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2023.03.29
【#大きな犬と】腎臓は大切に!獣医師に聞いた腎臓への負担を減らす生活と腎臓のこと
同じ犬でも小型犬と大型犬では、育て方や食事など気をつけたいポイントがちょっと違います。でも世の中にある知りたい情報は小型犬向けが多いのが少々残念…。そんな飼い主さんのために、大きな犬にフォーカスした、健康や食事や遊びといった暮らしの情報を集めて紹介します。(POCHI編集チーム・大きい犬班)
今回のお役立ち情報健康
西洋医学をベースに東洋医学も取り入れている、こうご動物病院(東京都多摩市)の院長・向後亜希獣医師に、どの犬でもシニア期以降は機能が衰えがちな腎臓に関して教えていただきました。腎臓をケアする日常生活の工夫も、ぜひ大きな犬のために実践してあげましょう。
腎臓は生命維持に欠かせない
腎臓は背骨の両側に1個ずつ、計2個ある泌尿器のひとつ。主に、尿を生成する役割を担っています。
こうご動物病院(東京都)の向後亜希獣医師は、腎臓はとても重要な働きをしていると説きます。
「老廃物を体外に出す器官が、腎臓です。老廃物は肝臓で分解されて尿素になり、腎臓から尿として排出されます。腎臓は余分な塩分や水分も尿から排出していて、生命維持に欠かせない機能を持っているんです」
とくに猫では、加齢とともに腎臓の働きが低下して腎臓病になりやすいことが知られていますが、犬でもシニア期以降になると腎臓の機能は衰えがちに。
「東洋医学では泌尿器や生殖器など、生命力に関連する機能は“腎”と呼ばれます。“腎”の働きは加齢とともに弱まり、“腎虚”の状態になりやすくなってしまうんです」
このように語る向後獣医師は、大きな犬の腎臓をケアするために、飼い主さんにもできることがあると教えてくれました。
トイレをがまんさせるのはNG!?
「まず、トイレをがまんさせないようにしてください。簡単に表現すれば、おしっこが溜まっている状態は、本来は排出されるべき老廃物が体内に残ったままの状態で、腎臓に負担がかかっているんです。大きな犬との生活では、いつでもおしっこをしたいときにできる環境を整えるのが、腎臓ケアにもつながります」と、向後獣医師。
小型犬に比べて大型犬は尿量も多く、トイレスペースも広く必要になったりゴミの量が増えたりするため、室内ではあまりおしっこをさせず、散歩時にさせている飼い主さんも少なくないでしょう。
「それでも、もちろん1日3~4回散歩に行けるならばいいのですが、老犬になって足腰が衰えてくると、1日何度も屋外に出るのはむずかしくなってしまいます。心身穏やかにシニア期を過ごせるためにも、ぜひ、室内トイレを大きな犬にも設置してあげてくださいね」(向後獣医師)
おしっこをこまめにさせるためには、トイレトレーニングも役立ちます。
「しーしー」「ワンツー」などの合図で大きな犬が室内トイレができるように、子犬期や若齢期のうちからトレーニングをしておくのがおすすめ。しつけ本や動画サイトなどを参照に、今すぐ取り組んでみましょう。
腎臓にやさしい生活とは?
腎臓への負担を減らすには、食生活も大切です。
「重要なポイントは、水分をしっかり摂らせることですね。特にシニア以降は老化にともなって喉の渇きを感じにくくなるので、飼い主さんが意識して水分を摂らせるのが大切です」(向後獣医師)
おいしいスープを飲ませたり、水飲みボウルにスープやササミのゆで汁を少し混ぜたり、大きな犬が好んで水を飲めるように工夫してあげましょう。
「食品添加物や着色料が多く使われているフードなども、控えるのが無難です。
一般的には低タンパク食が、腎機能低下を防ぐために推奨されています。
大きな犬がおいしく食べられるような、良質なタンパク源の高品質なフードを選んであげてくださいね」(向後獣医師)
向後獣医師によると、東洋医学では、寒さやストレスが腎臓機能を悪化させるとされているそうです。
「大きな犬は、室内では地面で寝ていることも多いかと思います。冷たい空気は下部に行くため、夏でも冷房で大きな犬がいるところが冷えすぎないように注意してあげましょう。
それから、東洋医学的に言うと、腎臓は“驚”の感情と関連があるんですよ。ストレスの原因にもなるので、犬たちをあまり大きな音や刺激で驚かせないというか、怖がらせないようにしてあげたいものですね」(向後獣医師)
腎臓病を早期発見するには
腎臓機能が低下すると、尿を濃縮する能力が落ちるために多尿になります。また、尿として体外に排出された水分を補給しようと、水をよく飲むようになります。
「この多飲多尿が、腎臓病になると出てくる症状のひとつです。
ほかに、食欲にムラが出てきたりもします。飼い主さんに問診をすると『うちの子、食べたそうにしているのにあんまり食べないんですよね』という返答も多く、体重の減少が確認できるケースも少なくありません」(向後獣医師)
腎臓病(慢性腎不全)が疑われた場合、動物病院では血液検査を行うことになるでしょう。
「血液検査では、主にクレアチンや尿中尿素窒素(BUN)の数値で腎臓の状態を判断します。近年は、当院でも使用しているアイデックス社のSDMAの数値などで、初期の腎機能の悪化でも血液検査でわかるようになりました。
私の臨床経験上の印象でしかないのですが、猫よりも犬のほうが、腎臓病と診断してからの余命が短い気がしています。
フィラリアの予防薬を処方してもらう際には、血液を採取してフィラリアの抗原検査をしますが、同時に血液ドックを依頼するなど、定期健診をして腎臓病の早期発見に努めていただきたいですね」(向後獣医師)
また、腎臓の機能を調べるためには尿検査も有効です。
「猫より犬のほうが尿は採取しやすいですから、健康診断では尿検査も加えてくださいね。尿は、朝いちばんの、いわゆる濃い尿を飼い主さんが採って持参していただくのが理想的です。
腎機能が悪いと、尿検査の結果では尿比重が薄く、尿蛋白が陽性になることがあります」
向後獣医師は、腎臓病の診断において、レントゲン検査(X線検査)や超音波検査(エコー検査)も実施することが多いと語ります。
「レントゲンや超音波の画像で、腎臓の大きさや形態がわかります。
大きな犬は腫瘍になりやすいので、まれに、腎臓などに腫瘍が見つかるケースもあります。
最終的に腎臓病と診断したら、そこ子その子に応じた治療を行っていきます」
飼い主さんは大きな犬のために、腎臓にやさしい生活と、定期健診による腎臓の異常の早期発見を心がけてあげたいものです。
ライター:臼井 京音
■ 向後亜希 獣医師
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