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2023.07.26
皮膚、関節のお悩みにEPA。犬の健康に関する働きを解説します。[#ペット栄養管理士]
犬の健康維持に役立つ成分は種類も働きもさまざま。うちの子に少しでも長く元気で過ごしてもらうために、いろいろな栄養を取り入れていきたいけれど「いつから始めるべき?」「どれくらい与えれば良いの?」「そもそもどんな成分なの?」と、気になることもちらほら。
そんな犬の健康維持に役立つ成分の中から、今回は「EPA」についてペット栄養管理士がご紹介いたします。
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POCHIのペット栄養管理士 岡安
ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。
犬の健康に役立つEPA
そもそも、EPAっていったいどんなものなのでしょうか?まずは基本的な情報からご紹介していきます。
EPAは、主に魚類に含まれる脂質を構成する脂肪酸の一種です。2016年に生産量、2017年に売上高で、魚の缶詰のトップを奪い取ったサバ缶ブームは記憶に新しいですよね。そんなサバ人気に火をつけた機能性成分の中の一つが、EPA(イーピーエー)と呼ばれるオメガ3脂肪酸です。
この成分は、魚が蓄えた脂分の中に含まれていて、青魚のサバの他にも、サケやマスの仲間、サンマやマグロといった脂肪が多い魚に豊富に含まれていることが分かっています。
脂がのっていておいしい魚から摂取できる栄養なので、ぜひ犬と一緒に楽しんで取り入れたいところです。
犬用では20年近く前から、DHA/EPAとひとまとめにした形で主に皮膚や被毛のサプリメントとして、活用されてきました。
■もっと深掘り、EPAとは?
機能性成分名:エイコサペンタエン酸(EPA)
供給源:イワシ、サバ、ブリなどの魚油
EPAの正式名称は、エイコサペンタエン酸と言います。EPAは脂肪酸の中でも、オメガ3脂肪酸と呼ばれる不飽和脂肪酸の一種に分類されます。
ちなみに、オメガ3脂肪酸といえば、植物性のものが多く、非常にデリケートで酸化しやすいので、カプセルタイプのものや社交瓶に詰められたもの、使用期限が短く明記されているものが多いです。
■ ちょっと豆知識:EPAを作っているのは魚ではありません。
EPAをはじめとするオメガ3脂肪酸は、魚の脂に含まれている成分ではありますが、魚自身が体内で合成して作っている成分だけではありません。
魚に含まれているEPAやDHAは、魚が食べたものに含まれているものを濃縮したものなのです。
魚が食べているものは小さな魚です。この小さな魚が食べているのは、さらに小さな生き物…というふうに食物連鎖を辿っていくと、最終的にはプランクトンや藻類などの微生物に行きつきます。その微生物の中に、EPAやDHAを自らの体内で作ることができるものが含まれています。
つまり、海や川に生息している小さな藻類(プランクトン)たちを起点として、たくさんの魚を経て私たちの手元に濃縮されたのがEPAをはじめとするオメガ3脂肪酸、というのが一般的な解釈です。
ところが、近年は川魚ではリノレン酸などの植物に含まれる脂肪酸を使ってDHAやEPAを合成することができるという説や、サバやイワシは腸内細菌がこれらの脂肪酸を合成しているという説も出ています。
ペッツネイチャー サーモンオイル 250ml/1,480円
●原材料名:サーモン油
●保証分析値
脂質 99.5%以上、オメガ3脂肪酸 144mg/g、オメガ6脂肪酸 145mg/g、EPA 26mg/g、DHA 37mg/g、DPA 12mg/g
●原産国名:ノルウェー
●給与量目安(1日)
犬(10kgあたり):1日 5ml
猫:1日1~2ml(5~8滴)
EPAを犬が摂取するメリット
魚の脂肪に含まれるEPA。では、犬の健康とどのような関係があるのでしょうか?どのような意図でサプリメントやドッグフードにプラスされているのでしょうか?
