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2022.11.28
犬に大豆はアリ?なし?ポチのスタッフが改めて考えてみました。
ドッグフードや犬の健康について調べていると、「これって本当?」と疑わしく思うような情報や、「〇〇は危険!」と必要以上に不安をあおるような情報を目にすることが多くなりました。
色々な人の意見に目を通すことはとても重要ですが、見ているうちに「あれもダメ、これもダメで何を食べさせたら良いのか分からない…」と混乱し逆に不安が募ってしまいませんか。
そこで、今回はポチのコンサルティングサービスも担当しているペット栄養管理士が、犬に与えても大丈夫/危険という2つの意見がある食材の中から、「大豆」を中心とした豆類についての情報を改めて考えてみました。
ドッグフードや犬のオヤツ選び、手作り食にチャレンジするときなどに参考にしていただけると嬉しいです。
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POCHIのペット栄養管理士 岡安
ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。
犬に大豆を与えても大丈夫なの?
食事療法食にも使用されている食材であり、豊富な植物性タンパク質を含んでいる大豆は、犬に与えても基本的には問題ない食材です。ただ、療法食では加水分解されている大豆が使用されるなど、調理の仕方によっては犬が上手く消化できないことがあるので、消化しやすい形にしてあげることが重要になってきます。
調理工程としては、乾燥大豆は水を加えて加熱する必要があります。「大豆水煮」などの加工品や缶詰などであれば問題ありません。ただし、注意が必要なのが、大豆の表面を覆う薄皮です。主に食物繊維でできている薄皮は、犬は上手く消化できないため、薄皮を取ったり、細かく粉砕したりパウダー状にするなどの調理を行う必要があります。
また、納豆や豆腐、おからなどの加工品であれば消化されやすいです。
インターネット上で見かける大豆のコワい話
以前は「大豆を犬に与えると、お腹にガスが溜まり、胃捻転や胃拡張に繋がる」という意見が見られました。これって本当なのでしょうか?
結論から言うと、明確な因果関係は認められていません。
草食動物は植物から効率よくタンパク質やエネルギーを作り出すために、胃の中にたくさんの微生物を持っています。この微生物が豆類を食べることによって胃の中の微生物が発酵を起こすことがあります。豆類を食べてガスがたまる、というのは草食動物ではよくあることです。
犬の場合は鼓腸症と呼ばれるお腹の中にガスがたまる病気が見られることがあります。この病気も消化器系の中に大量のガスがたまることでさまざまな症状が見られます。大型犬に多い腸捻転、胃捻転との関係も指摘されている病気ですが、一時期、大豆を与えることが犬の鼓腸症の原因の一つになっているといわれることがあったようです。
しかし現在では、大豆自体は適切に処理したものであれば問題なく与えられる、というのが一般的な見解となりつつあるようです。
大豆の役立つ栄養素
大豆には犬の健康維持に役立つ成分が含まれています。代表的なものをいくつかピックアップして、上手く取り入れるために役立つ調理法なども合わせてご紹介いたします。
■植物性タンパク質
大豆は、「畑の肉」と呼ばれるほど、タンパク質が豊富な食材です。大豆に含まれるタンパク質は植物性タンパク質であり、肉や魚に含まれる動物性タンパク質とは異なります。そのため肉や魚にアレルギーがある犬にとっては重要なタンパク源となります。
また、大豆などの植物性タンパク質にはリンも含まれていますが、植物性タンパク質に含まれるリンはフィチン酸と呼ばれる物質と結合しているために、消化管からの吸収率が低いという特長があります。
これは、同量のリン含有量の植物性タンパク質と動物性タンパク質が含まれる食事を数日間続けた時、植物性タンパク質の食事を続けた人は動物性タンパク質の食事を続けた人と比べて血液中に含まれるリンの濃度が低かったことがあります。
また、人間の腎臓病の患者に植物性タンパク質を70%含む食事を4週間続けて食べてもらったところ、尿から排出されるリンの量は減少したことが報告されています。
これらの結果から、大豆に含まれる植物性タンパク質は腎臓のケアを行ううえで重要な「リン」のコントロールに非常に有用な成分と考えられるようになっています。
■大豆イソフラボン
人間用の健康食品でもお馴染みの大豆イソフラボンも、犬の健康維持に役立ちます。
大豆イソフラボンは、大豆の胚軸(生長すると芽になるところ)部分に多く含まれる抗酸化物質の1種で、細胞にダメージを与える「活性酸素」の働きを抑えてくれる優れものです。
また、犬の自律神経系の健康維持にも役立つといわれていて、季節の変わり目やストレスが気になる時などにもぜひ取り入れたい栄養素のひとつです。
ちなみに、大豆イソフラボンは女性ホルモンに近い働きをすることが知られています。そのため、過剰に大豆イソフラボンを含む食事を続けていると、内分泌系に何かしらの影響が出る可能性がある、という指摘もあるようです。現段階では具体的に大豆イソフラボンによって犬の健康被害が出たということはないようですが、内分泌系の持病がある犬などでは避けた方が無難かもしれません。
大豆に含まれる役立つ栄養を取り入れるためのポイント
大豆には犬の健康維持に役立つさまざまな栄養素が含まれていますが、いずれも大豆をしっかり消化吸収できて初めて役立つものです。
犬が大豆を消化できるようにするためには、薄皮を取り、細かくすりつぶしたりパウダー状にすることが必要。
その点、豆腐や豆乳、おからなどの加工食品であればその手間も省けて使いやすいです。
納豆も、ひきわり納豆などで粒が細かくなっているものであればより消化しやすくなります。
■ ちょこっとポイント。
プレミアムフードの原材料には大豆が使われない傾向が見られます。
それは今から25年ほど前に新規参入メーカーが、それまで君臨していたプレミアムフードの原材料である脱脂大豆を良くない原材料として攻撃した影響ではないかと思われます。
確かに脱脂大豆は大豆油の絞りかすであり、通常人間の食品にはなりません。カテゴリー的には大豆油副産物として家畜のえさなどに使われます。副産物=悪といった構図が、畑のお肉と言われる植物性タンパク源の代表選手である大豆が嫌われている理由としてあるのかもしれません。
おわりに
今回は、ドッグフードの原材料や犬の手作り食に使用する食材として、大豆をチェックしていきました。以前は何かと悪者にされることが多かった大豆ですが、最近では植物性タンパク質の重要性などを再評価する機運が高まっています。適切な方法で調理された大豆であれば、犬の体調管理に役立てることも可能です。大豆だから、と情報に左右されず、どんなものならきちんと消化吸収できるのか、どのように役立つのかを理解して、うまく活用していってはいかがでしょうか。