- コラム
- 巡る季節のハーブ便り
2019.01.21
ジャーマンカモミール
【この特集の資料提供】
*1 Urara Herb Design Lab. フィトセラピスト 堂山うらら氏:現在、ホリステックケアアドバイザーとして人と犬へのフィトセラピーを中心としたカウンセリングや、人と犬のクオリティ・オブ・ライフに役立ち、犬と一緒に楽しめるフィトセラピー講座、ハーブ講座を行っている。
この時期は寒さが厳しい反面、ふと夜空を見上げると空気が澄んで星が美しく見えるのが嬉しいですね。
冬の体温維持に必要なエネルギーをつくるため、いつにも増して犬の食欲も旺盛になりますが、 年末年始は犬もなにかとご馳走を食べる機会が多かったり、寒さによる身体機能の低下や寒さ自体のストレスから胃腸が疲れ気味になることがあります。
内臓の働きが悪くなると、寒さや病気に対する抵抗力が落ちてしまうことがあるため、しっかりと胃腸をいたわり、 身体を温め、お散歩など適度な運動で体を動かすことが犬にとっても大切になります。
あたらしい年のスタートにぴったりのハーブは、世界中で最も親しまれ、イギリス童話「ピーターラビット」のお話の中にも登場する「ジャーマンカモミール」です。
今月のオススメハーブジャーマンカモミール
●ジャーマンカモミール
学名:Matricaria,chamomilla
別名:カミツレ 科名:キク科
使用部位:花・葉部
有効成分:
テルペノイド(アズレン、カマズレン、α-ビサボロールなど)、フラボノイド(アピゲニン、ルチンなど)、コリン、クマリン、多糖類、タンニン、精油など
注意事項
*1 ※子宮収縮作用があるため妊娠中、授乳中の犬への使用量は控えめにしましょう。
ジャーマンカモミールの歴史
ジャーマンカモミールは、紀元前2000年頃から薬用として栽培され、ギリシャ語の大地「khamai」とリンゴ「melon」に由来しています。
別名「大地のリンゴ」とも呼ばれ、学名のMatricariaはラテン語のMatrix(子宮)やMater(母)を意味すると言われています。
中世には、床に撒くハーブとして重用され、悪臭や感染を防ぐためのお香として、 また、赤ちゃんを守り健康を保つため、ベビーベットの上にカモミールの束をいくつも吊るすという風習もあったんですよ。
19世紀頃にオランダやポルトガルから日本に渡り「カミツレ」という名前で親しまれ、 日本薬局方にも第7改正(1962年)まで収載されていました。
カモミールは「ジャーマンカモミール」と「ローマンカモミール」の2種類ありますが、 一般的にハーブティーとして用いられているのはジャーマン種の方なんです。
それから、園芸用でも特に好まれているハーブですよね。
■ ひと言メモ(ガーデニング)
ヨーロッパではジャーマンカモミールは「植物のお医者さん」と称され、庭先のコンパニオンプランツとして親しまれています。
例えば、カモミールはとてもアブラムシがつきやすい植物なので、 バラにアブラムシが付かないように、傍にカモミールが植えられたり、 キャベツや玉葱を美味しく、また収穫量を増やすために傍に植えられたりしています。
それから、弱った植物の傍にカモミールを植えると、その植物が元気を取り戻すとも言われているんですよ、ぜひ試してみてくださいね。
ジャーマンカモミールの体にいい成分ってなに?
カモミールの主成分は、独特の香り成分であるアズレンを含む美しい青色の揮発性精油です。
カモミールについてはどの成分がどのように働くかについて、多くの科学的な研究がされています。
例えば、抗アレルギー、抗炎症、鎮痙、痒みの緩和、皮膚組織再生作用がある「カマズレン」、 抗菌・抗真菌や抗炎症、鎮痙作用がある精油成分「α-ビサボロール」、
精油蒸留の際にカマズレンに変化するセスキテルペンラクトンの「マトリシン」、
鎮静、鎮痙作用に優れているフラボノイドの「アピゲニン」などが代表的です。
「α-ビサボロール」は、皮膚のローションなどでよく用いられています。
また、口内炎や歯肉炎に口内洗浄剤としても使われています。
「アピゲニン」は、ジャーマンカモミールなどのような白色や黄色の花の花弁に含まれるフラボノイドの一種で、 神経系に働きかけます。不安をやわらげ、緊張、ストレス緩和に役立ちます。
「ルテオリン」は、抗酸化物質であるフラボノイドの中でも抗炎症・抗アレルギーに優れているといわれ、 神経細胞などの細胞膜にもなる成分「コリン」の主な働きには、血管壁へのコレステロール沈着予防、肝炎や脂肪肝予防します。
ジャーマンカモミールはどんなときに利用しますか?
