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2021.01.01

POCHIビジョンな仲間たち 一般社団法人Do One Good代表理事 高橋一聡さん (第2回)

日本で暮らす犬のためにできることを考え、それを着実に形にしていく。POCHI が注目する粋な人物をご紹介します。(POCHI編集チーム

■ 一般社団法人Do One Good代表理事 高橋一聡さん

目標が見えたら、どうすればたどり着くかを考え、走るのをやめない、生粋のラガーマン。
高橋一聡さんの話を聞いていると、そんな言葉がしっくりきます。高校時代にラグビーを始め、大学では日本一を三度経験、卒業後は伊勢丹ラグビー部で活躍するなど輝かしい経歴をもつ一聡さん。
しかし、選手引退後に一聡さんが選んだのは「ラグビー」ではなく「犬」という未知のジャンルでした。現在は一般社団法人Do One Good代表理事という肩書きで活動していますが、その活動について、ラガーマン時代の経験なども含めて語っていただきました。

ペット業界を知らないことには 何も始められない。

---ラグビーから犬に関係する仕事に転身されたわけですが、不安はなかったのですか?

不安というよりは、ペット業界というものを何も知らないので、いろいろ自分なりには調べていたんですよ。ジャパンケンネルクラブはラグビー界に置き換えると、日本ラグビーフットボール協会のような存在ですよね(笑)。その下には色々な活動をしている組織があるということも勉強していって。それで、いろんなところに話を聞きに行っていたんですが、ちょうどその頃に知り合ったグルーマーさんを介して紹介していただいたのがPOCHIさんだったんです。

 

---そうでしたね。

そういったつてもできていたので、たとえば、できるかどうかはわかりませんが、POCHIさんに「こんな奴がいるよ」ってジャパンケンネルクラブに紹介いただいて、ペット業界に入っていくという選択肢もあったんですが、自分的には初めて参入する業界ですし、やっぱり一番下から業界を見上げて、自分なりに何かを感じ取っていくことが正しい選択だと思ったんです。それに、ラグビー時代のようにプロセスを楽しむことが性に合っているかなと。

 

---一聡さんらしい選択ですね。

僕が当時関わっていたペット業界の人は、ティックとタックがお世話になっているグルーミングサロン、動物病院、あとはフードを買うペットショップくらい。それで、直に飼い主の声が聞けるのがグルーマーさんなので、ペット業界を知っていくにはいいかなと思い、グルーマーの資格を取るために専門学校に見学に行ったりしていました。

 

---行動力がすごい。

ただ、専門学校に行っても、生徒から「こんにちは」とか挨拶されるんですよ。これ、もしかして父兄か先生に間違えられてる?と思って(笑)。ちょっと違和感もあったので、それならいっそのこと「アメリカに行っちまえ」ということで、10ヶ月のグルーマーのカリキュラムを受けに行って、結構頑張って5ヶ月で資格を取って帰国しました。

 

---日本なら時間をかけるところを、最短距離で。

はい。それで、帰国してからは一時グルーミングサロンで働きました。

 

---なるほど。

グルーマーさんたちと同じ視線で働かせもらった時間は、「自分にできることは何か」をいろいろ考える時間にもなったと思います。そして、グルーミングサロンで10ヶ月ほど働いて、自分の考えが固まってきたところで、独立してゲージを使用しない24時間営業のペットホテルを世田谷でスタートさせたんです。ちょうどその時に「ポチビジョンな仲間たち」という犬の関わる人の集まりの場もつくったんです。

 

---どうしてポチビジョンというネーミングにしたんですか?

ペット業界を知ろうと思って犬の専門家と言われる人たちに会いに行ったんですが、その人達の話を聞いていると腑に落ちないことがたくさんあったんです。たとえば、「犬は狭いところが好き」とか。それって、外敵がいるところだったらわかるのですが、日本のマンションでその考え方いる?みたいな、疑問が湧いてきたんです。

 

---たしかにそうですね。

だから、「過去のマネゴト要らない 欧米のマネゴト要らない ニッポンスタイル」っていうことを突き詰めて考えようと。そこで日本の犬を代表する名前、“ポチ”の未来を勝手に想像し、創造しようというコンセプトで「ポチビジョンな仲間たち」という名前にしたんです。

 

---そういうことだったんですね。

そうすると専門家と呼ばれる人ともフラットな関係で活発な議論を戦わせることができますよね。皆さん、自分の考え方やアプローチを持っているので、意見が異なることなんてしょっちゅう。僕は仲良しクラブになって皆が同じことを言い始めたら全然面白くないから、どんどんやりあって欲しいと思って一緒に議論をしていました。これって僕がラグビーで学んだことにも通じるんですが、ガツガツやりあった後に、終わったらアフターマッチファンクションでお互いにエールを交換し合う。最終的には、みんな日本の犬のことを考えている仲間なんですよってね。

 

---まさにアフターマッチファンクション。

そう。そのコミュニティの中で、僕はいろんな人の話を聞くことがすごく楽しくて、新しい情報が次々と入ってくるんです。

 

---一聡さん的には色々ペットのことがわかってこれ以上ない場ですね。色々な人の考え方は、当時始めたペットホテルにも生かせたのでは?

