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2024.10.16

Dog Snapshot R 令和の犬景Vol.43 「アイメイト・サポートカレンダー」で振り返る1年

Dog Snapshot R 令和の犬景Vol.43 「アイメイト・サポートカレンダー」で振り返る1年

写真・文 内村コースケ

犬は太古より人類と一緒に歩んできました。令和の世でも、私たちの暮らしにさまざまな形で犬たちが溶け込んでいます。このフォトエッセイでは、犬がいる情景を通じて犬と暮らす我々の「今」を緩やかに見つめていきます。

カレンダーの撮影サイクルで秋に始まる1年

僕の1年は、カレンダーの撮影に合わせて、秋に始まる。毎年撮影・制作している「アイメイト・サポートカレンダー」の販売開始が前の年の10月なので、9月上旬までに翌年のカレンダーの撮影を終え、10月から翌々年分の撮影に入る。なので、自分の中では、本稿が掲載される秋が、1年を振り返り新たなスタートを切る一区切りとなっているのだ。

「アイメイト・サポートカレンダー」は、収益の一部をアイメイト(盲導犬)を育成する「公益財団法人 アイメイト協会」に寄付するチャリティーカレンダーで、2010年版から作り続けている。本稿トップの写真は、できたばかりの2025年版の表紙だ。奉仕家庭で生まれた候補犬が、訓練・歩行指導を経てアイメイトになり、引退して奉仕家庭で家庭犬として余生を過ごすまでのアイメイトの一生を、季節感のある写真で伝える内容となっている。

ということで、今回は、2025年版の写真から、2023年秋〜2024年夏の1年を振り返っていきます。



永遠にきらめく「愛の秋」

「2025アイメイト・サポートカレンダー」9月の写真(不適格犬奉仕)

「2025アイメイト・サポートカレンダー」9月の写真(不適格犬奉仕)

2025年版「アイメイト・サポートカレンダー」の撮影は、埼玉県内のコスモス畑で始まった。不適格犬と奉仕者の愛情を表現するのに、ぴったりのロケーションだ。不適格犬とは、さまざまな理由でアイメイトにならずに、奉仕家庭に引き取られて家庭犬となった元アイメイト候補犬のこと。アイメイトは皆、とても愛情深い存在で、パートナーや家族に無償の愛を届ける。それは、家庭犬の道に進んでも変わらない。



「2025アイメイト・サポートカレンダー」11月の写真(リタイア犬奉仕)

「2025アイメイト・サポートカレンダー」11月の写真(リタイア犬奉仕)

そして、秋が深まり、紅葉の季節を迎えた。こちらは色づいた高原の林を歩くリタイア犬。アイメイトは概ね10歳前後で現役を引退すると、奉仕家庭に引き取られて家庭犬として余生を送る。我が家にもリタイア犬がいたので、よく、「働かされていた犬が引退してようやく自由になったのですね」といった感想を耳にしたが、アイメイトはここに至るまでも、それぞれのステージで愛と喜びに包まれた生活を送っている。リタイア犬たちがひときわ愛情深い優しい目をしているのも、たくさんの愛の蓄積があるからだと僕は思う。

撮影地は蓼科高原の女神湖畔。この年の紅葉があまりに見事だったので、数日後にうちのリタイア犬「マルコ」も連れていった。それがマルコとの最後の外出<Dog Snapshot R 令和の犬景Vol.32 永遠にきらめく秋景色>となり、上の写真のリタイア犬も今年7月に亡くなった。期せずして、この地の近年稀に見る美しい紅葉が、2頭のリタイア犬の最晩年の輝きを演出することになったわけだ。僕にとって、秋は1年の区切りでありスタートだが、今年の秋はますます特別なものとなった。



年々困難になる雪景色の撮影

「2025アイメイト・サポートカレンダー」1月の写真(リタイア犬奉仕)

「2025アイメイト・サポートカレンダー」1月の写真(リタイア犬奉仕)

冬の雪景色の撮影は、福島県の裏磐梯へ。毎年犬友グループのスノーシュー旅行に参加しているリタイア犬がいると聞き、同行させてもらった。このような雪景色の撮影は、温暖化の影響で年々難しくなっている。ここ裏磐梯でも、このグループは毎年凍った湖の上も歩いていたが、今年は氷の厚さが足らず、初めて湖上散歩をあきらめたそうだ。「アイメイト・サポートカレンダー」の撮影を振り返っても、以前はアイメイト使用者・奉仕者が多い都市部でも雪景色の写真が撮れたが、最近はとても難しい。来年はどうしようかと、今から頭を悩ませている。



穴場探しの春

「2025アイメイト・サポートカレンダー」3月の写真(飼育奉仕)

