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2026.04.30

シニア犬の尊厳を保ち、最期までいいパートナーでいるために《RETRIEVER + POCHI archive058》

シニア犬の尊厳を保ち、最期までいいパートナーでいるために《RETRIEVER + POCHI archive058》

イラスト=花島ゆき
構成・文=RETRIEVER編集部

「RETRIEVER」は、ゴールデン、ラブラドール、フラットコーテッドを中心とした、レトリーバー種の専門誌。
陽気で明るい性格は家族に笑いをもたらし、豊かな表情は言葉が通じなくてもコミュニケーションを可能にしています。
何と言っても、人間に対する愛情がとても深い。そんな犬種との暮らしを紹介する「RETRIEVER」さんの素敵な記事をピックアップしてPOCHIバージョンでご紹介。
犬種が違っても読めばきっと皆さんのドッグライフがより充実したものになるはずです。(POCHI編集チーム)

■ 犬の気持ちを理解し、日々の欲求を満たしてあげること

犬は7歳からシニアといわれ、以前は10歳を超えると長生きとされてきましたが、近年は12歳以上まで元気に暮らす犬も増えています。とはいえ、長寿化が進む中で、「ただ長く生きることが幸せなのか」という問いも生まれています。大切なのは、生き物としての尊厳を保ちながら、元気に過ごせる時間をできるだけ延ばすことではないでしょうか。犬は人を精神的に支えるだけでなく、世話を通して生きがいや人とのつながりも与えてくれる存在です。しかし、どんなに大切な愛犬とも別れの時は訪れます。だからこそ犬の気持ちを理解し、日々の欲求を満たしてあげることが飼い主の大切な役割です。今回は動物看護師の清水佐知子先生と、獣医師の濱野佐代子先生に話を聞きました。

シニア犬の尊厳を理解すること

清水先生は、シニア犬に対して「お年寄り扱いしすぎないこと」が大切だと話します。飼い主が「もうできない」と決めつけてしまうと、犬が本来できることまで奪ってしまう可能性があるからです。例えば、まだドライフードを食べられるのにペースト状にしてしまうと、食べる楽しみを失わせてしまうこともあります。また、高齢だからと諦めていた旅行に連れて行ったところ、喜んだという例もあります。もちろん無理は禁物ですが、犬とコミュニケーションを取りながら、楽しめる範囲でさまざまなことに挑戦させてあげることが大切です。そうしたかかわりが、犬らしい生活をできるだけ長く続けることにつながります。

高齢になった犬に向き合おう

濱野先生は、犬が年を重ねると飼い主は最期の時を意識しがちだと話します。ペットの死を思った時から「グリーフ(喪失の悲しみ)」は始まるといわれ、飼い主の感情を犬は敏感に感じ取ります。だからこそ老いを悲しむだけでなく受け入れ、これまで以上に一緒の時間を楽しむことが大切だといいます。また清水先生は、シニア犬になると「できなくなったこと」に目が向きがちですが、「まだできること」に目を向けてたくさんほめてあげてほしいと話します。飼い主が喜ぶ姿は犬の喜びにもつながるため、いい循環が生まれます。シニア期こそモチベーションを高めるかかわりが大切です。

健康寿命を少しでも伸ばすためにできること

清水先生は、シニア期に多く見られる後ろ脚の筋力低下を防ぐため、足腰が弱る前から筋力トレーニングを行うことが大切だと話します。散歩の途中で階段や坂道を歩いたり、ドッグランや自然の中で思い切り走ったりすることで、若いころの“筋肉貯金”がシニア期の体を支えてくれるようです。また犬の体調にはストレスも影響するため、飼い主のストレスを敏感に感じ取るシニア犬にとっては、飼い主自身が幸せでいることも重要。濱野先生によれば、年齢による変化や異変に気づくためにも、信頼できて何でも相談できるかかりつけの動物病院を見つけておくことが大切です。

最晩年を快適に過ごすための環境づくり

清水先生は、犬に異変を感じた時は、病気や痛みによるものなのか、老化による変化なのかを早めに動物病院で診てもらうことが大切だと話します。大型犬は関節炎が多く、痛みを我慢してしまう犬もいるため、日ごろからカラダを触って痛い場所がないか確認してあげることが重要になります。老化による慢性的な痛みは、薬や関節を温めることで和らげられる場合もあります。また、筋力が弱ると床で足が滑ったり、排泄や食事がしにくくなったりするため、生活環境にも配慮が必要です。階段の上り下りが負担になる場合もあるため、段差を減らすなど安全に過ごせる工夫を心がけましょう。

いつか訪れる悲しみを乗り越えるために

愛情が深いほど犬を失った時の悲しみも大きくなると話す濱野先生。犬を亡くした飼い主からは「もっとこうしてあげればよかった」という後悔の言葉をよく聞くそうですが、それは犬を大切に思う責任感の表れでもあります。大切なのは、犬が老いてきたという事実から目をそらさず受け止め、今できることを精一杯してあげること。犬が何を求めているのかを一番理解できるのは、日々ともに暮らす飼い主です。将来を思うと悲しくなることもありますが、家族や友人と気持ちを共有することも大切。日常の小さな喜びを犬と分かち合いながら過ごす時間が、やがて悲しみを温かく包み込む思い出になるのです。

出展:RETRIEVER vol.117/「シニア犬の尊厳を保ち 最期までいいパートナーでいるために」

*1 監修=清水佐知子/濱野佐代子 清水佐知子(しみずさちこ)。動物看護師として 13年働いた後、老犬介護やリハビリなど、犬の訪問ケアを行う『ドッグケア スマイル』をスタート。犬の介護ゼロを目指したトレーニングやケア、食育の講座も開催している。 濱野佐代子(はまのさよこ)。日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科教授・博士(心理学)。獣医師、公 https://www.dogcare-smile.com/