そうですね、僕がやっていることに必要な情報を選択していきました。ペットホテルからゲージをなくしたり。

 

---幼稚園のような感じですね。

幼稚園というと少し僕が考えているイメージとは異なっていて、自分が家をあける時に、大切な子どもを幼稚園には預けませんよね。僕はお客さんから預かった犬を「孫犬」と呼んでいて。僕は犬たちのじいちゃんになろうと思ったんです。だから、犬の専門家ではないけれども、預けてくれた犬のことを誰よりも知っていたら、預けてくれる飼い主さんはやっぱり安心だと思ったんです。

 

---その犬のことを誰よりも知ろうと。

はい。だから、うちに預けてくれた犬のことは誰よりも詳しいですよ。犬種じゃなくて、1頭1頭の専門家という感じ。それに、この商売を続けていくと孫犬たちもたちもどんどん増えていくので、飼い主さんよりも犬に対する情報量が豊富になってくるんです。だから、飼い主さんが獣医師さんに相談するときも僕の方が説明がうまく、獣医師さんから受けた内容の理解度も高いので、じいちゃんが代わりに聞いてやるっていって、病院についていくサービスもやっていたんですよ(笑)

 

---預かりというコアサービスを入り口にして、いろいろやられてたんですね。

はい。飼い主からのオファーはできる限り受けました。面白かったのは飼い主の結婚式に列席したことです。

 

---そんなことまで!

家族である愛犬を、飼い主の披露宴に参加させたいということで、犬のお世話を兼ねて、親族席に列席させてもらったんです。

 

---おじいちゃんとしてですね(笑)

はい。ただ、私が参加すると目立ちすぎるので、ペットホテルのドッグライフアテンダント(預かりのスタッフのこと)の女性に、おばあちゃんとして参加してもらいました(笑)

 

---笑。孫犬が増えるとオーダーも多様ですね。ちなみに以前POCHIのカタログで登場してくれた、ダックスフントも孫犬ですよね?

クッキー!こいつは、僕が預かった一番最初の犬です。すごくハッピーな犬なんですが、知らない人にはすごく吠え続ける。ただ、ガツンと説教すると性格が変わっちゃうかもしれないから、そこはケアしなきゃいけなかった。クッキーの情報をノートに全部書き込んで、それをスタッフにもしっかり共有していました。

 

 

■色々なジャンルの専門家との交流

一聡さんの孫犬第1号、クッキー。一聡さんにとってもさまざまなことを教えてくれた存在でした。

 

---トレーナーのような視点ですね。

トレーニングのやり方って天罰タイプがあったり、フードを使ったり、いろいろありますよね。それこそ吠える犬には天罰式がいいとか型にはめるという考え方もあると思うのですが、僕は犬の個性にマッチするやり方があると思っているんです。これはこうじゃなきゃいけないという固定観念的な考え方が嫌いなんです(笑)。だからこそ、僕には「ポチビジョンな仲間たち」で知り合う犬の専門家たちのいろいろな考え方が必要だったんです。

 

---ポチビジョンは今はやられていないんですか?

もうやっていないですね。やっていたのは3年半くらいで回数にすると10回くらいかな。回数重ねるごとに人が増えてきちゃって、最初は数人だったのが、最後は350人くらいまで膨らんじゃいました。

 

---すごい!

ただ、メーカーの人が潜り込んで名刺とか配り始めたんですよ。僕がやりたかったのはそういう集まりではなかったんです。人も多すぎて僕の声も届かなくなってしまい収拾がつかなくなったので、それきりですね(笑)

 

---残念ですね。

まぁ、そうですね。ただ、ポチビジョンでせっかく知り合った専門家の人たちですから、飼い主さんと専門家をなんとかつなげられないかと思ってつくったのが「Dog Life Design(ドッグライフデザイン)」という企画です。それまでは僕がつなぎ役になっているところもあったので、今度は飼い主さんが自分から情報を取りに行けるようなコミュニティをつくりました。

 

---Webページもありますね。(http://doglifedesign.com/

これはいろいろな専門家の人たちが1箇所に集まったようなカタログのような場です。パレットのようにいろんな色を持った先生が並んでるイメージですね。たとえば、トレーナーさんに1時間カウンセリングをお願いすると10,000円とか掛かっちゃうんですよね。それって相性が合わないと思ったらムダ金になりますから、もっと安い金額で体験的に受けられる場という感じですね。

 

(続く)