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2022.04.13
Dog Snapshot R 令和の犬景Vol.13 春の子犬まつり
写真・文 内村コースケ
犬は太古より人類と一緒に歩んできました。令和の世でも、私たちの暮らしにさまざまな形で犬たちが溶け込んでいます。このフォトエッセイでは、犬がいる情景を通じて犬と暮らす我々の「今」を緩やかに見つめていきます。
無垢な命の尊さ
春は始まりの季節。新しい命は、人々に希望と笑顔をもたらす。日本の隣国が戦争を始め、多くの命が失われている今だからこそ、無垢な命の尊さを再認識したい。今回は、子犬たちの写真でページを埋め尽す「春の子犬祭り」を開催します。
母犬の愛を受けて
今回お届けしているのは、昨春と今春に生まれたアイメイト(公財「アイメイト協会」出身の盲導犬)候補の子犬たちの写真だ。犬種はラブラドール・レトリーバー。アイメイトの育成には大勢のボランティアが関わっており、子犬の出産は、メスの繁殖犬を預かる「繁殖奉仕者」の家庭で行われる。一度に生まれる子犬は3頭から10頭ほど。家庭犬の場合、今は生後3ヶ月以上でブリーダーやペットショップから迎えるのが一般的だから、 アイメイトの繁殖奉仕家庭は、生後間もない子犬を見られる貴重な場所だ。
この時期の乳飲児たちはまだ目が開いておらず、人よりも母犬にべったり。母の愛をたっぷり受け、まずは全ての基礎となる犬の本能的な愛情を育んでいく。
かわいい盛りの離乳期
生後2週間ごろには目が開いて、兄弟姉妹と遊び始める。犬同士のコミュニケーションの基盤は、この時期に身につける。同時に、人間とも少しずつコミュニケーションを取るようになり、食事は母乳から離乳食を経てドッグフードへと段階的に切り替えていく。成犬への階段を上り始めるかわいい盛りの時期だ。
やんちゃな子犬たちに学ぶべきこと
子犬たちが繁殖奉仕家庭で過ごすのは、生後2ヶ月まで。巣立ち前にワクチン接種を済ませ、環境によっては自宅の庭で駆け回ることも。そして、1頭ずつ、1歳過ぎまで預かる「飼育奉仕者」にバトンタッチする。飼育奉仕家庭では、人との愛情を育んでゆく。
アイメイト候補の子犬は、生まれた瞬間から愛情をたっぷり受けている。だから、動物的本能を維持しながらも、決して相手を傷つけることなく上手に遊ぶ。僕は、アイメイトが人や動物に牙をむいたり、敵意を持って吠え立てるような姿を一度も見たことがない。小さな子犬たちに、人が見習うべき点は多い。
■ 内村コースケ(写真家)
1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒。中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験後、カメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「撮れて書ける」フォトジャーナリストとして、ペット・動物愛護問題、地方移住、海外ニュース、帰国子女教育などをテーマに撮影・執筆活動をしている。特にアイメイト(盲導犬)関係の撮影・取材に力を入れている。ライフワークはモノクロのストリート・スナップ。日本写真家協会(JPS)正会員。