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2020.09.09
犬は1日でどれくらい水を飲むの?水分量の目安と飲水量を増やす対策
犬の水を飲む量が少なくなった気がする、と心配される方が多くいます。逆に、急に水を飲む量が増えてしまった、という声もあります。
季節や環境によって、飲水量には変動がありますが、やはり犬の適切な飲水量は気になるところ。
そこで本日は、犬の飲水量の目安と、飲水量が減る・増える時に考えられる理由をご紹介していきます。
犬が一日に必要とする水分量とは?
犬たちが1日に必要とする水分摂取量の目安として、簡単な計算式があります。
《犬が1日に必要とする水分量の目安》
=体重(kg)×0.75乗×132(ml)
この計算式によると、体重が5kgほどの犬であれば、約441mlとだいたい500mlのペットボトルと同じくらいの量になります。体重の10%前後と考えて、少し多めかな?と感じるくらいの量が適切だといわれていることがわかりますね。特に冬の時期はこの目安よりも飲水量がかなり少なくなっていると感じるのではないでしょうか。
また、犬の一日の必須カロリーと必須水分量はほぼ対応しているともいわれています。
犬の体では筋肉と脂肪とで比較したときに、筋肉のほうがより多くの水分を含む傾向があるため、しっかりと筋肉がついている犬のほうがより水分要求量は多くなり、逆に筋肉量が少ない犬やシニア犬、肥満傾向の犬では水分要求量が少なくなる傾向があります。子犬はやや多めに飲むことが多いようです。
■犬に水分摂取させる手段にはどんなものがあるの?
基本的には、水飲みボウルなどから水を飲むという方法を取りますが、犬たちは水を直接飲むだけではなく、食事の中からも水分を摂取しています。
水を飲む以外にも、ウェットフードやスープタイプのトッピング、ゴートミルク、野菜や肉類などに含まれている水分のほか、食事の栄養から水分を作る(※注1)ことで、水分を補えます。
ドライフードのみを与えている犬のほうがより多くの水を飲むようになりますが、これはドライフード(水分量:約10%前後)とウェットフード(水分量:約80%)では含まれている水分量に大きな差があるためです。
■ [注1]食事の栄養素から作られる代謝水について。
食事を消化し、栄養を吸収すると体内で栄養を使いやすいように分解したり別の成分と合成しながら、犬たちの体は動いていきます。食べ物から得た栄養を合成などして活用することも代謝と呼ばれますが、この代謝の過程でタンパク質や脂質などと酸素から副産物として水が作られます。この水を代謝水と呼び、飲み水や食べ物に含まれている水と同様に体内で使用されています。
犬が水を飲まない原因
■気温や気候によるもの
犬は、気温が高い環境では体温を下げるために水を多く飲むようになります。冷たい水で体温を冷やすだけではなく、「はっはっ」と舌を出してパンティングすることにより、舌や口内の表面から水分を蒸発させ、体温調節を行っているといわれています。
しかし気温が低くなると、体温を下げたりパンティングの必要がなくなります。犬はのどの渇きを感じにくくなるため、飲水量が減ってしまう傾向にあるといわれています。
■加齢によるもの
年齢を重ねたシニア犬も飲水量が減りやすい傾向にあると言われています。運動量が減りのどの渇きを感じにくくなるほか、気温の変化を感じにくくなること、関節などの痛みで水飲み場までの移動が億劫になっていることなどが考えられます。
ハイシニア犬はとくに脱水症状などに注意が必要です。皮膚の弾力をチェックして、水分量が足りているかをこまめにチェックしましょう。
■食事で水分がまかなえている
犬は水を飲むだけではなく、十分な量のスープタイプやミルクを食べることでも水分を摂取することが出来ます。ウェットフードをメインに食べさせていたり、水分をたっぷり含んだ手作り食、トッピングを取り入れることで飲水量が減ったように感じることもあるかもしれません。
逆に水分量が多すぎる食事によって、便が柔らかくなったりすることもあります。
■水を与えている容器があっていない、アクセスが悪い
犬に水を飲ませる方法として、給水器があります。犬が水を豪快に飲んだり、器を倒したりする心配がない便利なアイテムです。でも、飲み口の高さが犬にあっていなかったり、犬が給水器から水を飲むのが苦手だったりすると十分に水を飲むことが出来ず、水分不足になってしまうことがあります。
また、犬の水飲み場が十分ではなく、数が少なかったり犬が行きにくい場所にあるなどの理由で水を飲む回数が減ることもあります。また、給水器などの水が新鮮なものであるかも大切です。
■病気の可能性
急に飲水量が減った時、病気などのトラブルの可能性もあります。口内炎や歯周病などによって、口が開けにくかったり、口内トラブルによって痛みが起きている場合、水を飲まなくなってしまうこともあります。これらのトラブルの場合は、食事も口をつけなくなることがほとんどです。
水分量が足りていないサイン
■おしっこの回数が減る
犬の水分量が十分でない時、当然おしっこの回数や量が減ります。トイレや散歩に行って、オシッコをするようなポーズをしても出なかったり、回数が減っているようであればきちんと水が飲めているかチェックが必要になります。
おしっこの回数や量が減ることで、膀胱内に尿が溜まる時間が長くなり、結晶や結石ができやすくなることもあります。
