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2019.07.10
塩分取りすぎ?犬の塩分(ナトリウム)の適切な量とオススメドッグフード
犬のフードを選ぶとき、塩分がどのくらい含まれているか確認していますか?多くの方は犬の塩分の摂り過ぎを気にしていると思います。
でも、犬にとって塩分は必要不可欠なものです。
塩分摂取量として、ナトリウムの最大値に関することは、重篤な過剰症が出る前には嗜好性や摂食量が低下するとして、意外にも現時点ではAAFCOでは設定されていません。
一方で心臓や腎臓の療法食などのように低い方がいいとされるレシピもあり、はやり摂り過ぎには気をつけたいところ。
では、犬にとって塩分はどのくらい必要なのでしょうか?体に取りいれるものだからこそ、塩分についての知識をしっかりと身に付けてフードを選びたいですね。
今回は、犬に1日あたりどれくらいの量の塩分が必要なのか、犬の健康と塩分の関係性についてご紹介いたします。
犬の塩分の必須量と1日の目安
犬は人間と比較するとあまり汗をかかないので、塩分をあまり必要としないと思われがちですが、そんなことはありません。犬の健康維持、そして生命を維持するためには塩分は必須の栄養素なのです。
塩に含まれるナトリウムには、体内を循環する血液量や細胞間液をコントロールする他、浸透圧の調整や酸とアルカリのバランスを保ってくれるなどさまざまな働きがあります。つまり、塩は犬が健康的に生きていく上で欠かせない成分なのです。
必要なナトリウム量は犬の大きさによっても違い、小型犬は1日に100㎎のナトリウム量、中型犬は500mg、大型犬は1.5gが適量と言われています。
塩分が犬に与える影響
塩分は、少なすぎても多すぎてもいけません。塩分不足になると、犬は土やコンクリート、壁、他の犬のおしっこ、人の足や手をなめるなどの行動を起こします。
これらの行動は、不足した塩分をどうにかして補おうという行動であるため、こうした行動が見られた場合、塩分不足が疑われます。塩分不足になると、倦怠感や筋肉痛、食欲不振などの症状が現れる他、塩分不足の状態が続くと犬が自分で立ち上がれなくなる場合もあると言われています。
飼い主の皆さんは日頃から犬の様子を充分気に掛けてあげてください。
では、逆に塩分を過剰摂取するとどうなるのでしょうか?腎臓疾患や心臓疾患がある犬の場合は、症状を悪化させる恐れがあるので特に気を付ける必要があります。
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国際的なペットフードの栄養基準を定める機関のひとつ、AAFCOの検証によると、健康的な成犬のナトリウム最大値は設定されていません。
ただ、当たり前の話ですが腎臓や心臓にリスクのある犬たちにとっては高すぎる塩分は負担になります。あくまでAAFCOの栄養基準も犬たちの栄養バランスを考える上でのひとつの考え方として、最適なバランスを維持していきたいものですね。
犬が塩分を取りすぎるとどんな症状が出るの?
