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2023.08.31
【#大きな犬と】神経に働きかける"Tタッチ"で心身のケアを~飼い主さんと過ごすやさしい時間のススメ Part2~
同じ犬でも小型犬と大型犬では、育て方や食事など気をつけたいポイントがちょっと違います。でも世の中にある知りたい情報は小型犬向けが多いのが少々残念…。そんな飼い主さんのために、大きな犬に特化した、遊びや健康、食事など暮らしの情報を集めていきます。(POCHI編集チーム・大きい犬班)
今回のお役立ち情報Tタッチ
神経に働きかけるTタッチは、筋肉に直接働きかけるマッサージとは異なり、子犬から老犬まで、年齢や犬種や健康状態も問わずにいつでも気軽に行えます。悪天候で散歩に行けない日などに、大きな犬とスキンシップの一環として取り入れてみてはいかがですか?
今回はTタッチのプロフェッショナルである、なかしまなおみさんに、大きな犬におすすめのTタッチをピックアップして教えていただきます。
神経に働きかける“Tタッチ”は気軽で簡単
筋肉に直接働きかけるマッサージとは異なり、神経に直接アプローチをするのがTタッチ(正式名称“テリントンTタッチ”)。
「副作用もまったくなく、いつでもどんな犬にでも、人が強い圧を使わずに好きなときに行えるのが、Tタッチの良いところです」と、テリントンTタッチ P2認定プラクティショナーで、ドッグケアを行う“ぱれっと”主宰のなかしまなおみさんは言います。
Tタッチには、ラクーン(アライグマ)やアバロニ(あわび)、ゼブラ(シマウマ)など、生物の名称がつけられているものが多くあります。
前回はアバロニを紹介しましたが、今回は、ゼブラのタッチと、線を描くタッチ、皮膚を持ち上げる“リフト”、伸縮性のあるバンデージで身体を意識させる“ボディラップ”などを紹介します。
「うちの子のためにケアをするとなると、痛みがあるところや動きが悪いところなど、気になる部位に飼い主さんはフォーカスしてしまうかもしれません。けれども、今、健全に動いているところを、いかにうちの子がうまく使えるようになるかを考えてTタッチをすると、動きづらかった部位がスムーズに使えるようになるケースも多いもの。
たとえば、背中をゆるめたら、股関節や後肢の動きが良くなったなど……。
また、私たち人間でも、姿勢を正すだけで深い呼吸ができるようになったり、やる気や自信が出たりすることがありますよね?
そのような感じで『うちの子に、ここをタッチするとどうなるかな?』と、飼い主さんも好奇心を持ちながらタッチをしてくださいね。飼い主さんが楽しんでいる様子が伝わって、大きな犬もうっとり幸せな気持ちに包まれることでしょう」(なかしまさん)
ジグザグを描くゼブラのタッチで身体を意識させる
犬の首の付け根からお尻の方向に、シマウマの模様のように手を滑らせるタッチなので“ゼブラ”と名付けられました。大きな犬がバラバラに感じている身体を、ひとつに調和して感じられるようにつなげるTタッチです。
やさしく引っかくような動きは、大きな犬にとってなじみやすいもの。大きな犬が気持ち良さそうにゼブラのタッチを受けているようであれば、何度でも繰り返してあげると良いでしょう。
1)まず、首の付け根に5本の指先をくっつけます。そのまま背骨に向かって被毛をかき上げるようにして、グーを作りながらタッチを。
2)手を犬の下部に向かって動かすときは、指先を広げて手のひら全体で被毛に手をスーッと滑らせます。
3)被毛に滑らせた手が飼い主さんの身体から遠ざかるにつれて、指先を広げていきましょう。
4)首の付け根から、途中で手を犬の被毛から離すことなく、連続してジグザグを描きながらタッチを行いましょう。
5)どのTタッチも、スーッと入り、最後もスーッと空気の流れが抜けるようにするのがポイントです。
口へのタッチ
こんなときによく吠える、よくじゃれて噛む、自分の身体などをなめすぎる、歯茎や口のトラブルを予防したい
過剰に吠えたり噛んだり、自分の身体などをなめすぎる大きな犬もいるでしょう。そのような犬では、口の存在をあまり意識していないケースが少なくありません。口に意識を持たせてあげるためには、口へのタッチが役立ちます。
口への刺激が唾液の分泌を促すので、口腔内や歯茎のトラブルの予防になることも。
歯磨きの練習として、口へのタッチを活用するのも良いでしょう。
1)まず、大きな犬の胸に片手を添えます。それから、口を触っていることを犬に意識させるイメージで、鼻先から首の付け根までスーッとなでます。
2)小指を立てず、親指以外はくっつけること、ひげを逆なでずに毛なみに沿って行うこと、マズルの右側は右手、左側は左手でなでることがポイント。
3)最後は手のひらが耳の後方にスーッと抜けていくようして終わります。口へのタッチが好きな犬には、円を描くタッチ(過去記事参照)もおすすめ。
