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2022.11.09
犬の嘔吐は食事が原因?吐いた後の食事はどうすべき?消化を意識したごはんの工夫
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この記事を書いた人:POCHIのペット栄養管理士 岡安
ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。
フードがそのまま出てきた!犬の嘔吐の原因とは?
吐いたもののほとんどが未消化だった場合は、嘔吐ではなく「吐出(としゅつ)」と呼ばれるものの可能性が高いです。
食べ物が胃に入る前に吐いている状態で、食後すぐに見られることが多い症状です。食べ物を飲み込んですぐに驚いたり、テンションが上がったりした際に反射的に吐き戻してしまった、というケースのほか子犬などは一気に食べ過ぎ、ということもあります。成犬でも早食いをしすぎて吐き戻すことも良く見られます。
ただ、これらの行動が見られないのにもかかわらず、食事のたびに吐出する場合は、食道の病気や異物が原因と考えられます。吐出はある意味生理現象のひとつです。
咳やくしゃみを伴っている場合は、誤飲が疑われます。「食べたら吐く」「水を飲むだけで吐く」「元気がない」といった症状が見られた時は、単なる生理現象ではない可能性がありますので動物病院を受診しましょう。
ちなみに、胃が空っぽになると、胃酸が胃壁を刺激して吐き気を催すこともあります。朝ごはんの前の早朝などに、黄色い胆汁が混じった胃液を吐く犬も多いです。
タイミング的に空腹が嘔吐に関係していそうな場合は、食事の量はそのままに与える回数を増やすことで対応することができます。
1日2回に分けていた食事を3回に分けて与えることで、強い空腹を感じる時間を短くすることができます。夜、寝る前にオヤツを与えることも効果的ですよ。
犬にとって消化しやすい食事とは
「犬の親戚にあたるオオカミは肉食動物だし、やっぱり犬にとっても肉中心の食事がベストなんでしょ?」と思う方も多いと思います。しかし最近の研究ではオオカミも雑食性の強い動物であるというのが通説になりつつあります。
仲間と協力して狩りをして手に入れる肉のほかにも、ほかの肉食動物の食べ残し、昆虫や魚、ベリー類などの果実、植物の葉や根っこ、人間の出した残飯など本当にさまざまなものを食べてきたことが判明しました。
人間最古の友達とも呼ばれる犬は、人間と一緒に長く暮らしていく中で、人間と食事を分け合いながら消化器系はオオカミよりさらに雑食性に近付く進化をしていったと考えられています。
このことから、犬の食性は「雑食に近い肉食」と考えるのが自然かもしれません。
そうなると、肉や魚以外にも、植物性の食事などもバランスよく摂取することが望ましいと思います。
犬の消化を意識したい時のオススメ食材
犬が未消化のフードなどを吐き戻してしまう時、少しでも消化に良いものを食べさせてあげたいと考えるのが飼い主心理というもの。
そこで、嘔吐が多い犬の食事に取り入れたい食材をいくつかピックアップしてご紹介します。どんなものでも基本は刺激になりにくいよう、熱すぎたり冷たすぎないよう、常温~ひと肌に温めてから与えるのがオススメです。
また、犬が嘔吐してしまった後の食事でもお腹に優しい食事の例として役立つレシピも合わせてご紹介いたしますので参考にしてみてくださいね。
★滑らかに食道に入るもの
食道や胃の入り口付近で引っかかってしまったり、高齢になって飲み込む力が衰えているようであれば、滑らかに食道に入れられるようにぬめりがある食材やとろみがあるものがオススメです。
代表的なもので言うと、納豆やすりおろした山芋、生卵などがあります。
これらをいつものフードに混ぜたりしてフード全体にとろみをつけてから与えてみてはいかがでしょうか。
また、トッピングレトルトでもとろみをつけているものを使用するのもオススメです。
★速やかにエネルギーに代わるもの
速やかにエネルギーに代わるものとしてオススメなのが、炊いた白米です。犬は穀類の消化が苦手、と思われている方は多いと思いますが、水を加えて加熱した(炊いた)穀類であれば、しっかりと消化吸収ができますし、速やかにエネルギーに代わる心強い味方になるのです。
先ほどオススメした滑らかに食道に入る生卵の応用で「卵おじや」はポチのベテランスタッフも犬のお腹がゆるい時などに与えている臨時メニュー。卵に含まれる豊富なアミノ酸もエネルギー源として使用されます。
サプリメントとして、エネルギーの吸収効率を考えて中鎖脂肪酸やアミノ酸などを組み合わせたものもありますので、そういったアイテムも活用してみるのも良いと思います。
★消化をサポートする成分を含むもの
犬の消化をサポートする「酵素」を含む食材をプラスするのもオススメです。実は、消化に役立つ酵素にも種類があり、得意・不得意がはっきりしています。
消化に役立つ酵素の仲間を分類すると、大きくでんぷんを分解する酵素、たんぱく質を分解する酵素、脂質を分解する酵素に分けられます。
でんぷんをブドウ糖に分解する酵素はアミラーゼ、たんぱく質をアミノ酸に分解する酵素はプロテアーゼ、脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解する酵素はリパーゼと呼ばれていて、それぞれ豊富な種類があります。
これらの酵素を豊富に含んでいる食材としては、バナナやダイコン、パイナップルやキウイ、キノコ類などがあります。
多くの酵素は加熱調理するとその活性を失うといわれていますので、食事の前にミキサー等でスムージーのようにすり潰してオヤツ感覚で食べさせたりするのがオススメです。
おわりに
今回は、犬の嘔吐が見られた時に取り入れたい食材を中心にご紹介いたしました。犬の突然の嘔吐は意外とよくある現象なのですが、もちろん病気のサインというケースも少なからずあります。
ですから、よく吐き戻しをしてしまう犬は、まずは動物病院で相談をして、病気や異常のサインが見られず、家庭でのケアを指導されたときには食事の見直しなどを検討してみてください。獣医師さんによると、飼い主の感じる「なんだかおかしい」という気付きが思わぬ発見につながるケースも多くあるそうです。
飼い主だけでは判断が難しいことも多いと思いますので、信頼できる動物病院で「吐き戻しが多くて…」と相談をすることから始めてみてください。