ある程度は犬も塩分を必要としますが、もしも犬が塩分をたくさん摂りすぎるとどのような症状が出るようになるのでしょうか。
実は、健康的な犬の場合は、塩分を多少多めに摂取したとしてもあまり健康に影響しないといわれています。
しかしそれは健康的な犬の場合であり、心臓や腎臓に持病がある犬では塩分の管理が病気の治療や健康維持にはとても重要になっています。
しょっぱいものを食べると喉が渇き、水を多く飲むようになります。すると体内に流れる血液の量が飲んだ水分の量だけ増えてしまい、血圧が上がるといわれています。
血圧が上がるとそれだけ血液を全身に送り出すポンプの役割を持っている心臓には負担が大きくなります。心臓の持病を持っている犬は塩分のコントロールが必要になるのはこのためです。
また、腎臓は体内で過剰になってしまった塩分に含まれるナトリウムを排出し、血圧などをコントロールする役割を持っています。腎臓が正しく機能していれば、きちんとナトリウムと体内の水分を尿として排出して血圧を一定に保つことができるのです。
しかし腎不全などで腎臓の機能が低下していると上手くナトリウムを排出することができず、血圧や体内のナトリウム量のコントロールができず、高ナトリウム血症を引き起こし、多飲、嘔吐、痙攣などを引き起こす原因になることがあります。
犬にとって程良い塩分量にするには
犬のフードには尿を多く排泄させる狙いもあり、引水用を増やす目的で充分な塩分が含まれています。私たち人間も塩辛いものを食べたら喉が渇きます。犬も同じように、程良く塩分が含まれたドッグフードを食べることで喉が渇き、水分を多く取るようになります。
このように水分を多く取ることで、尿路結石の防止や脱水症状の予防効果も期待できますが、通常の食事(ドッグフード)に加えて人間と同じ味付けのものを与えてしまったら、明らかに塩分の取りすぎになり、高血圧や心臓病、腎不全などの病気のリスクがある犬には良くありません。
また、犬のおやつには塩分が多めに含まれているものもあるため注意が必要です。例えば、犬用ジャーキーや犬用ビスケットは100gあたり1~3g程度塩分が含まれています。特に小型犬や超小型犬の場合は、体重が軽いので大型犬と同じように塩分を取ると塩分過剰に。塩分を気にしたい場合、与えるおやつの塩分の量が適切か、パッケージの表示などをもとに確認したほうが良いでしょう。
犬のフードを塩分の少ない手作りのごはんにするのであれば、一般に生肉は野菜の約3倍のナトリウムを含みますが、比較的少な目の鶏ささみのトッピングや野菜などを煮込んだスープによって香りを立て、塩分が少なくても犬がおいしいと感じることができる工夫を行うのが減塩のコツです。
犬の種類や体重、年齢や健康状態によって、必要な塩分量は異なります。健康状態のよい犬にはドッグフードやウェットフードのパッケージに記載されている適正量を与えましょう。本来、それぞれのフードは栄養バランスが整えられています。もし体調が優れない場合は獣医さんを訪ね健康状態を正しく把握し、食事の与え方などの指導を仰ぎましょう。
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ストルバイト結晶などのオシッコトラブル用の療法食の中には、塩分を高めに配合することで飲水量を増やし、尿の排出を促すことで結晶や膀胱炎を防ぐというタイプのレシピもあります。犬たちにも多いオシッコトラブルですが、心臓や腎臓に不安がある犬たちには思わぬ負担になることも考えられますので、療法食は飼い主の判断で与えるのではなく、獣医師と相談の上で計画的に使うようにしてくださいね。
おわりに
犬は塩分を取りすぎてもいけませんが、必要な分量は摂取する必要があります。人と違って健康な犬にたくさん与えても健康被害の報告が少ないとうのもちょっと不思議ですが、今は、与えすぎないよう注意する、というスタンスなようです。
ほとんどの場合、犬の嗜好性に塩分量はあまり関係がないともいわれています。犬の嗜好性はアミノ酸量が多いものほど高くなる傾向があると言われているので、犬の食欲を刺激する目的であればうま味を感じられるアミノ酸の方が効果的なようです。
低ナトリウム基準で選んだドッグフード
- 詳細を見る フォルツァ10 リナールアクティブ(腎臓ケア療法食) ナトリウム 0.09% カリウム 0.70% マグネシウム 0.09%
- 詳細を見る ハッピードッグ サノN (腎臓ケア療法食) ナトリウム 0.10% カリウム 0.45% マグネシウム 0.08%
- 詳細を見る ナチュラルハーベスト セラピューティックフォーミュラー キドニア(腎臓ケア療法食) 1.36kg ナトリウム 0.11% カリウム 0.7% マグネシウム 0.09%
■この記事を書いた人
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POCHIのペット栄養管理士 岡安
ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。