■ POINT
口を触られるのが苦手な大きな犬には、手のひらでマズルをスーッと1回なでるだけでも大丈夫です。口は犬にとってデリケートな部分なので、1~2回なでるだけでOK。
背中のリフト
こんなときに身体の緊張をほぐしたい、呼吸を整えたい、シニア犬の身体をゆるめたい
身体が硬くなっているとき、身体が緊張しているとき、そして身体が硬いシニア犬に、背中のリフト(持ち上げる)がおすすめです。
「とくに大きな犬は、体重が重いので身体が硬くなりがち。背中のリフトをすると、身体全体がゆるんできて、心までゆるんでリラックスしやすくなりますよ。なので、ぜひ大きな犬の健康維持にリフトを取り入れてくださいね」(なかしまさん)
1)手を、大きな犬の皮膚にぴったりと貼り付けて背骨に向かって持ち上げます。息をゆったり吸いながら、おおよそ3~5秒かけて持ち上げましょう。とくに長毛犬種の場合は被毛の上を手が滑りがちですが、被毛ではなく皮膚を動かすのがポイントです。
2)一息おいたら、スタート地点まで息を吐きながらゆっくり戻していきます。同じところを何度も行わず、手を次の地点へと滑らせて、新たなリフトを行いましょう。シニア犬は皮膚が硬くて最初は動きにくいかもしれませんが、次第にゆるんできます。
ボディラップで全身のバランスを整える
Tタッチ特有の手法に、伸縮性のあるバンデージ(Tタッチ用)を身体に巻く“ボディラップ”があります。
「ボディをラップされた犬は、ふだん感じない圧を感じることによって身体になにか起きているという気づきが犬にもたらされます。その気づきにより、犬は自分自身の身体の大きさや、自分と自分でないものとの境界線を自覚できるようにもなります。そして、身体を調整しようと考えて、全身のバランスが整ってきます。
自分の身体に対して得られた安定感が安心感にもつながり、ボディラップによって気持ちや行動も落ち着いてきますよ」(なかしまさん)
ボディラップには、“ハーフボディラップ”と“フルボディラップ”があります。身体のどこを意識させたいかによって、巻き方もさまざま。
以下、それぞれのもっとも一般的で簡単な巻き方を紹介します。
■ハーフボディラップ
1)まず、バンデージの中心部分を大きな犬の前胸に添えます。
2)犬の背中でバンデージをクロスさせ、脇の下近くに持ってきます。
3)お腹あたりでバンデージを結べば、肩を意識させる“ハーフボディラップ”の完成。
■フルボディラップ
「フルラップをさせると抱きしめられている感覚になるので、より、大きな犬の安心感は増すでしょう」(なかしまさん)
1)もっとも簡単な“フルボディラップ”。バンデージを背中でクロスさせたら、しっぽの下あたりまで持ってきます。
2)お尻の下で、バンデージを蝶結びにします。ボディラップは、強すぎず弱すぎずがベスト。
ボディラップをされた大きな犬が、目をパチパチさせたり、その場で固まって動かなくなったりしているのは、自分の身体に起きている非習慣的な感覚に意識を向けているからなので、心配はいりません。ただし、あまりにも動かない状態が続く場合は、大きな犬にとって情報過多と言えるような状況にあるので、ラップをはずしてあげましょう。
ボディラップをしている時間は、20分程度を目安にしましょう。ただし、雷鳴時や緊張する環境にいるときは、それ以上の時間でも大丈夫です。ボディラップをしている間は、大きな犬から目を離さないようにしてください。
“サンダーシャツ”で雷や花火の怖さを軽減
手元にバンデージがない場合、洋服でも代用できるケースがあります。
Tタッチでは、雷が怖い犬のために開発された“サンダー(雷)シャツ”という犬用ウェアを使うことがあります。これは、犬の身体を包み込む圧の調節がマジックテープでできるようになっています。
そのようなぴったりとしたタイプの洋服を犬に着せると、飼い主さんにぎゅっと抱きしめられているような感覚を得られて、雷や花火などの音の振動だけでなく、動物病院、慣れない場所、来客などに対する“不安感”を軽減させて犬が落ち着くのです。
「大きな犬には、ふだんより少し小さめのサイズのTシャツを選んで着せると、包み込む感覚でフィットするのでおすすめですね」(なかしまさん)
サンダーシャツを着用するのは、大きな犬にとって”怖いこと”が続く間にしましょう。
目の前の大きな犬をよく観察して、Tタッチやボディラップ、そしてTシャツなど、うちの子に合うものを併用しながら、大きな犬の身体と心をゆるめて幸せな生活を送らせてあげましょう。
ライター:臼井京音 写真:中村陽子
■ 指導:なかしま なおみ さん
ドッグケアを行う「ぱれっと」主宰。テリントンTタッチ P2認定プラクティショナー。訪問ケアやセミナー講師など、関東を中心に活動している。
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