- コラム
- コラボ
2025.03.10
認知症かな?と思った時の向き合い方《RETRIEVER + POCHI archive010》

イラスト=macco
構成・文=RETRIEVER編集部
「RETRIEVER」は、ゴールデン、ラブラドール、フラットコーテッドを中心とした、レトリーバー種の専門誌。
陽気で明るい性格は家族に笑いをもたらし、豊かな表情は言葉が通じなくてもコミュニケーションを可能にしています。
何と言っても、人間に対する愛情がとても深い。そんな犬種との暮らしを紹介する「RETRIEVER」さんの素敵な記事をピックアップしてPOCHIバージョンでご紹介。
犬種が違っても読めばきっと皆さんのドッグライフがより充実したものになるはずです。(POCHI編集チーム)
こんなことがあったら認知症かも?

✓ 家の中で迷う
✓ うろうろ徘徊する
✓ 部屋の角で行き詰まる
✓ 家族をはっきり認識できなくなる
✓ 家族に対して反応が薄い
✓ 今まで決まった場所で排泄していたのに、他の場所で行う
✓ 今までできていたオスワリやオテができなくなる
✓ 昼夜のリズムが崩れる
✓ 夜鳴きをする
認知症かどうか確認を
犬がシニアになった時、気になることの一つのは認知症だと思います。「犬の認知症とは老化が極まった状態で、人間のように脳に異常なタンパク質が多くたまるといったような特徴は見られません。あくまでも加齢に伴って一般的な程度、脳が萎縮したり、タンパク質がたまるぐらいです」と語るのは、小澤真希子獣医師。
後期高齢犬といえる年齢は、大型犬で10歳ごろから(小型では14歳程度から)と考えられます。このころから見られるようになる、若いころとは異なる動きや認知的な機能の衰えが、いわゆる認知症(認知機能不全症候群)にあたります。
「ただし、すぐに認知症と診断されるわけではありません。認知症と思われる変化は、他の病気の症状の一つである可能性も大いにあります。例えば、排泄に関しては膀胱炎や泌尿器系の疾患、認知に関しては脳腫瘍の可能性が考えられます。また、足が滑ってうまく歩けないのは、今の環境がシニア犬の足腰に向いていないのかもしれません。そのため、シニアになってからは、年に2回程度定期検診を行うことを前提として、変化が見られるようなら、まずは犬の行動や症状の要因がないかなどを確認することをオススメします。最近では症状を緩和する内服薬や処方食などもあります」
緩和と介護すぐにでも始めたいこと
+午前中の日を浴びる

午前中の太陽光は、体内時間を調節するメラトニンというホルモンの分泌を促します。
これは俗に「睡眠ホルモン」ともいわれ、睡眠と日中の活動のリズムを適切に整えてくれます。
午前中の日光浴や散歩をルーティーンとしていくことで、昼夜が逆転しがちな状態を改善していく助けになるはずです。
+四肢へ刺激を与える
寝たきりになったり四肢が不自由になってきたら、かかりつけ医や介護のプロのアドバイスにしたがって、四肢のストレッチングやリハビリを行いましょう。
四肢への刺激は筋力やバランスの衰えや緩和を助けます。
+適度な運動を続ける
体力の維持やストレスの発散のためにも、動けるうちは適度な運動を行いましょう。
リードはハーネスにつけることで負担を軽減。また、歩行器などの導入を考えるのもいいでしょう。
+オヤツの探索行動

ノーズワークマットなどを用い、オヤツや食事で嗅覚への刺激を与えます。
嗅覚はシニアになっても使いやすい感覚器。嗅覚は脳への刺激にもなり、ごはんが大好きな犬には憩いの時間になります。
犬と自分のケアを
認知症と診断された場合は、薬の投与(薬物療法)の他、サプリメント、食事療法、環境面のケアなどを総合的に行っていきます。認知症は加齢による症状なので、治るということはなく、状態の進行を緩めていくためのケアとなります。大事なのは犬の状態を受け入れて、より快適に過ごせるように整えることです。
まず、寝場所とトイレ、食事・水飲み場を近くし、移動距離を短くします。また、部屋の角でつきあたって進めなくなったり徘徊がある場合は、ケガの予防も兼ねて、ソフトな素材のする円形サークルを設置など角がない空間をつくります。
ふらついたり、転んだりするならゴムのついた靴下を履かせたり、カーペットをしいて衝撃を吸収するようにします。動けるのであれば適度な運動を行い、犬のストレスを発散しましょう。どれもかかりつけ医との連携やアドバイスが欠かせません。また、介護疲れはいい結果を生まないので、一人で背負わずプロのケアサービスを頼るなどで、自分の心身を整えることも重要です。
犬とのかけがえのない時間を、楽しく過ごせるように心がけていきましょう。
出典:『RETRIEVER』Vol.105/いつまでも優しい気持ちでレトの認知症と向き合うために
*1 監修=小澤真希子 おざわまきこ。獣医師、博士(獣医学)、獣医行動診療科認定医。東京大学にて犬の認知症 (認知機能不全症候群)の病態研究を行い博士号取得。現在は日本大学生物資源科学部獣医保健看護学科の専任講師として犬と猫の認知症研究に取り組んでいる。