「2025アイメイト・サポートカレンダー」3月の写真(飼育奉仕)

初春は、花桃と菜の花が咲く北関東の公園へ。アイメイト候補犬は生後2ヶ月から1歳過ぎまで飼育奉仕家庭で育てられるが、この候補犬にとって、これが初めて迎える春。見るもの感じるものすべてが珍しいこの時期に、できるだけ多くの経験を積ませてあげるのが飼育奉仕者の役目の一つだ。

桜の撮影のモデルになってもらったのは、シニアの不適格犬と一緒に育った姉弟。撮影地はこちらも北関東のとある桜並木。近年はインバウンドの影響もあって、主だった桜の名所はどこも大混雑でとてもカレンダーの撮影ができる状況ではない。そのため、雪の撮影同様、年々ロケ地探しが難しくなっている。ここはまだ、地元以外ではあまり知られていない場所だが、ちょっとしたきっかけでSNSでバズるようなことがあると、撮影が困難になるだろう。



「2025アイメイト・サポートカレンダー」4月の写真(不適格犬奉仕)

「2025アイメイト・サポートカレンダー」4月の写真(不適格犬奉仕)

5月の写真は、初夏の潮風を感じる海岸で。歩行指導を終えて間もない新人のアイメイトと5頭目として迎えたベテラン使用者のペアを撮影した。海もやはり最近はめぼしいスポットは人が多く、撮影が難しい。さらには、これは以前からだが、海水浴場は犬を立ち入り禁止にしている所が多い。現役のアイメイトは使用者の体の一部と法律で認められているので、本来は「ペット禁止」の対象にはならないのだが、このカレンダーの撮影でも5年ほど前に現役アイメイトの海水浴場への入場を咎められたことがある。このあたりの理解は、今もあまり進んでいないように思えるのは残念だ。下の写真は、直前のロケハンで運良く見つけた穴場で、使用者とアイメイトがゆっくりくつろいでいる様子が撮れた。



「2025アイメイト・サポートカレンダー」5月の写真(現役)

「2025アイメイト・サポートカレンダー」5月の写真(現役)

猛暑の影響は夏のカレンダー撮影にも

「2025アイメイト・サポートカレンダー」6月の写真(繁殖奉仕・メス)

「2025アイメイト・サポートカレンダー」6月の写真(繁殖奉仕・メス)

夏休みのノスタルジックな記憶とシンクロする夏の子どもたちの姿は、好きな被写体の一つだ。今年は、アイメイト候補の子犬が生まれたばかりの繁殖奉仕家庭にお邪魔して、子どもたちと子犬、繁殖犬の様子を撮影させてもらった。子どもの頃の動物との触れ合いは、一生記憶に残るもの。それを映像として残すことができるのは、写真の素晴らしさの一つだ。



「2025アイメイト・サポートカレンダー」7月の写真(繁殖奉仕・オス)

「2025アイメイト・サポートカレンダー」7月の写真(繁殖奉仕・オス)

今年の夏もやはり記録的な猛暑になった。モデルとなる犬の負担を考え、もう何年も前から、夏の撮影は6月と7月に済ませ、8月は中断している。今年は7月でも異常な暑さで、日中は断念し、日没直前の一瞬に賭けて海辺でオスの繁殖犬(アイメイト候補犬の父親となる犬)を撮影した。

8月の写真は海辺で遊ぶアイメイト候補の子犬(訓練に入る前の候補犬)。これも実際の撮影は7月。若い元気な犬と夕方の海辺なら暑さに負けないという判断だった。今後夏場は、こうした水辺での撮影が増えるだろう。



「2025アイメイト・サポートカレンダー」8月の写真(飼育奉仕)

「2025アイメイト・サポートカレンダー」8月の写真(飼育奉仕)

今年は個展会場でも販売します!

というわけで、秋から夏に向けて1年を振り返る、少し早い1年の総括でした。アイメイト候補犬の飼育奉仕期間も約1年。候補犬は、1歳2カ月を過ぎると、訓練・歩行指導を行うために奉仕家庭からアイメイト協会に帰ります。そんな飼育奉仕は、かわいい盛りにお別れが来る難しい奉仕活動ですが、その分、青春時代のひと夏の思い出のような、キラキラとした1年間が人と犬の両方の心に永遠に残るでしょう。皆さんもぜひ、それぞれのタイミングで、今年の愛犬との思い出を振り返ってみてください。

「2024アイメイト・サポートカレンダー(A3サイズ・壁掛け)」は、アイメイトサポートグッズ・オンラインショップで販売中です。また、10/4〜10/17にソニーイメージングギャラリー銀座で開催中の内村コースケ写真展「リタイア犬日記 3本脚で駆けた元アイメイト(盲導犬)の物語」会場でも販売しています。