■犬の関節痛とEPA
関節の痛みは、関節がすり減って変形したり、炎症が起こっているときに見られます。EPAからは、抗炎症作用があるレゾルビンという成分が作られます。
EPAがドッグフードやサプリメントで注目されるのは、主にシニア期の犬たちに増える、関節の悩みや関節周りの健康維持に期待されているからです。
また、高齢になった犬では筋力の衰えによって関節の動きが悪くなったり、立ち上がる際のふらつき、体勢の維持を難しくしていると考えられています。高齢になった犬では健康的な筋力をどれだけ維持できるか、というのもQOL(Quality Of Life)の観点では非常に重要です。
EPAは、筋肉が本来持っている柔軟性を維持する働きも持っていることが分かっています。関節の違和感対策、動きが悪くなりがちなシニア犬たちの筋力維持の両輪の働きで、関節が気になる犬の健康維持成分として、幅広い支持を集めています。
■犬の皮膚の炎症とEPA
次に注目されているのが、犬の皮膚の健康維持との関係性です。
皮膚のかゆみや赤みも炎症の一種なので、ここでも関節と同様に抗炎症作用があるレゾルビンに注目が集まっています。適量を定期的に摂取し続けることで、アトピー性皮膚炎の人間の子どもでもかゆみが出にくくなることが分かっています。
また、アトピーなどの長引くかゆみでは、繰り返し搔き壊すことで皮膚のバリア機能が失われ、さらにわずかな刺激に対しても反応しやすくなるというループに陥ることも少なくないので、皮膚の弱い犬は日ごろからEPAを取り入れてみるのも、皮膚の健康維持に役立つはずです。
EPAに期待されるその他の働き
■血液の流れを良くする
EPAには、血液の流れをスムーズにして、血圧を下げる働きがあるといわれています。
年齢を重ねるごとに、家の中でもじっとしていることが多くなり、体のこわばりなどが増えて来るのでシニア犬にとっては嬉しい働きになります。また、シニア期に多い循環器疾患や腎臓病に対しても効果的なサポートが期待できます。
ペット栄養管理士が教えるEPAの無理のない続け方
EPAは、魚の脂に含まれる成分だから、魚好きな犬であれば無理なく続けられることが大きな特徴です。犬の健康維持のためにEPAを摂取させるなら、普段の食事に少し垂らすだけなので、まずは魚油から始めるのがオススメ。ほ
かにも、含有量は少なくなりますが、普段のオヤツとして魚を使ったものを与えたり、トッピングとして魚を原材料として使用しているものを選んだり、主食となるドライフードのローテーションの一つとして魚を主原料としているものを選んだり…。
薬ではありませんので、毎日少しずつ健康維持として続けることがベストですね。
ペット栄養管理士が教えるEPAを摂取する時のポイント
「そんなに健康に嬉しい成分なのであれば、たっぷり摂取すればより効果が早く出るのでは?」と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、EPAが効果を発揮するのには、実は他の脂肪酸とのバランスも重要だといわれています。
とくに、オメガ6(大豆油やコーン油などに豊富)と呼ばれる脂肪酸。実は、オメガ3とオメガ6の調和が取れてこそ、素晴らしい効果を発揮してくれるといわれています。EPAなどのオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸はいずれも、犬たちが体内で作ることができず、食事から一定量を摂取する必要があります。(これらを必須脂肪酸と呼びます)
オメガ3脂肪酸が炎症を鎮めることはすでにお伝えしましたが、一方のオメガ6脂肪酸はそれと逆。オメガ6脂肪酸は免疫細胞を活性化させ、体内に侵入したウイルスや雑菌などをやっつける働き(炎症)を促進します。
どちらかが多くなりすぎても、少なすぎても体を守る仕組みは正常には働きません。
健康に良い成分だからといって、そればかりを摂取していても、必ずしも良いとは限らないのは、どんな栄養でも同じです。EPAもほかの栄養素と同じように、バランスの良い食事の中に取り入れていくことを意識して、日頃の犬たちの食生活を見直していきたいものですね。
おわりに
今回は、犬の健康維持に役立つ成分、EPAについて改めてまとめてみました。
近年ではドッグフードの主原料として使用されることも多いサーモンなどは、このEPAが豊富に含まれていることも、人気の理由になっているように思います。EPAは多く摂取すればそれだけ早く効果が表れるというようなものではなく、ほかの栄養とのバランスを大切にしながら、意識するくらいの方が良いように思います。