カモミールのドライハーブの花部は伝統療法として広く用いられ、 消化や婦人科系のトラブル、冷え、不眠など幅広く利用されていて、現在でも家庭の定番ハーブになっています。
もちろん、犬たちの健康を保つためにも、是非、常備していただきたいハーブのひとつです。
特に神経と消化器用として優れ、不安や動揺を鎮めることから、緊張やストレスを感じ、興奮、過敏傾向にあり、 それによる消化器系トラブルをおこしやすい犬の予防に利用できます。
例えば、怖がりの犬が外出をしてその翌日にはお腹を壊してしまう、 お留守番が苦手な犬が長時間のお留守番をしたあとにお腹を壊してしまうといったように、 何か過度のストレスがかかった後に下痢や便秘などの不調が起こってしまう場合は、カモミールをオススメしています。
胆汁と消化液の分泌を促進し、弱った消化機能を高める働きもするので、食欲がない犬にもいいですね。
膀胱トラブルになっている犬の場合、カモミールの役立つ成分が尿路を通じて炎症に影響を与えながら排出されるので、 冬にかかりやすいオシッコトラブル予防にも役立ちます。
そして、同じように口腔内の雑菌予防にも役立つので、口臭が気になる犬にも利用できますね。
オススメの使い方を教えてください。
ジャーマンカモミールティーをいれた時にお部屋に広がるホッとさせてくれる香りは、犬たちにもとても人気があるんですよ。
また、ストレスの緩和にも役立ちますが、今の時期、冷えを温め血行を促進し関節の痛みやこわばりの緩和にとてもいいんです。
身体の冷えの緩和や首や肩の凝り、眼精疲労などの緩和に後頭部の下にあるくぼみ(盆の窪)をしっかりと温めるととてもリラックスできて気持ちがいいですよ。 一緒に楽しんでみてくださいね。(堂山うららさんが指南!ハーバルティーを使ったスキンケアのアイデア。もぜひご覧ください。)
ケア用につくったハーバルティーが余ってしまったときは、密閉容器で冷蔵庫保存して(保存期間は一日)、 お散歩から帰ってきた時に少し温めて足先や全身を拭いてあげることで皮膚と被毛を清潔に保ち、 毛艶アップにも役立ちます。皮膚の乾燥が気になる時には、 ハーバルティーに少量の植物性グリセリンをプラスしてあげると保湿効果がアップします。
■ こんなときにオススメ
今回ご紹介したジャーマンカモミールは特に以下の場合にオススメしたいハーブです。
・ 体が震える犬に
・ 神経質な犬のリラックスに
・ 胃腸の調子が心配な犬に
・ 口臭が気になる犬に
・ 尿をたくさん出したい犬に
※子宮収縮作用があるため妊娠中、授乳中の犬への使用量は控えめにしましょう。
心と身体に働きかける万能なカモミールの花言葉は、感情の安定を回復し、 神経系を支える優れた力があることと、どんな環境でも根づきやすく、生命力にあふれたハーブであることから「逆境における活力と忍耐」です。
新年のスタートに、カモミールの心地良い香りに包まれ、身体を温め、胃腸をいたわりつつ、 その強さと生命力を取り入れ、たくさんの犬たち、皆様にとって素敵な一年となりますことを願っております。
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フィトセラピスト 堂山うららさん
さぁ、ハーブのやさしいチカラをかりて、今よりもっとHappyな毎日をスタートしましょう。
ジャーマンカモミールを使ったアイテムご紹介
*1 ┗ POCHI DELICATESSEN Urara Herb Design Lab. Digestive Herbs
*2 ┗ ドクターハーヴィーズ マルチビタミン&ミネラルサプリメント
*3 ┗ ドクターハーヴィーズ ハーバルシャンプー