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2024.04.25

"犬の涙焼け"原因と対策どちらにも絡む「菌」のまとめ

皆さまの家の犬たちに、涙やけはありますか?
とくに白っぽい被毛を持つ犬と暮らす方にとっては、涙やけは気になるお悩みですよね。赤茶色い涙焼けは、可愛い犬の表情の印象も変えてしまうことが少なくありません。

さて、犬の涙焼けの原因と言えば皆さまは何を思い浮かべますか?
逆さまつげ?食物アレルギー?食べ物が合わない?遺伝?いろいろな原因が指摘されていますよね。涙が出てしまう理由は色々ありますが、目元を赤茶色にする確かな原因の一つに「菌」の存在があることはあまり知られていません。

涙焼けと深くかかわる菌の正体とは何なのでしょうか?
犬の涙焼けの原因になる菌の特定と、それに対する効果的な対策について、この記事で解説します。
涙焼けの発生メカニズムから対処法まで、知っておきたい情報をまとめていきますので、犬の涙やけが気になったらぜひ参考にしてみてくださいね。

DOG's TALK

POCHI編集部

POCHI編集部

犬との暮らしをちょっと素敵に、快適に。日々、そんな情報集めに余念がない編集チームです。

犬の赤茶色の涙やけの原因のひとつは「真菌」です。

犬の目元や鼻の周囲まで赤茶色になってしまうことがある涙やけ。
この犬の被毛を赤や茶色に変色させてしまうのは、「マラセチア」や「カンジタ」と呼ばれる真菌の働きによるものです。
これらは、実はほとんどすべての犬の皮膚などに存在している"常在菌"です。普段は特に悪さをする存在ではないのですが、皮膚のバリア機能が低下したり、繁殖しやすい条件がそろってしまうと様々なトラブルの原因となります。

マラセチアは外耳炎やマラセチア皮膚炎などのトラブルの原因になることもありますので、そういったトラブルについてご存じの方なら聞いたことがあるかもしれませんね。

マラセチアやカンジタに限ったことではないのですが、真菌が繁殖しやすい条件はある程度共通していて、「湿度、温度、栄養となる成分」の3つが大きなものです。
これらの条件がすべてそろうと、特定の菌が繁殖しすぎてさまざまなトラブルの原因になるとされています。

また、涙のpHがアルカリに寄っていると真菌が繁殖しやすい環境になると考えられています。犬の涙のpHの変化については、現在もさまざまな調査が行われていますが、不思議なことに涙のpHが酸性化すれば涙だけではなく、よだれ焼けもきれいになるのだとか。

涙やけとよだれ焼けは、繁殖しやすい条件がそろってしまうことで、いずれも真菌が繁殖し、涙に含まれる成分を分解することで、ポルフィリンと呼ばれる赤茶色い色素を作り起こっています。

「菌」から考える涙やけ対策

涙やけによって犬の顔が赤茶色くなってしまう原因の一つは、真菌たちが涙に含まれる成分を分解することが原因とご紹介しました。
このことを踏まえると、真菌が繁殖しすぎないようにすれば、涙やけによる赤茶色の痕は改善に向かうはずです。



■涙をすぐにふき取る
まずはやっぱり基本。涙はこまめに拭き取りましょう。涙そのものは透明で、赤茶色が付くことはありません。赤茶色になってしまう前にきれいにすれば、犬の目元もきれいなままです。



■目の周囲の毛は短めにカット
すでに涙焼けになってしまっている目元の毛は一度短くカットしてしまうのもオススメです。毛が短い方が、増えすぎた菌を対策するのには適しています。



■衛生的に維持しよう
目の周りを拭き取る時には、真菌などの繁殖を抑える働きがあるローションなどで拭き取ることも効果的です。

犬の涙焼けがドッグフードで改善される?

さて、皆さまの中には「ドッグフードを変えたら涙焼けがよくなった」という体験談を聞いたことがある方もいると思います。これって本当なのでしょうか?
このことについて調査した研究結果があります。

2019年に行われた研究では、涙焼けの症状がある犬たちを観察し、ドッグフードを変更した結果涙焼けが改善されたケースに注目し、体内でどんな変化が起きているかを検査しました。
すると、これまで涙焼けの直接的な原因と考えられていた説とは異なる結果が出て、注目されるようになりました。

以前、涙焼けの大きな原因の一つとして考えられていたのが「食物アレルギー」でした。
今回の研究でも、当初はアレルギーを引き起こす物質が含まれていないため、涙焼けも改善されたのでは?という仮説のもと、検査が行われたそうですが、アレルギー反応が落ち着いた形跡はあまり見られなかったようです。

一方、はっきりしたのは「ウンチのpH」の変化でした。これは、腸内細菌が作り出す"短鎖脂肪酸"という成分が多くなったことで、pHが変化した結果でした。このウンチのpHが大きく変化した犬ほど、涙焼けの症状が改善される傾向にあったということです。

この研究の中では、腸内環境の状態が涙焼けの症状に何らかの影響を与えているのでは?と結論付けられています。
現在もこの研究についてはより詳しい調査が進められつつある段階なのだそうですが、犬の涙焼けに悩む飼い主さんは、「腸内環境」「消化に良い」というキーワードでフードを探してみるのも、一つの基準になるかもしれませんね。

涙焼けの赤茶色を作るのも、改善に関係するのも菌。どちらの存在も無視できません。

おわりに

今回は、犬の涙焼けについて改めてご紹介いたしました。
涙焼けに悩む犬は多いですが、その発生の原因などについてまでじっくり考える機会はあまりないように思います。「涙焼けが出ちゃった」「良くなった」という視点についつい注目してしまいがちですが、広い視点で見ると原因も、改善のカギも「菌」にたどり着くという面白い共通点が見えてきます。
予防と対策を考えていくうえで「菌」を意識してみると、涙焼けのケアはより効果的なものが見付かるかもしれません。