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2021.03.10
【原材料】飼育・養殖ものにも魅力がたっぷり。改めて知りたいこんなメリット
スーパーなどで見かける食材の中には、同じ魚でも「天然ブリ」と書かれたものと「養殖ブリ」と書かれたものがあります。これは読んで字のごとく、自然の中で育った魚と人によって育てられた魚ということを表しています。
肉や卵などの畜産物ではほとんどが飼育されたもので、たまに「ジビエ」のような形で自然の中で育った鹿やイノシシの肉が手に入ることもあります。
なんとなく「天然」という表記は、自然の中で育ったという価値観が加わり高級なイメージがあったり、美味しいと感じて、特別な存在のように感じる人も少なくないと思いますが、養殖や飼育された食材にもいいところがたくさんあります。
今回は、養殖・飼育と食材についてのお話をご紹介します。
ご存知ですか?養殖・飼育された食材のこんなメリット
養殖や飼育された食材には、飼育する養殖業者さんや畜産農家さんたちによって安全でおいしく食べられるさまざまな工夫がされています。
■安定供給できて、いつでも質の良いものがお手頃に手に入る
天然ものの食材には旬があり、美味しい時期がある程度決まっているだけではなく、ものによっては全く手に入らなくなってしまったり、時期によっては食べるのに適さないというケースもあります。
こういった問題を補う存在が養殖・飼育された魚や肉です。
もちろん、時期によって脂の乗りなどの食べごろはありますが、基本的には1年を通して安定して手に入れることが出来るようになっています。
天然ものと比べると品質にばらつきが少なく、大きさや味わいなどに個体差が付きにくいこともポイントです。このことは、多くの食材を使用する必要がある飲食店や給食だけではなく、ドッグフードの製造においても大きなメリットになっています。
■栄養面での管理ができ、安全性が保証されている
品質が安定しているため、食事や栄養の制限が必要な人でも安心して食べることができるという側面もあります。自然界で育った動物や魚は、食べてきたものや育ってきた環境がどうしてもまちまちになり、物によっては脂がとても多くなったり、逆に栄養が不足しているものもあったりといったことが起こり、栄養管理においてもどうしても微妙な差が生まれてしまいがちです。
また、自然界では動物も魚もそれぞれ自由に食事をしているので、「今まで何を食べてきたのか」は分かりませんし、「これまでにどんな場所で育ってきたのか」も予測の域を出ることはありません。
そういう意味でも、養殖された魚や飼育された動物は、ある意味で「身元が分かる」というメリットがあります。
■寄生虫や病気を防ぐ取り組みが行われている
自然の中で育った野生動物は、栄養状態や病気、寄生虫などの健康管理ができないので、養殖や飼育された肉と同等の安全性が保証されていないという面があります。
一方、養殖や飼育されている魚や動物は、寄生虫や病気を防ぐような管理がなされています。
サーモンは、天然のものしか手に入らなかった頃は寄生虫や病気の心配から、生で食べることができませんでしたが、養殖の技術が発達したことにより生で食べることが出来るようになり、寿司や刺身の定番になりました。
肉でも生で食べることが出来る馬刺しも、農家さんが厳しく衛生的な環境を維持しているからこそ、生で食べることが出来るのです。
■美味しくなる工夫がたくさん
最近では、科学技術の発達によって養殖や飼育に役立つ技術もどんどん発展しつつあります。
例えば、養殖する魚をより美味しく育てるために成長段階に合わせて適切な栄養をしっかり取れるよう、食事に工夫を凝らすようになっています。
また、天然ものの魚と比較して身が引き締まっていないといわれがちな養殖魚のために、水流を発生させるプールを設けて自然に限りなく近い環境を作り、運動量を確保するなどの取り組みも行われています。
畜産農家でも、以前よりも質の高い飼料を与えるだけではなく、ハーブや野草などの自然由来の食材を取り入れたり、スーパーフードを動物たちの食事にも取り入れるほか、動物同士のストレスを緩和するため、飼育小屋の明かりや温度・湿度の管理を行い、環境づくりが進められています。
■農家さん、養殖業者の意識
少し前から、生産者の名前(中には顔写真まで)が記載されることが多くなってきています。このことにより、より一層安全でおいしい食材を届けようと努力をする生産者が増えてきています。
育てた魚や肉への責任や愛情もより深くなり、丁寧に育てられた食材を手に入れることができるようになってきました。
育てた人々の顔が見える、ということも安心感につながりますし、感謝の気持ちにも結びつきますよね。
■ ちょっと面白い、こんな農業・漁業
少し前から、食事に工夫をすることでより栄養成分を豊富に含む肉や魚を作る取り組みが行われるようになりました。
例えば、サーモンにはオメガ3脂肪酸のEPAが含まれていますが、食事や飼育環境に特殊な工夫を凝らすことでEPAをより多く含むサーモンを育てている養殖業者も登場しているようです。
食材としてだけではなく、サプリメントなどでも役立ちそうな養殖・飼育の技術はこれからもより注目を集めていくことになりそうですね。
安全性について
養殖や飼育された魚や肉には、抗生物質や抗菌剤、薬剤が残留しているなどの懸念から「本当に安全なの?」と疑問を持つ人も多いようです。
しかしそのイメージも徐々に払しょくされつつあります。法律や管理体制についてご紹介します。
■使用される飼料・薬への規制
日本国内で魚や動物を育てるために使用される飼料には、農林水産省によって使用することが出来る原材料や栄養成分に基準が設けられています。
この基準に合致しないものは飼料として製造、販売、輸入することができないだけではなく、食用となる魚や動物に与えることも原則できないことになっています。
また、抗生物質や抗菌剤などの薬剤は、使用できるものも、使用する量や時期も定められており、過剰に残留しているということはなく、養殖場や飼育場で病気が発生してしまった場合などは、薬を投与する場合もありますが、これらのケースでは薬をやめた後、出荷めでの機関についても明確にルールが定められています。
■残量制限について
また、実際に出荷された魚や肉などに抗生物質や抗菌剤、農薬を含む医薬品の成分が含まれていないかのチェックも常に行われています。検査の結果は厚生労働省などで公開されていて、違法量が含まれていたものはその都度情報公開が行われています。
国内で生産されたものに限らず、輸入された食品や加工品にも同様の検査が行われていて、輸入のたびに成分のチェックが必要となり、この検査はすべての食品、食材、加工品に行われています。
ですから、養殖・飼育された食材だから薬品が多く含まれている、ということはなく、天然ものであっても養殖であっても、いずれにせよ違法な量が検出されると発売することはできなくなっています。ただし、一部のジビエなどでは検査を受けずに市場に出回ることもあるので、注意が必要かもしれません。
おわりに
養殖された魚や飼育された肉には、人の手が加わっているからこそ、美味しく安全に安定した供給ができるよう、さまざまな工夫が凝らされています。
これらの工夫は、自然で育った天然の魚や、ジビエ肉などでは実現することが難しいものでもあります。こういったメリットについて、改めての見通しが必要なのかもしれません。