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2023.01.18
犬の膵炎のリスクを高める原因となる食べ物とは?注意したいこんな食事【獣医師監修】
最近、ポチに寄せられるお悩みで増えてきているのが「犬の膵炎」に関するものです。
実際のところ、膵炎と診断されている犬の数は増えてきているようです。
多くなってきている膵炎について、そのリスクを高める食べ物はあるのか、どのように注意すれば良いのかなど、獣医師さんに質問してみました。
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監修者:獣医師 菱沼 篤子
犬の栄養指導や犬の健康に関する専門知識を持つコンサル担当スタッフとして、さまざまな飼い主のお悩みを聞いている。
犬の膵炎とは?
膵炎とは、胃から小腸の近くに存在している膵臓と呼ばれる臓器に炎症が起きる病気のことです。急性と慢性の2種類があります。
■急性膵炎について
急性膵炎の症状として、突然の食欲不振、嘔吐、下痢、震えなどのほか、犬が声を上げるほど強い腹痛が起きることも知られています。
これらはすべて、膵臓が作っている消化酵素が突然活性化されることで、食物ではなく膵臓自体を消化してしまい、膵臓が破壊されることによる痛み、また消化不良により起きていると考えられます。
腹痛があるとき、犬はよく伏せの状態でお尻だけ持ち上げるような体勢をとるため、祈りのポーズ、などと呼ばれ、膵炎の特徴的な症状として知られています。
急性膵炎の場合は、犬が痛みにうずくまっている様子を見て、慌てて動物病院に連れてくる飼い主さんが多いです。
炎症が酷い時には、膵臓以外の組織まで影響が出ることがあり、そうなると多臓器不全と呼ばれる致死的な状態に陥ることもあります。
■慢性膵炎について
一方で、慢性膵炎では一般的な消化器症状がよく見られ、食欲不振、嘔吐、軟便なども起こります。
急性膵炎と比べると症状が緩やかに感じる方も多いかもしれませんが、これらの症状が繰り返し少しずつ起こることで、膵臓自体が徐々に硬くなり、消化酵素の流れが悪くなり、膵臓の機能が落ちてしまう状態になります。
■膵炎になりやすい犬
膵炎を起こしやすい傾向にある犬種がいます。
実は膵炎と高脂血症には相関関係があるといわれていて、遺伝的に高脂血症になりやすい犬種では他の犬種と比較して膵炎のリスクが高くなります。
具体的には、ミニチュア・シュナウザー、ヨークシャー・テリア、コッカー・スパニエル、コリー系(ボーダーコリー、シェルティも含む)、ボクサーなどがかかりやすいとわれています。
また、犬種にかかわらず慢性的な肥満や脂肪の多い食事も膵炎のリスクとなります。
それから、中年期以降のシニア犬は全体で膵炎になりやすくなるといわれています。(保険会社のデータでは、年齢を重ねるごとに膵炎になる確率が高くなることが示されています)
また、持病としてクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)や甲状腺機能低下症、糖尿病などの内分泌系の病気がある犬も高リスク群に含まれます。
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POCHIの獣医さん 菱沼獣医師からひとこと
高脂血症になりやすい犬種や、その系統の血を引くミックス犬では、普段から食事の内容にも気を遣うことをオススメしています。こまめな健康診断を受けたり、体重管理を行うと良いですね。
また、犬が中年期を過ぎたころにはすべての犬でリスクが高くなりますから、高脂肪のドッグフードやおやつ、人間の食事の一部を与える前に「大丈夫かしら?」と考えることも大切です。
犬の膵炎の原因となる食べ物
膵炎の予防のために注意したい食べ物としては、やはり高脂肪の食べ物です。
意図的、あるいは意図せず犬が食べてしまう可能性がある、代表的な高脂肪なものをいくつかご紹介いたします。
・脂が多いお肉
・まぐろのとろ、とろサーモンなど
・人間用に調理された料理(揚げ物、炒め物などは要注意)
・人間用のお菓子(スナック菓子、焼き菓子など)
・オイル類(オリーブオイル)
・バター、生クリーム
・ナッツ類
美味しい焼肉から、ヘルシーなイメージがある一部のお刺身、ナッツ類も脂質は高め。高齢になってきた犬で高脂血症などのリスクがある時は、避けた方が無難です。
ただ、実際に膵炎で運ばれてきた犬の飼い主さんの中には「(盗み食いに)気が付かなかった」という方もいて、家族が目を離した隙に人間の食べ物を盗み食いして、具合が悪くなって初めて気が付いたというケースもあるようです。
とくに小型犬では、体が小さいぶん、少しの量でも体重に対しての比率が大きくなりがちですので、注意が必要です。
膵炎になってしまった犬の食事管理のQ&A
■Q:以前、膵炎になってしまったのですが、今は元気です。食事はずっと低脂肪にしたほうが良いですか?以前の食事に戻しても大丈夫ですか?
基本的には、低脂肪の食事を続けることを勧める獣医師が多いと思います。過去に一度膵炎になっている、ということは膵臓の機能が衰えている可能性もありますし、再発の可能性もあります。
とはいえ、犬の体調やそれまでの習慣は実際に犬と暮らす飼い主さんと、担当の獣医師さんが一番ご存知だと思いますので、その都度相談しながら決めていくのが良いかと思います。
■Q:膵炎の治療中ですが、オヤツを与えても大丈夫でしょうか?
犬は急にオヤツをもらえなくなると、ストレスを感じてしまいますから、オヤツに含まれる脂質の量をチェックして、高脂肪のビスケットやジャーキーなどは避け、なるべく野菜やフルーツ、低脂肪フードを数粒程度に抑えておきましょう。
とはいえ、やはり体調によりますので、判断は慎重に。食べさせすぎてしまうのはNGですし、心配なら動物病院で相談してからが安心です。
■Q:膵炎になったことはないのですが、犬種的に膵臓の状態が気になります。
まずは、動物病院で血液検査を受けてみてください。その時に膵炎が心配なことを伝えれば、きっと詳しく調べてくれると思います。
最近では血液検査やエコー(超音波検査機)の性能が向上し、色々なことが分かるようになってきています。普段の食事の時の様子や、食べているフード等の様子もその時に合わせて伝えれば、診断はよりスムーズになると思います。
また、低脂肪フードでも美味しさにこだわったものがたくさんあるので、普段使いに検討してみてください。
おわりに
ここ数年で多くなってきている犬の膵炎。膵炎に対する研究が進んだり、犬全体の寿命が延びたことも数が増えている背景にはあるようです。
とはいえ、以前と比べて無暗に犬に人間の食べ物を与えてしまう人が増えたことも要因の一つになっているという指摘もあります。
犬に与えても大丈夫なものなのか、注意が必要なのか、犬の健康と食材について理解を深めていけば、きっと膵炎の対策もできるはず。
犬の健康を守るためには、正しい知識を学ぶことが本当に大切です。心配なことや分からないことなどがあれば、お気軽にポチのコンサルティングサービスにてお尋ねください。