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2024.07.01
完全食とは?総合栄養食との違いについてペット栄養管理士が考えてみた
最近、インターネット上で情報収集をしていたり、コンビニで販売されている商品を手に取ると「完全食」という言葉をよく見かけます。
少し前から少しずつ登場してきた「完全食」ですが、ふと気になって調べてみるとドッグフードの総合栄養食に近い概念であることが分かりました。
普段、犬の食事や健康について調べているペット栄養管理士としては、気になるキーワードである「完全食」。これって一体どういう意味なのか、総合栄養食とはどのような違いがあるのかなど、調べていくうちに分かったことをまとめてご紹介したいと思います。
犬がずっと元気で過ごすために、そして飼い主さんの食事にもつながる話ですので、ぜひ一度ご覧ください。
完全食とは何か?
■完全食の定義
まず、完全食とは、健康を維持するために必要とする栄養素をバランスよくすべて含んでいる食品のことを指します。
一般的には、厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準」に基づき、1食で1日に必要な栄養素の1/3を摂取できる食品を「完全食」と呼びます。
ここまで読んで、犬と一緒に暮らしている方は気が付いたかもしれません。そう、ドッグフードにおける総合栄養食も同じように犬の健康維持に必要な栄養をすべて含んでいますよね。
調べているうちに、次第に完全食と総合栄養食との違いも分かってきたのですが、考え方としては近いようなものなのかもしれません。
■こんなものも完全食?
最近では、コンビニなどでも「完全食〇〇」としてシリアルやパン、エナジーバーなどをよく見かけるようになってきました。
それ以外にも、ヌードルや飲み物、レトルトなどでも完全食と表示されたものが多くなってきています。
また、母乳は赤ちゃんにとっての完全食。母乳を十分な量飲むことができれば、成長に必要な栄養素や、赤ちゃんの体を守る免疫物質を含んでいます。
総合栄養食ドッグフードとは?
■総合栄養食の定義
一方、総合栄養食ドッグフードはどうでしょうか?
こちらも、これと水を必要量摂取していれば、犬の健康を維持できるだけ十分な栄養を摂取できるものとして定義されています。
ドッグフードの場合は、犬にとっての必須栄養素ひとつひとつに対して細かく栄養基準が設けられています。栄養基準を設けている代表的な団体には、AAFCO(アフコ)・FEDIAF(フェディアフ)があります。
AAFCOはアメリカや日本、オセアニア、FEDIAFはヨーロッパ圏で適用されていることが多いです。それぞれの団体で栄養基準が微妙に違っていることがありますが、大きなズレはなく、どちらを用いても犬の健康維持をすることができます。
■総合栄養食以外のドッグフードの分類
基本的に、総合栄養食のドッグフードは健康的な犬を対象として作られています。健康な犬がその体調を維持するのに必要な栄養素ということになります。
一方、病気の療養中の犬の食事としては活用することができません。病気の治療のために食事の内容の管理が必要なこともあるので、そういった犬たちのために栄養が調整された療法食を使用します。療法食を与えることが重要な治療ですので、フードを変える際は獣医さんとの相談が必要となります。
ここから漏れるものはおおむね間食・オヤツに分類されることが多いようです。犬用のオヤツとしておなじみのジャーキーやビスケット、チーズ、ガムなどです。
また、総合栄養食でもない、オヤツや間食でもない、療法食でもない食べ物で、嗜好性を高めるウェットフードや、水分補給を促すスープ、偏りがちな栄養を補うサプリメントなどは、「その他の目的食」にカテゴライズされている場合が多いです。
その他の目的食、とは特定の栄養成分等の調節・補給または嗜好増進として与えることなどを目的としたもので、総合栄養食、間食および療法食以外のものを指します。
総合栄養食のような数字の明確な基準はありませんが、さまざまな目的があって与えることが特徴です。
「その他の目的食」に、栄養を補う[栄養補完食]として与えられるウェットフードやレトルト、サプリメント、ふりかけ、ミルクなどがあります。ちなみに、ウェットフードは総合栄養食か栄養補完食なのか、間違えやすいので、しっかり用途を確認して選びましょう。
ドッグフードでは、総合栄養食には一つ一つの栄養基準が設けられているほか、総合栄養食以外でもドッグフードには様々な分類が存在しているなど、かなり整備が進められている印象がありますね。
完全食と総合栄養食の違い
色々調べているうちに気になったのは、ドッグフードの総合栄養食と比較して、人間用に使われている完全食という概念はまだ確立されていない部分が大きいということが分かりました。
まず、現時点で完全食に対する明確な定義はなく、総合栄養食のような栄養基準は設定されていません。
今は、完全食を名乗る際のルール整備などがまだされておらず、開発するメーカーなどが独自の基準で表示できるようです。
また、完全食をどれくらいの量食べるべきなのかも明示されていないケースが多いので、十分だと思っていたけれど実は特定の栄養が偏っていたということも起こっているようです。
〇人用の完全栄養食 33項目
〇犬用の総合栄養食(成長期) 41項目
ペット栄養管理士の視点から見たこれからの完全食と総合栄養食
短期間で一気に市民権を得た「完全食」という言葉。総合栄養食と比較して、人間用の食事でも表示のルールや基準が設けられていないことに加えて、気になっていることがあります。
それは、「完全食」は「総合栄養食」とイコールではないということです。今まで、総合栄養食のドッグフードの事を「完全食」と言い換えたりすることがあったようですが、これから「完全食ドッグフード」と表記されたドッグフードは、総合栄養食ではないかもしれません。
総合栄養食の基準を満たしていないのに、犬の健康維持に十分な栄養が含まれているかのように見えるプロモーションで紛らわしくなります。
そういったものが、これからドッグフードのカテゴリの中に「完全食」として並ぶようになると、選ぶ側もしっかり説明を確認してから購入しなくてはならず、面倒が増えそうですね。
まとめ:犬にとって最適な食事の選び方
今回は人間用として今話題になっている「完全食」から総合栄養食やドッグフードの分類についてご紹介しました。
似ているようで違う完全食と総合栄養食。人間の食のトレンドはドッグフードにも波及していくことが多いので、これから犬用のものでも「完全食」と表記されるものが出て来ることが多くなるかもしれません。フード選びでは、総合栄養食と完全食の違いを踏まえて、うちの子に合っているのはどのようなものなのかを吟味していく必要が出て来るかもしれませんね。
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日本ペット栄養学会・ペット栄養管理士 岡安
POCHIで主に犬の健康を応援する記事を執筆しています。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。相棒は元気いっぱいの牧羊犬種です。