよく目撃するそうで……。

「『あれ？　今なにしようとしてたの？』と、なつに声をかけると『さぁ』と涼しい顔をして階段を下りてきます（笑）。

猫のフードボウルが空になっていたとき、猫が食べた場合は粒の破片が少し残っているのですが、なつが食べたあとはピカピカになめ尽くされているんですよね。だから、『あ！　なつ、食べたでしょ』と笑う場面も少なくありません」

犬には犬の、猫には猫の魅力があると語る、田尻さん。
「とくに妻は、『猫のこの手触りが気持ち良すぎ～』と言いながらずっと猫をなでています。犬と猫どっちも、そして、みんなそれぞれ個性的でかわいいです！
そんなこと言ってると、また子猫を保護してしまいそうですね。まぁ、そうなったらそうなったで、また、なつ母さんが助けてくれるでしょう」
おおらかに笑う田尻さん夫妻の“にぎやか犬猫ライフ”の今後も楽しみです。

ライター：臼井 京音