■ウンチがいつもより固い
水分量が十分でないと、ウンチが固くなることもあります。ウンチが固くなることで便の回数が減り、便秘になることもあります。ウンチが固い時には腸内環境を整えることももちろんですが、水分量が十分かどうかもチェックしてください。
犬が水を飲まないときの対策
■水分量が十分とれるような食事に変える
犬の水分量が十分でない時、水を飲ませるのではなく食事から自然に水分が摂取できるようなものを取り入れてみるのもオススメです。
ドライフードを主食として使っていたのなら、ドライフードにスープタイプのレトルトをトッピングしてみるのがオススメです。
犬のお気に入りのフードや、体質に合ったドッグフードはそのままに、嗜好性が高く水分も摂取できるトッピングをプラス。手軽に水分摂取量を増やすことが出来ます。トッピングを選ぶ楽しみも増えますよ。
主食としても使える総合栄養食ウェットフードをメインに変えるという方法もあります。ウェットフードは嗜好性が高い物が多いので、こちらも無理なく水分を摂取させることができます。
そのほかにも、ゴートミルクなどをオヤツとして与える方法もオススメです。
■水飲み場や容器を工夫する
犬の水分量が十分ではない時、犬の水飲み場の環境を見直すことも大切です。犬の体格に合った水飲みボウルや給水器を使っているか、高さはあっているのか、水飲み場の数は家の中に十分にあるかなどをチェックしてみてください。
また、犬の中には人通りが多い場所では落ち着いて水を飲めない犬や、他の犬や猫などがいる時には遠慮して水を飲まないことも。
シニア犬~ハイシニア犬の場合は、いつもいる場所から水飲み場が遠すぎたり、段差があって通れなくなることもあるのでより生きやすい場所に水飲み場を移すのも一つの手です。
犬がたくさん水を飲むようになる原因
それでは、犬が水を急にたくさん飲むようになった時にはどんな理由が考えられるのでしょうか?
■食事の変化があった
それまでウェットフードや手作り食、スープタイプのトッピングを食べさせていた犬が、ドライフードを中心とした食事に切り替えると、やはり以前よりも多くの水を飲むようになります。
また、膀胱炎やストルバイト結晶などの療法食の中には、飲水量を増やすための工夫として、塩分を含んでいるものがあり、喉が渇きやすくなって水を飲むようになります。
(療法食の場合、犬の健康に影響しない程度の塩分に調整されていますのでご安心ください)
この場合、犬の飲水量が急に増えたからと言って心配する必要はなく、犬が飲みたいだけ水を飲めるようにしてあげてください。
■運動量が多くなった、ダイエットした
運動量が多く、筋肉量が増えた犬は飲水量が多くなることがあります。筋肉は脂肪などよりも維持のために多くの水分を必要とするためです。
そのため、運動量が多い犬や筋肉質の犬ほど飲水量が多くなる傾向があります。しっかり運動を取り入れたダイエットを行っている犬も飲水量が増える傾向にありますので、水を十分飲ませるようにしてください。
■病気の可能性
犬の飲水量が顕著に増えたことが病気のサインになることもあります。
たとえば、腎臓病や糖尿病のほか、クッシング症候群などの分泌系の病気でも、飲水量が大きく増える傾向があります。これらのケースでは、おしっこの回数も大幅に増え、粗相をするようになったり、夜中にトイレに行きたがる、嘔吐が見られるなどほかの症状も合わせて見られます。クッシング症候群では、脱毛が見られる場合もあります。
飲水量が劇的に増えたほかにも気になる症状がみられたら、動物病院で相談してみてください。
犬の飲水量の目安のポイントまとめ
犬たちがいつでも新鮮な水を好きだけ飲めるようにしておくことが大切です。清潔で飲みやすい状態の水をいつでも飲めるようにしておきましょう。
普段の食事の内容から大きく変えていないのに、飲水量が極端に減っている、と感じたときは犬たちの病気のサインの可能性があります。逆に、飲水量が極端に増えている場合も同様です。
以前よりも飲水量が減っている、と感じたら犬たちの食事にウェットフードタイプの総合栄養食やスープタイプのトッピングを取り入れたり、オヤツにゴートミルクを採用することで自然な形で水分摂取を補うことができます。
逆に水分が多すぎても下痢や軟便などの原因になることがありますので、犬たちのうんちの状態の変化を確認しつつ、食事と飲水量のバランスを調節してみてください。
<犬の飲水量についてまとめ>
・犬が一日に必要とする水分量は季節やライフステージ、運動量によって変化しますが、おおむね「必須水分量目安=体重(kg)×0.75乗×132(ml)」で計算できる。
・食事内容によって飲水量は変化する。(ドライフード中心の食事では飲水量は多く、ウェットフード中心なら少なくなる)
・オシッコの回数や量が減る、ウンチが固いなど水分が足りていないサインがある時は、ウェットフードやスープタイプのレトルト、ミルクなどで水分摂取量を増やすのがおすすめ。
参考文献
*1 坂根 弘「連載講座:基礎栄養学 (13) イヌネコのライフステージと栄養(その1)」『ペット栄養学会誌』2001 年 4 巻 2 号 p. 88-97
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POCHIのペット栄養管理士 岡安
ペット栄養管理士です。犬ぞりやフリスビーなど、犬とできるアクティビティが好き。大型犬を見るとテンションが上がります。